日本人MLB戦士の奮闘を支える「超メジャー級グルメ」の秘密
大谷翔平が試合前後に食べる海鮮弁当、 鈴木誠也のためにプロが研究&開発した和食、 イチロー、ダルビッシュ有&筒香嘉智が通う焼き肉店ほか 専属栄養士、シェフ、店長を徹底取材!
今年も日本人メジャーリーガーの快進撃が止まらない。昨年のMVP男、エンゼルスの大谷翔平(27)が5月23日に日米通算150本塁打を放てば、カブスの鈴木誠也(27)は4月期の最優秀新人賞を獲得。パドレスのダルビッシュ有(35)は日本人投手歴代2位となる1319回登板を達成して、早くも4勝を挙げている。
彼らの躍進を語る上で欠かせないのが食事だ。イチロー(48)が毎朝カレーを食べていたエピソードは有名だが、トップアスリートにとって、高いパフォーマンスを発揮するために「食」は不可欠な要素だ。鈴木の管理栄養士を務める株式会社『明治』の大前恵氏が語る。
「大切なのは必要な栄養を適切な量、摂取することです。毎食、炭水化物、脂質、たんぱく質、無機質、ビタミンの5つの栄養を摂ることができるよう『栄養フルコース型』の食事を揃えます。最近の夕食は、ごはんに赤身肉の惣菜、野菜のソテーやサラダに味噌汁、納豆、カットフルーツ、ヨーグルトという献立でした。体重を落とさないよう、一日でだいたい3800キロカロリー前後を摂取できるようにしていますね。私がいないときでも必要な栄養を摂ることができるように、スーパーなどで買える惣菜を20種類くらい並べて、何をどれだけ食べればよいかも研究済みです。鈴木選手は食事も一切妥協しません」
現役後期のイチローは、試合前にそうめんを食べていたが、鈴木はクラブハウスでうどんを好んで食べているという。
「試合中、おなかに食べ物が残っていると動きにくいということで、球団のシェフがコンディションや消化時間を考え、卵とじにしたり、鶏肉を入れたりとアレンジしてくれます。シェフが、少しでも美味しく食べられるようにしたいということで、私が鈴木選手の好きな麺の茹で時間やめんつゆの配合などを、指導したこともあります」(前出・大前氏)
大谷の海鮮弁当 筒香の焼き肉
ロサンゼルスにある寿司屋『SUSHI KOTO』の大将・松木保雄氏は、昨年から試合の前後、大谷に海鮮弁当を差し入れているという。
「マグロやサーモン、いくらやウニなどの寿司ネタを、大谷さんの身体のコンディションを考えて詰め合わせています。昨夏、ホームランのペースが落ちたときは大トロに生ホタテ、ハマチにブルークラブを盛り合わせた特製丼を差し入れました。通訳を務める水原(一平・37)さんから注文が入るのですが、去年は夏バテ防止に『肉料理を1品入れてくれ』といったリクエストが入ったこともありました。今シーズンはいまのところ、特別なオーダーはないですね。
試合前の弁当は『粘り強くプレーしてほしい』という思いを込めて納豆やメカブなど粘り気の多い食材も入れます。試合後の弁当は、疲れを取るために生ワカメやクラゲの酢の物を入れることが多いですね。量は大体普通の成人男性の1.5人前くらいでしょうか」
水原さんが15年前まで『SUSHI KOTO』で働いていたことが縁で、大谷の食事を担当することになったという。
「これまでは試合の1~2時間前に弁当を届けていたのですが、今年から登板日は開始の5時間前に持っていくようになりました。球場入りしたらすぐに食べられるようにするためです。消化にかかる時間を逆算しているのだと思います。
年明け、大谷さんが来店されて『いつも美味しい料理をありがとうございます。今年もお願いします』と挨拶してくださいました。嬉しかったですね」(松本氏)
シカゴには歴代の日本人メジャーリーガーたちが通っている焼き肉店『Chicago Kalbi』がある。品種改良や飼料にこだわり、和牛に近い肉質を実現した「和州牛」が人気の秘密だ。オーナーを務める戸塚功氏が言う。
「イチローさんや松井(秀喜・47)さんにはよくお越しいただきました。最近だとパイレーツの筒香(嘉智・30)さんがよく来られますね。『こんなに美味しい肉がアメリカで食べられるとは。シカゴに来たら必ず食べに来ます!』と喜んでくださいました。ダルビッシュさんはよくチームメイトといらっしゃいます。みなさん翌朝からトレーニングがあることが多いので、腹八分目くらいですが、それでも普通の米国人の2人前くらいの量はペロッとたいらげますね」
腹が減っては、戦はできぬ――。侍たちの活躍のウラには、それぞれの「超メジャー級グルメ」があるのだ。


『FRIDAY』2022年6月10日号より
PHOTO:株式会社明治(1枚目) 共同通信社(3枚目)