帝京、早稲田、天理、東海、大東……。今年の大学選手権は大混戦

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2018年の大学選手権決勝。帝京はわずか1点差で明治を下した

今季の大学ラグビーシーズンがいよいよ大詰めを迎える。

東西の主要リーグが全て終わった12月2日、全国大学選手権のトーナメント表ができあがった。ファン注目の人気校は12月16日の3回戦から、特に好成績を収めたチームは22日の準々決勝から登場する。今回は「上級生の力」「スタイルの面白み」という観点から、主要出場校の見どころを紹介したい。

「最初、先輩方は怖く、厳しいのだろうと覚悟をしていたのですが、実際は違っていて。練習では厳しいアドバイスもしていただくのですが、その裏には愛情があるとわかりました。雑用は基本、4年生がやってくれていて、夏合宿中の余裕がない時も上級生が色々と助けてくれたのを覚えています」

帝京大入学時の思い出を語るのは、現在4年生の岡本慎太郎だ。加盟する関東大学対抗戦Aで8連覇を達成し、選手権では10連覇を狙い、22日の準々決勝に登場する。

帝京大の謳い文句は「脱体育会系」。寮での食事の配膳などの雑務を4年生が率先して行い、次の年に4年生となる3年生は部内での最上級生のあり方について何度も話し合う。

今季のレギュラーにはアウトサイドセンターの尾崎泰雅ら2年生が多く並び、チャンスメーカーとして活躍。もっとも、プレッシャーが大きい場面での球の扱いや要所でのキックが乱れることもある。結果、対抗戦では明治大に敗れ、勢力分布図を複雑化させることとなった。

1年時から主戦級の4年生フルバックである竹山晃暉副将は、秋口にこう語っていた。

「パワーもあるし、横にも動けるし、本当に何でもできると思うんです。ただ、それが中途半端になったり、軽いプレーが出てきたりすることが年々、増えている。僕が1、2年生の頃はそういうぬるさはなかったのですが、いまは若いメンバーがたくさん出ているのでこうなっているのだと思います。これを超えれば、来年も、再来年ももっと大きく成長する。ここには、僕ら上級生がアプローチしたいと思います。僕だけでは見られない部分もあるんですが、本郷泰司などもリーダーシップを発揮してくれていて、凄く助かっています」

ここで名前が出た本郷泰司は、秋まで故障離脱していた3年生センター。持ち前の防御力と堅実さでチームを後押しできるか。さらに岡本、淺岡俊亮という4年生プロップは、春、夏、秋と実施した明大戦でスクラムに苦しんでも、ずっと、先発の座を与えられてきた。ここから先は回り道したことを糧として活かす、「4年生の味(部内に伝わる言い回し)」を示したいところだ。

帝京大の昨今の栄光の背景には、完全燃焼を誓う4年生のふんばりをフル活用してきた歴史がある。終盤にレギュラー入りして奮闘した最上級生の例は多い。その帝京大と双璧をなす明治大もまた、上級生の神通力を信じる。

「前へ」が部是の明大では、前年にヘッドコーチとなった田中澄憲新監督が有名高出身の才能に献身性を付与。昨季の選手権で帝京大に20-21と迫り、今年は春、夏、秋とその帝京大を破った。快進撃の裏では、複数リーダー制の導入で4年生の力を最大化させていた。

ところが12月2日、東京・秩父宮ラグビー場で早稲田大との対抗戦最終節を27-31で落とす。攻めては早大防御の分厚い箇所にぶち当たりすぎて、守っては帝京大戦で披露できた堅い壁を構築しきれなかった。何より一枚岩のスクラムでも要所で反則を取られた。こちらは判定の妙とも無縁でなかったが、最前列の祝原涼介はさぞ悔しかったろう。とにかくシーズンを通じて試合ごとの出来にバラつきがあり、対抗戦は4位で終えた。

「勝つには80分間、集中しないと」

こう話すのは明大4年の松尾将太郎。祝原と同じく、福田健太主将の下にいる7人のリーダー団の1人だ。

東福岡高時代には高校日本一に輝いたこともあるスタンドオフの松尾は、明大でも下級生時から主力争いに参戦。しかし昨季終盤、一時控えの「Bチーム」にいた最上級生の堀米航平にスターターの座を奪われる。そしてラストイヤーの今季は、前年度序盤の堀米と同じように長らく「Bチーム」に甘んじていた。

回り道の末、晩秋からようやく「Aチーム」の先発に復帰。帝京大の4年生と同じく、卒業間際ならではの底力を示したい。

「自分の心と話す時間が長かった。ここで自分の気持ちを整理して、自分がどうあるべきかを考え、最後まで諦めずにやってきました。やっぱり学生スポーツなので、最上級生の4年がどう声をかけるかで全然、違ってくると思う。練習中からコミュニケーションを密に取ることを大事にしています」

明大は16日、大阪・キンチョウスタジアムでの3回戦で関西大学Aリーグ2位の立命大と対戦。この関門を突破すれば、関東大学リーグ戦1部で優勝した東海大と激突する。

一昨季まで2年連続で準優勝という東海大にも、存在感十分の4年生選手がいる。アウトサイドセンターのアタアタ・モエアキオラだ。

ナンバーエイトのテビタ・タタフとともに15歳で来日し、20歳以下日本代表入りの有資格者だった2016年に正規の日本代表へ2人同時に初選出された。ジェイミー・ジョセフ現ヘッドコーチ下では代表から遠ざかっているが、モエアキオラは来季、ニュージーランドの強豪チーフスと契約する。

チーフスとは、日本代表に準ずるサンウルブズも加わる国際リーグのスーパーラグビーの強豪。来季に向けてはサンウルブズに先んじてモエアキオラにラブコールを送っていて、当の本人は「(断るのは)もったいない」と快諾した。現在離日中のジョセフには、大学選手権で戦ううちから存在感をアピールしたいところ。当たりが重くてフットワークが軽いのだから、これから初めてラグビーを観る方にも凄さが伝わりそうだ。

チームのプレースタイルは、準々決勝から登場の2校が面白い。

関西覇者の天理大は、飛び出す防御の背後にゴールラインと平行な球筋のパスを通す。味方を走らせる。ファウルア・マキシら留学生のパワーも目立つが、その個性に依存していないところが肝だ。

対抗戦2位の早大は、古庄史和ヘッドコーチ曰く「背番号にこだわらない」。前年度まで攻撃中の各選手の立ち位置を厳格に定めていたが、今季は相良南海夫監督新監督の意向で複層的な陣形をその場、その場にいた選手が臨機応変に編成。相手にとっては的が絞りにくくなった印象で、早明戦では大型センターの中野将伍が2トライを決めるなどして快勝した。

ちなみに早大は今年、創部100周年を迎えていて、大会注目選手の1人を擁している。

齋藤直人である。早期の日本代表入りも期待される3年生スクラムハーフは、球さばきの速さに的確さ、距離も精度も光るキックが持ち味。ストイックな気持ちで頂点を見据える。

「ただ勝つだけじゃなく、1つずつ成長する。チャンピオンになるには止まっている暇はない」

他には天理大と準々決勝でぶつかりそうな大東大はアマト・ファカタヴァらによるオフロードパス(タックルされながら球を繋ぐプレー)を繰り出し、早大への挑戦権を争う慶応大と京都産業大はしぶといタックルに活路を見出す。

大会のクライマックスは正月2日の準決勝、そして12日の決勝だ。カレッジスポーツに価値を見出す日本の国柄と相まって、会場の秩父宮は来場客でごった返すだろう。青春物語としても戦法の品評会としても味わえるバトルに、多くのファンが熱狂するにちがいない。

  • 取材・文向風見也

    スポーツライター。1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとして活躍。主にラグビーについての取材を行なっている。著書に『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー 闘う狼たちの記録』(双葉社)がある

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