格闘技界を席巻する「ボンサイ柔術」強さの神髄が分かった! | FRIDAYデジタル

格闘技界を席巻する「ボンサイ柔術」強さの神髄が分かった!

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左からサトシ、関根、クレベル
左からサトシ、関根、クレベル

人気格闘家・朝倉未来(29)に、「寝技は世界最強」と言わしめた『RIZIN』初代ライト級チャンピオンのホベルト・サトシ・ソウザ(32)。その朝倉未来に『RIZIN.28』で、三本締めで一本勝ちを収め、5月5日の『RIZIN LANDMARK vol.3』では、萩原京平(26)を1Rわずか1分36秒で倒したクレベル・コイケ(32)。そして、『RIZIN』ヘビー級最強の関根“シュレック”秀樹(48)。『RIZIN』のリングを席巻するこの3人は皆、静岡磐田市の『ボンサイ柔術ジャパン』に所属している。

ボンサイ柔術とは、日系ブラジル人であるサトシ・ソウザの父親、アジウソン・ソウザが’93年にブラジルのサンパウロに創立したブラジリアン柔術のアカデミーである。『ボンサイ』の由来は「盆栽」で、「一人一人を手塩にかけて育てる」という意味が込められている。『ボンサイ柔術ジャパン』は’04年にサトシの兄、マウリシオ・ソウザが設立した。

「ボンサイ所属の選手はなぜ強いのか?」

先日の関根の密着取材の際に本誌は強さの一端に触れることができた。

午後6時、ジムに入ってすぐの受付ではサトシが座り、電話対応に追われていた。隣にある道場では20名ほどの小学生を中心とした「キッズクラス」の生徒たちが稽古の真っ最中で、本誌が到着する直前まで、サトシ本人が直接子供たちを指導していた。午後7時からは、「キックボクシング&MMAフィットネスクラス」が始まり、小学生からプロを目指す若い選手、仕事帰りのお父さん、そして、関根までもが一緒になってクレベルから直接指導を受けるのだ。関根が語る。

「普通はアマとプロは練習時間を分けるので、触れ合うことはありません。でも、ここはみんな一緒にやります。ジムとしてはかなり異色です。プロ格闘家とキッズが一緒に稽古するし、クレベルが素人の生徒に直接教える。スパーリングもします。格闘技ファンからすればすごいことなんですけど、ここでは普通。『練習は楽しくやりましょう』というのがボンサイ柔術のテーマなんです」

元警官である関根選手とボンサイ柔術との出会いは、前職時代に遡る。

「国際捜査課への異動がブラジリアン柔術を習うキッカケになりました。国際捜査課は外国人犯罪を捜査する部署なので、外国人の協力者や情報提供者の存在が重要になります。マル暴の時も協力者はいましたが、外国人協力者はいなかった。それで、ブラジリアン柔術の道場に入ろうと思ったんです。

当時、私が勤務していた浜松のあたりにはブラジル人の窃盗団がたくさんいて、正直、ブラジル人に良い印象は持っていませんでした。ブラジリアン柔術に興味は持っていましたが、半分以上は刑事の職務として入った感じです。

でも、入ってみたら、そのコミュニティがすごく温かくて、ジム全体の雰囲気が『ファミリー』なんです。サトシ・ソウザやクレベル・コイケのような日系ブラジル人って戦前、戦後間もない頃に夢を追ってブラジルに渡った人たちの子孫じゃないですか。彼らには今でも古き良き日本の文化がそのまま残っているんです。だから、目上の人を敬うとか、家族で助け合うとか、親が死んでしまったらその子供を近所の人が助け合って育てるとか、そのコミュニティ全体が家族なんですよ。

このジムも、ソウザ兄弟が、クレベルを家族として招き入れたみたいに、ジム全体もそうなんです。僕もそうだし、生徒たちみんなが家族なんです」

関根といえば、試合では必ずと言って良いほど壮絶な打ち合いとなることで知られている。大晦日に開催された『RIZIN.33』で勝利した31歳のシビサイ頌真(31)との戦いは凄まじい殴り合いとなったが、フラフラになりながらも、決して倒れることはなく17歳差を跳ね除けて見事勝利した。

「俺は身長、リーチ、打撃スキル、年齢、全て彼より劣っているんです。彼も柔術家で柔術のスキルだけはキャリアが長い俺が少し勝っているかな、というくらい。そうなると勝負するのは根性、スタミナ、気持ちしかないんです。だから、とにかく相手を休ませず、常にコンタクトして押し引きして呼吸させないことを心がけていました。彼の方が若いので、一見スタミナも彼の方がありそうですけど、俺はここでサトシとかクレベルとか、軽いけどスピード、スタミナのある選手と常にスパーリングしています。とにかく止まらないという練習をやっていますから、その点では自信がありました」

そして、もう一つ、大きな要因があると言う。

「サトシの兄、マルコス・ソウザがセコンドについてくれたんですけど、この試合に限っては、技術的なことはあまり言わず、常に『大丈夫、大丈夫』とか『まだ頑張れる』とか、励ます声ばかりでした。俺も彼を本当に信頼しているからこそ、好きだからこそ、事前に言われた作戦をそのまま遂行できる。だからこそ、ボンサイは家族なんだなって思えるんです。どんなに打撃をもらっても頑張れるんです」

密着取材の終盤、サトシは関根選手の道場での写真撮影のため、生徒の練習を一時中断してスペースを空けるように指示。「先生も一緒に写ってください」と、サトシとクレベルを左右に置き、中心に立つ関根選手の表情は、まるで大好きな両親と写真撮影に臨む子供のようだった。その様子をジムの生徒たちが車座になって笑顔で見つめる光景は、まさに古き良き昭和の風景だった。

「互いを信じて助け合い、練習は常に楽しく」

ボンサイ柔術門下生の強さの真髄は、まさにこの言葉に尽きるのではないだろうか。

  • 写真足立百合

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