名作の舞台で…男性教師が元同僚女性を絞殺の背景
「釧路に行ってくるね」
夫や子どもにそう言い残して、女性は車で外出した。しかし女性が発見されたのは、釧路ではなく東へ約150km離れた帯広。地中から衣服を着た遺体となって見つかったーー。
北海道北見市に住む宮田麻子さん(47)が、自宅を出たのは5月29日お昼前のことだ。同日の夜までは家族とLINEでやり取りしていたが、翌30日になると連絡がつかなくなる。心配した夫は北海道道警に通報した。
「妻が帰ってきません。行方がわからなくなりました」
31日には行方不明届を提出。警察が夫から話を聞くと、捜査線上にある男性が浮上する。
「帯広市の帯広農業高校(以下、帯広農)に勤務する、片桐朱璃(しゅり。35)という男性です。警察が6月1日に任意で事情聴取すると、男性は宮田さんと会っていたことを認めこう供述しました。『クビを絞めて殺害した。遺体は車で運び、スコップで穴を掘って埋めた』と。
男性立会いのもと、警察が帯広市内の雑木林を捜索すると地中から宮田さんの遺体を発見。クビには、絞められたような痕があった。死因は窒息でした。警察は片桐容疑者を、死体遺棄の疑いで逮捕しましたが、殺人でも捜査を進めています」(全国紙社会部記者)
39年ぶりの快挙も……

片桐容疑者が今年4月に帯広農に配属されるまで、宮田さんとは同僚だった。16年4月から今年3月までの4年間、北海道内の別の高校に勤務していたのだ。片桐容疑者は農業科担当、宮田さんは英語を教えていた。
「2人とも、生徒や保護者からのウケはとても良かったようです。長い期間休む生徒がいたら、親身になって相談に乗ってね。決して声を荒らげることもない。温厚で教育熱心な教師でした。片桐容疑者にも奥さんと3人の子どもがいますが、当時から宮田さんとの仲の良さは評判だったようです」(同前)
片桐容疑者は宮田さんと同僚だった高校の野球部監督で、帯広農でも副部長をしていた。帯広農は、21年に39年ぶりの夏の甲子園出場を達成。古豪復活に、地元住民も湧いていたという。
「自宅を離れた宮田さんは、帯広農の野球の試合を観戦していたことがわかっています。遺体遺棄現場と試合が行われていた球場は、歩いても20分かからない距離です。遺棄された林は陸上自衛隊の基地が近く、外灯もないため夜になると真っ暗。人通りもほとんどありません。
片桐容疑者と宮田さんは、車中で話しているうちに口論になったのでしょう。片桐容疑者が遺体遺棄のためにスコップを所持していたことから、2人の間に大きなトラブルがあったとして、警察は捜査を進めています」(別の全国紙記者)
「聖地」で起きた悲惨な事件に、心を痛めるファンも多い。帯広農は、有名な漫画やドラマの舞台でもあるのだ。
「同校出身の荒川弘さんが作者の『銀の匙』ですよ。恋愛や将来のことに悩みながら、高校生たちが農業を通じて成長していくという名作です。帯広農は、19年前期に放送された広瀬すずさん主演のNHK朝ドラ『なつぞら』のモデル校でもあります。昨年は久しぶりに甲子園出場も決め良いニュースが続いていたのに、今回の事件はとても残念です」(同前)
警察は片桐容疑者と宮田さんの関係や、殺害動機について調べを進めている。

写真:共同通信社