リーグワン先発1試合で代表復帰 堀江翔太が担う「勝利の方程式」 | FRIDAYデジタル

リーグワン先発1試合で代表復帰 堀江翔太が担う「勝利の方程式」

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2023年、フランスで開催されるラグビーワールドカップが始まるまであと1年3ヶ月あまり。5月31日、6月~7月のテストマッチに向けて、ラグビー日本代表34名が発表された。

SO田村優、CTBラファエレ ティモシーら2019年ワールドカップ組が「セカンドチーム」からのスタートと落選する中、36歳の大ベテランがブレイブブロッサムズに復帰を果たした。それは今季から始まったリーグワンの初代リーグMVPにも輝いたHO堀江翔太(埼玉ワイルドナイツ)である。

奥さんが編み込むドレッドヘアーと、短パンを織り込んでプレーする姿がすっかりトレードマークとなった堀江。今季、コロナ禍の影響により開幕から2試合は不戦敗となったが、16連勝で頂点に駆け上がったワイルドナイツにおいて、先発したのはわずか1試合。それ以外は「16」番をつけて後半途中からの出場ながらも「ラスボス」「守護神」「戦術・堀江」とファンに称される活躍で、大きな存在感を示した。

そしてワイルドナイツのリーグワン優勝に大きく貢献した堀江は、監督、キャプテン、メディア、ファンの投票による「ベスト15」にも満票(12P)で選ばれ、選手が対戦して嫌だった選手を選ぶ「プレイヤー・オブ・ザ・イヤー」、そしてリーグMVPと個人「3冠」にも輝いた。

堀江は「スタートで出ているHO坂手(淳史)選手が一貫性を持って常に良いパフォーマンスを出し続けてくれたからこそ、後半、僕の良いプレーに繋がったかな。36歳になっても個人賞をもらえるのは嬉しいことですよ。ラグビー人生、あと数年だと思いますが、最後まで、天井を見ずに、どこまで成長できるかなと自分を見つめて、しっかりと日々頑張っていきたい」と破顔した。

今回、日本代表に選ばれた他の選手に比べて試合出場時間は少ない方だが、実際に、ジョセフHCに堀江について聞いてみると「堀江はほんとにクオリティーの高い選手です。年齢を感じさせない、一貫性を持った、素晴らしいシーズンを過ごしてくれた。私が日本代表の指揮官になってから、ラグビーがどんどん変わってきて、イングランド代表、アルゼンチン代表、南アフリカ代表などの強豪と戦っていくには(試合終了は80分だが)84分、85分まで戦い切れるような一貫性のあるパフォーマンスが必要。そういった意味で、堀江の経験というものは、若い選手とインターナショナルレベルをつなぐもので、リーダーシップにも期待している」と高く評価した。

2023年フランスW杯から、代表スコッドは31名から33名に増えることもあり、過去3回出場し、66キャップを誇る堀江の存在、経験はベスト8以上を狙うチームには、やはり必要不可欠である。

15人制男子日本代表の強化を担う藤井雄一郎ナショナルチームディレクターも「彼はちょっと別格。スーパー特別扱いです。ジェイミー(・ジョセフHC)もずっと気にしていた」と全幅の信頼を寄せた。

5月29日、リーグワン初代チャンピオンに輝いた直後。堀江は2015年以来一緒に歩んできた元ビーチサッカー日本代表の佐藤義人トレーナーと記念撮影(撮影:斉藤健仁)
5月29日、リーグワン初代チャンピオンに輝いた直後。堀江は2015年以来一緒に歩んできた元ビーチサッカー日本代表の佐藤義人トレーナーと記念撮影(撮影:斉藤健仁)

堀江は2010年から日本代表に選ばれ、約10年間にわたる長い間、ワイルドナイツ、スーパーラグビー、日本代表と「三足のわらじ」を履く中で、2015年W杯前には首を、2019年W杯前には右足の甲を手術するなど、世界と戦うだけでなく、自らのケガとも戦ってきた。身長180cm、体重104kgと世界のFW選手と比べると決して大きくない体を酷使してきた代償だった。

そのため2019年W杯後、堀江は「いつもジャパンのことを考えていたが、今は考えていません(ジョセフHCは)若い選手をどんどん起用するだろうし、自分自身も日本代表に行って戦えるかどうか……。まだ自分の中で疑問なので」と日本代表とは一定の距離を置いてきた。

だが、選ぶ側の堀江に対する信頼は、日本代表を離れていても決して揺るがなかった。両者は常に連絡を取り合い、コンディションを確認しながら、日本代表に復帰できるタイミングを確認しあっていた模様だ。

そのため、今季が始まる前、「仕上がっています!」と話していた堀江の言葉は、心身共に代表復帰への準備が整っていたことも意味していた。そして日本代表に関して堀江にたずねると「そろそろ(今年)1回くらい行かんとあかんかな?(代表に復帰できるかどうかは)藤井さんとの“殴り合い”です(苦笑)」と正直に吐露していた。そして今回、2019年のW杯以来の代表復帰を果たしたというわけだ。

「40歳までプレーしたい!」と常々言っていた堀江は、2015年の首の手術後に日本代表合宿で出会った「ゴッドハンド」と異名を取る元ビーチサッカー日本代表の佐藤義人トレーナーのトレーニングの下、肉体改造を行ってきた。毎年夏には1ヶ月のトレーニング合宿を敢行し、この数年、3日以上休むことは一度もなく、佐藤トレーナーが作ったメニューをやり続けている。

堀江は「(佐藤さんのトレーナーのおかげで、30歳のときよりも体はいい感じです! 毎年、毎年、今がベストと思える状況です。(近年)日本代表に合流していなかった分、自分にフォーカスを当てていたので、動きやすいしコンタクトの強さも上がっている。今季もタックル時のインパクトやジャッカルに入るスピードはシーズンから上がった」と、36歳となった今も自らの成長を実感し、喜び、モチベーションに変えてきた。

以前は「2019年W杯を集大成にしたい」と話していたが、自身のコンディション、パフォーマンスが上がってきたこともあり「W杯は選手であれば誰でも目指したい特別な場所。常に出られる状態を作っておいて、選ぶのはジェイミー(・ジョセフHC)なので、いいと思って選んでくれたら頑張りたい。もちろん出られれば、前回(ベスト8)より結果を良くしたい」と意気込んでいる。

FW第一列であるフッカーはスクラム、ラインアウトといったセットプレーだけでなく、ボール争奪戦でも体を張り消耗が激しいポジションである。ワイルドナイツ同様、日本代表でも新たに共同主将に就任した坂手が先発して、堀江で締めくくるという〝勝利の方程式〟が見られそうだ。

MVPとベストフィフティーンの記念品を手にする堀江(中央)。右が稲垣啓太、左がWTBコロインベテ(写真:アフロ)
MVPとベストフィフティーンの記念品を手にする堀江(中央)。右が稲垣啓太、左がWTBコロインベテ(写真:アフロ)
2019年、ベスト8進出を決めたスコットランド戦。トライをした選手を忠実にサポートする走力が際立っていた(写真:アフロ)
2019年、ベスト8進出を決めたスコットランド戦。トライをした選手を忠実にサポートする走力が際立っていた(写真:アフロ)
  • 取材・文・写真斉藤健仁

    1975年生まれ。ラグビー、サッカーを中心に、雑誌やWEBで取材、執筆するスポーツライター。「DAZN」のラグビー中継の解説も務める。W杯は2019年大会まで5大会連続現地で取材。エディ・ジョーンズ監督率いた前回の日本代表戦は全57試合を取材した。近著に『ラグビー語辞典』(誠文堂新光社)、『ラグビー観戦入門』(海竜社)がある。自身も高校時代、タックルが得意なFBとしてプレー

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