元ヘビー級王者が予測する「井上尚弥vsドネア第2戦の行方」 | FRIDAYデジタル

元ヘビー級王者が予測する「井上尚弥vsドネア第2戦の行方」

  • Facebook シェアボタン
  • Twitter シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン

明日、ついに井上尚弥vs.ノニト・ドネア第2戦のゴングが鳴る。井上が判定勝ちした両者の第1戦(2019年11月7日)は、1922年に創刊された米国のボクシング雑誌『Ring』が選ぶ年間最優秀試合となった。バンタム級の世界戦が同賞に輝くのは、実に20年ぶりのことであった。

開戦前日、引き締まった体を見せる井上とドネア(撮影:山口裕朗)

井上は再戦までに3試合、ドネアは2試合をこなし、両ファイターともKO勝ちを重ねてこの日を迎える。WBA/IBFチャンピオンの井上が、その成長ぶりをいかに発揮するかが注目されているが、現在39歳のWBC王者、ドネアのここ2試合の戦いぶりも圧巻だった。まるで年齢を感じさせないパフォーマンスに、ファンは酔いしれた。

6月に入ってから、井上の直近の4試合、そしてドネアの3試合の映像を、元世界ヘビー級チャンピオンであるティム・ウィザスプーンに見直してもらった。

彼は語った。

「いやぁ、再起戦でWBCタイトルを得て、防衛にも成功したドネアには驚かされた。冗談抜きに感動したよ。本人が述べたように、イノウエ戦の負けを徹底的に分析し、やるべきことをやった結果だな。とても39歳には見えない。

イノウエはスピードもパンチもあって、気持ちが強い。完成されたファイターだ。カウンターも、かなり上手い。彼もドネアも、一級品の世界チャンピオンだ。両者とも俺の好きなタイプだね。前回以上に素晴らしい、手に汗握る一戦になるだろう」

名王者として名高いティム・ウィザスプーン

予想を訊ねると、ウィザスプーンは「どちらが勝つと言うのは、難しいな……」としながら評した。

「当日のコンディションや、リングでの一瞬の閃き、そして相手の出方に合わせた対応力が求められる。キャリアのあるドネアが万全の準備をして、最高の状態に仕上げたことを俺は称えたい。自信満々の発言をしているってことは、つまり、練習段階で思い残すことが無いからさ。

ディフェンスの差が明暗を分けると思う。イノウエは攻撃的な選手である分、パンチを出す際に、ちょっとガードが下がる。そこをドネアは突くんじゃないか。イノウエはスピードで躱そうとするだろうが、ドネアもその対策は練っている筈。パンチを同時に放った場合、イノウエが勝つさ。鋭さもイノウエが優っている。ボディーショットも巧みだ。

ただ、この2試合でドネアは引き出しの多さと、打たせないボクシングを見せている。先手を取るのがどちらか、ペースを握るのはどちらか、耐久力が上なのはどちらか、更にはアジャスト力がある方が勝つだろう。イノウエが第1戦のイメージのままボディーを狙ったら、ドネアは返り討ちにするだろうな」

米国東部のペンシルバニア州フィラデルフィアで生まれ育ち、世界ヘビー級タイトルを2度獲得したウィザスプーンは、現在も故郷の傍で生活している。11歳でフィリピンからアメリカに移り住み、合衆国西部でボクシングを学んだドネアとは面識が無い。

「ドネアは祖国を離れ、カリフォルニアやネバダで暮らしていたんだよな。ほんの少しの差だが、イノウエのボクシングより幅があるように見える。それは、アメリカンスタイルを体得しているからさ。

具体的に言うなら、パンチの殺し方、キャッチの仕方、距離の詰め方、相手の懐への潜り方などだ。特に頭の位置の動かし方、アングルの取り方が巧みだ。ドネアは『2年7カ月前の自分とは別人だ』と発言したようだが、本当に自分を築いたと思う。

イノウエの破壊力が、それを上回る可能性も大いにある。22戦全勝19KOだもんなぁ。バンタムで、彼を脅かす存在はいないと思っていたよ。でも、ここ2試合のドネアには文句の付けようが無い。42勝(28KO)6敗か。6回負けているけれど、敗戦の度に反省し、それを糧にするって本当に困難な作業だ。

心身ともに前回のイノウエ戦を乗り越え、39歳の体を労わりながら、ベストな状態で日本に降り立った。実際に拳を交えた相手に対する自信満々の発言は、単なる強がりには聞こえない。だいたい、彼は虚勢を張るようなレベルの男じゃないよ。だからこそ、今回も何かを見せるように感じるんだ」

さて、井上vs.ドネアIIを2日後に控えた現地時間の6月4日、米国ミネソタ州ミネアポリスで行われたWBC/WBOスーパーバンタム級タイトルマッチは、統一チャンピオンのステファン・フルトン・ジュニアが、元同級WBA/IBF王者、ダニー・ローマンをワンサイドの判定(120-108、120-108、119-109)で下した。チャンピオンのフルトンは、デビュー以来21連勝を飾った。

ステファン・フルトン・ジュニア(左)vsダニー・ローマン(Photo:Esther Lin/SHOWTIME)

フルトンもフィラデルフィアに住んでおり、ウィザスプーンの隣人でもある。4日のファイトが公に発表された直後の5月11日、Zoom会見に参加した筆者はフルトンに、井上尚弥戦について質した。

「イノウエが122パウンドに上がってくるのなら、喜んで戦う。我々のファイトは、いつか実現するんじゃないか。でも、彼が直ぐに階級を上げるとは思えない。イノウエは非常に完成されたファイターだ。予期せぬ動きをするよね。ただ、対戦したらもちろん、俺が勝つさ」

戦いを制したフルトン(Photo:Esther Lin/SHOWTIME)

井上の目下の希望は、バンタム級で4団体統一を果たすことだが、スーパーバンタム級転向も視野に入れている。昨年末、井上が所属するジムの大橋秀行会長もそう語った。

井上が4団体のバンタム級タイトルを統一した暁には、間違いなくスーパーバンタム級に転向するだろう。対戦相手の候補としてフルトンの名が挙がるのは疑いようがない。

フルトンvs.ローマン戦後、再びウィザスプーンにコメントを求めた。

「面白いカードだな。でも、アラン・デイパエン戦のイノウエよりも、今回のフルトンのキレの方が上だった。2冠王者とはいえ、現時点でのフルトンはアメリカ中に知られた人気選手ではない。対戦することになれば、日本の国民的スターであるイノウエを喰ってやろうと、フルトンのモチベーションは物凄く高くなるだろう。一方で、4つのベルトを手にしたイノウエが、どのくらいの満足感を覚えるか。いかなる気持ちで次に向かうか。俺はそこが左右すると見るね」

4万人のファンの前で、WBAヘビー級タイトルをKOで防衛した経験のあるウィザスプーンは、集客についても言及した。

「今回、フルトンは、4695人しか入らない小ぶりのアリーナで戦った。俺が耳にした話では、ファイトマネーは50万ドル、ローマンが30万ドルってことだ。イノウエは既に1試合で1ミリオン以上(1億円以上)を稼いでいるんだろう。豊かな生活を手に入れ、どこまで自分を追い込めるかが鍵になるよ。現時点では、フルトンの方が飢えた状態だろう。

イノウエは日本で2万人収容のアリーナを満員に出来るチャンピオンなんだよな。でも、アメリカでそうなるには、やっぱりマニー・パッキャオのレベルに達しないと厳しい。

5000席くらいの会場で、ドネアやフルトンクラスのトップファイターとの熱戦を続ければ、ステップアップ出来るさ。いいモノを持っているから、是非、日本国内だけじゃなく本場で成功を手にしてもらいたいね」

直前練習でも絶好調ぶりをみせた井上。名勝負となるのは間違いない(写真:山口裕朗)

明日のさいたまスーパーアリーナでは、いかなるファイトが繰り広げられるか。井上が更に大きなステージへの切符を得るか、あるいはドネアが雪辱を果たすか、目が離せない。

ティム・ウィザスプーンの人生を描いた林壮一氏の著作『マイノリティーの拳』(購入はこちらをクリック

  • 取材・文林壮一

    ノンフィクション作家

  • 写真山口裕朗(井上、ドネア)、林壮一(

Photo Gallery6

Photo Selection

あなたへのおすすめ記事を写真から

関連記事