大統領と世界を移動する地上最強専用車「ビースト」の秘密 | FRIDAYデジタル

大統領と世界を移動する地上最強専用車「ビースト」の秘密

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後部座席に座るバイデン大統領(撮影:加藤博人)

 愛称「THE BEAST」=「地球上最強の野獣」

5月22日(日)、3年ぶりに横田基地で開催された「日米友好祭フレンドシップフェスティバル2022」に集まった多くの日本人が見守る中、第46代アメリカ大統領として初めて来日したジョー・バイデン大統領も日本国内(主に都内)の移動にはアメリカ大統領専用車「キャデラック・ワン」を使用した。

このアメリカ大統領専用車は、またの名を「THE BEAST」(ビースト=地球上で最強の野獣)という。ジョージ・W・ブッシュ大統領時代の2001年に、大統領専用車が重装甲車仕様となった頃から、専用車を管理する大統領シークレットサービスによって名付けられた。

地上最強と言われるこの車。アメリカ国内はもちろん、大統領が世界各地を移動する際には輸送機に載せられて一緒に移動する。すぐに車で移動できるよう、エアフォース・ワンが到着する数時間~数日前に到着し、大統領を迎えいれるべく現地の空港などでスタンバイしているのだ。

アメリカでは、大統領が移動に使う乗り物のことは一般的に「〇〇〇・ワン」と呼ばれる。例えば航空機は「エアフォース・ワン」、このたび、横田基地から都内米軍施設まで大統領を乗せたアメリカ海兵隊のヘリコプターは「マリーン・ワン」、そして、ゼネラルモータース(GM)のキャデラックをベースにした専用車は「キャデラック・ワン」と呼ばれる。

GM側の正式名称は「キャデラック・プレジデンシャル・リムジン」(キャデラック大統領専用車)とされているが、実は一般に販売される「キャデラック」との共通点は顔つきとエンブレム程度で、シャシーはGMのトラック用フレームがベースとなっており、中身はまるで別物だ。

17億円以上かけて2018年9月にデビュー

現在のビーストは、17億円以上をかけて新造される契約がGMと結ばれた。同じ仕様のビーストは全部で10台前後作られており、大統領と共に動くのは通常2台だ。この2台は、どちらに大統領が乗っているか瞬時にはわからないようにするカモフラージュのため、全く同じ仕様となっている。

ビーストの窓ガラスは5層の防弾仕様となっており、最も分厚い部分では厚さ約13cm。非常に分厚いガラス(というよりガラスの塊?)であるため、当然、開閉することはできず、運転席の窓だけが3インチ(約7.6cm)程度開く仕様となっている。

ドアにも各種の装甲が施されており、その厚みは平均で20cm以上。重量は政府専用機などにもしばしば採用されているボーイング757ジェット機と同レベルの重量があるというから驚く。

結果、ビーストの車両重量は約9トン!同型のリムジンの3-4倍、コンパクトカーなら8-9台分の重量となる。それゆえ、最高速度は100km/h前後、燃費は2-3km/L以下、0-100km/hに至るまでには15秒以上が必要なのだ。

2019年に来日した当時、ビーストから手を振るトランプ大統領(撮影:加藤博人)

ロケット弾の攻撃にも耐えられる「耐爆仕様」

この他にも、判明しているだけでこれだけの「地上最強装備」が備わっている。

・誰かが不法にビーストに侵入した場合、ドアハンドルに触れると電気ショックや催涙ガスなどの攻撃が行われる。

・事故や攻撃を受けた際の救急医療体制も万全。車内の冷蔵庫には大統領自身の血液が輸血用に貯蔵されている。

・生物兵器、化学兵器で攻撃を受けた場合、車内の空気は外界と完全に遮断され特殊な換気装置が働いて清浄で安全な空気で満たされる。

・防弾ガラスと装甲で強化されたボディは「携行式ロケット弾」の攻撃にも耐えられるレベル、と言われる。

・攻撃のターゲットとされやすい車両の燃料タンクは銃で攻撃されても爆発しないようフォームシールにより完全密封されている。

・グッドイヤー製のタイヤはケブラー繊維が使用されたランフラットタイヤを装着。万が一タイヤが攻撃されて吹き飛ばされてもホイールだけで走行可能。

・車体下は耐爆仕様となっており、手りゅう弾やIED(即席爆発装置)などから守られる。

・車両の後ろには追っ手からの攻撃を避けるため、煙幕発生装置が備わる。

・大統領席には、副大統領とペンタゴン(米国防総省)につながる衛星電話が備わる。

などなど、国のトップが乗る専用車として、ここまでの重装甲仕様は他に例がない。プーチン大統領の「アウルス・セナート」、習近平国家主席の「紅旗N501」、もちろん岸田首相が乗る「トヨタ・センチュリー」に比べてもけた違いの装甲が施されている。

このたび、バイデン大統領と共に来日したビーストは、2018年9月、トランプ大統領時代にデビュー。2019年5月にトランプ大統領と共に初来日し、同年6月に大阪で開催されたG20の際にも来日し、今回が3年ぶり3度目だった。筆者は3年前にもパレスホテル東京付近でビーストを目撃しているが、その時と外観で大きく変わったところがなかった。

ただ、ロシアによるウクライナ侵攻によって緊張状態は高まっており、ビーストはさらにアップデートされて、地上最強に拍車をかけているに違いない。

他国ではアメリカのナンバーをそのまま使用するが、日本では外務省が発行する青いナンバーをつけて移動。前回、トランプ大統領が来日時は、前後のナンバーが全く同じだった。今回のバイデン大統領では、2台がそれぞれ違うナンバーをつけていた(撮影:加藤博人)
  • 取材・文加藤久美子

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