コロナ禍で25億の赤字も…貸会議室TKP「V字回復できたワケ」 | FRIDAYデジタル

コロナ禍で25億の赤字も…貸会議室TKP「V字回復できたワケ」

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創業間もないころのTKP社内。中央のネクタイをしめた男性が河野氏(画像:TKP提供)

「20年4月に緊急事態宣言が出た時は、台風が過ぎ去るまでしばらく冬眠しようと覚悟しました。しかし、半年たっても1年たっても台風は収まりません。危機感は募るばかり。そこで私は、面識のない首相と直談判することに決めたのです」

こう語るのは、貸会議室大手ティーケーピー(以下、TKP)社長の河野貴輝氏(49)だ。河野氏が語る「首相」とは、当時の総理大臣・菅義偉氏。ターニングポイントとなった菅前首相との直談判については、後ほど詳述する――。

貸会議室業は新型コロナウイルス感染拡大の影響をモロに受け、TKPは21年2月期の営業利益で創業以来初となる25億円近い赤字を記録した。しかし今年2月期は、赤字額は約9億円にまで大幅減少。今後も経営改善が見込まれる。なぜTKPは、コロナ禍でもV字回復ができたのか。河野氏が振り返る、激闘の記録だ。

河野氏がTKPを立ち上げたのは05年8月。32歳の時だ。

「大学(慶応義塾大学商学部)卒業後は伊藤忠商事に入り、為替証券部で働いていました。日本オンライン証券(現・auカブコム証券)の設立などに携わり、当時からベンチャー企業の醍醐味を感じていた。そんな時に上司と一緒に設立したのが、イーバンク銀行(現・楽天銀行)です。伸び盛りの企業を支援していると、自分も社長として可能性を大きく育てる仕事がしたいと強く思うようになりました」

「もったいない」がビジネスチャンスに

河野氏は大分県出身。高校時代は弁論大会で優勝した

TKPを作るキッカケとなったのが、東京・六本木にあった旧・防衛庁の跡地(現・東京ミッドタウン)だ。跡地近くに建っていたビルは取り壊される予定だったが、1階のイタリアンレストランだけが営業。2階、3階は誰も使用していない状態だった。

「取り壊すまでなら電気も通っているのに、もったいないですよね。そこでビルのオーナーに、『レストランが立ち退くまで2階、3階を貸してほしい』とお願いしたんです。使われていない空間を借りてくれるんですから、オーナーは大喜び。相場の3分の1ほどの価格で、敷金や立退料もいらないという好条件で借りることができました」

河野氏は2階を貸会議室にし、3階を建設会社の仮設オフィスとして貸し出した。バブル崩壊以降、企業は大きな会議室を持たない傾向が強まっていたため貸会議室業は順調に拡大。弁当や旅館業にも手を広げ、大きなセミナーや泊まり込みの研修にも対応する。19年には世界各国でレンタルオフィスを展開する「リージャス」の日本法人を子会社化し、TKPは大きく成長。20年2月期には、営業損益で過去最高の63億円の利益を出した。

ところが……。

慶応義塾大学卒業式で家族と

「コロナの感染拡大は想定外でした。しかも1年たっても収まる気配がありません。貸会議室や宴会場の利用が激減し、業績は急降下。21年には、創業以来初の赤字となりました。そんな時です。『リージャス』の創設者であるマーク・ディクソンさんが、貴重な意見をくれたのは。『日本はどうして都心部でのワクチン接種を広げないんだ? 欧米ではワクチンのおかげで経済活動が再開している』と。

日本では高齢者へのワクチン接種を優先させ、働き盛りの世代への普及は進んでいませんでした。このままでは、日本経済が死んでしまう。経営者の中には、自己負担でもかまわないから職域接種をしたいという企業は多くありました。TKPであれば、全国でワクチン接種会場を用意できる。経済同友会の幹事でもある私は強い使命感を覚え、菅首相に直談判することに決めたのです」

21年5月、河野氏は首相公邸で菅首相と面会し都心部でのワクチン接種を進めるよう要望する。当初15分の予定だった面会は40分に。菅首相は河野氏の要望を聞き入れ、翌6月からワクチン接種を促進。コロナで利用が減ったTKPの貸会議室が、会場として使用されることになった。

「菅首相の決断で、9月までの3ヵ月間で100万人ほどがワクチン接種しました。私たちも恩恵を受けます。職域接種をした多くの企業とパイプができ、新入社員研修や社員採用試験で貸会議室を使わせてほしいという依頼を多くいただいたのです」

ワクチンのおかげで、日本経済が再起動し始めたのは周知のとおりだ。さらにTKPは子会社化したイベントプロデュース企業「メジャース」のノウハウを活用し、オンラインでの会議やセミナーを華やかに演出。コロナ後の新しい事業として、需要が高まっている。

「ようやく冬眠から覚めた感覚です。これからは逆襲の時間です。コロナで失ったモノを取り戻し、素晴らしい空間を提供することで日本の成長をサポートしていきます」

首相との直談判という河野氏の意表をつく行動が、TKPと日本経済を再生させようとしている。

慶応義塾大学の仲間たち。右端が河野氏
伊藤忠商事時代の1枚。左が河野氏
東京・市ヶ谷の本社で。河野氏はサッカー「大分トリニータ」のスポンサーでもある
「これから逆襲の時間です」と熱を帯びて語る
  • 画像西崎進也 TKP提供

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