激戦地マリウポリ 爆撃で瀕死の重傷を負った夫妻「奇跡の脱出記」 | FRIDAYデジタル

激戦地マリウポリ 爆撃で瀕死の重傷を負った夫妻「奇跡の脱出記」

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マリウポリで重症を負ったタチアナさん夫妻(画像:タチアナさん提供)

ウクライナ東南部マリウポリ。

ロシア軍の侵攻で最激戦地となった都市だ。国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」によると、命を落とした民間人は少なくとも3000人以上になる。3ヵ月近い攻防の末、5月20日にロシアが完全制圧を宣言。瀕死の重傷を負いながら、地獄の戦闘地から奇跡の生還を果たした学校教員の夫妻がいる。夫人である英語教師タチアナさん(57)が振り返る、想像を絶するウクライナの現実だ。以下、前後編に分け紹介する。

――なぜマリウポリに留まっていたのですか?

「私たちはアゾフスタリ製鉄所近くに住んでいました。マリウポリで最初に激しい攻撃を受けた地区です。2月24日のロシア軍による侵攻直後、私たちの勤務する学校や、近くの建設専門学校、孤児院といった施設も被弾しました。2月29日、自宅では危険を感じ市内の別の地区に住む友人宅に避難しようと銃撃戦の中、車で移動しました。

しかし、追撃砲が私たちをめがけ雨のように飛んできます。砲弾の破片が体のあちこちに突き刺さり、私たちは病院に運ばれました。私はヒジの骨が折れ、筋肉の一部が裂け、神経が損傷し指が動かなくなってしまいました。夫はアゴを粉砕。足も負傷しました。こうして、やむを得ず病院の機能が失われる3月31日までマリウポリに留まることになったんです」

病室に収容されなかったワケ

タチアナさんが勤務していた学校。ロシア軍の砲撃を受け黒焦げになってしまった

――病院での生活について教えてください。

「病室には、大きな窓があります。砲弾の衝撃でガラスが飛び散る危険性があるため、患者は病室ではなく廊下に収容されました。周辺は激しく砲撃され、爆発のたびに建物が揺れ、ガラスやドアが吹き飛び、人々が恐怖のあまり泣き叫ぶ……。とても怖かったです。

絶え間なく負傷者が運び込まれ、医師たちが精一杯の手術や救護活動を行っていました。彼らこそ、1ヵ月以上病院から離れず人命救助に尽力した真の名も無き英雄です。彼らが地獄から抜け出し、今も生きていることを祈ります」

――病院にいても身の危険を感じたのですね。

「軍用機が飛んでいる時や、その後に続く爆発の揺れはとても怖かったです。窓からは燃え盛る高層アパートが見えました。負傷者は爆発のあった地域から運ばれてきましたが、多くの人が腕も脚もなかった……。街の中心部にある産婦人科の病院も爆撃されました。そこから妊婦さんや赤ちゃん連れの女性が運ばれてきた。負傷した女性の中には、残念ながら助からなかった人もいました。

病院は窓ガラスがほとんど割れてしまって、廊下はとても寒かったです。照明もなく、発電機は手術室へのみ電力供給していました。食べ物も尽きた。病院の職員は、せめて患者さんのためにスープでも作ろうと壊れた倉庫などから食べ物を探していました」

砲撃を受けた病院の4階部分

――ロシアの戦闘員が病院を占拠した話を教えてください。

「3月11日、ロシア兵が病院に入ってきて負傷したウクライナ兵を探しだしました。その後、今度は(ロシアが占領したウクライナ東部)ドネツク人民共和国の部隊が来たんです。部隊の指揮官だけは、コーカサス系のオセチア人でした。兵士は各階にいて『この病院を守る!』と宣言しておきながら、私たちを四六時中監視し移動を制限しました。

誰かが動くと、『どこに行くんだ?』と聞いてきます。彼らは『チェチェン人部隊ももうすぐやって来て、(ウクライナの精鋭)アゾフ連隊の戦闘員を探すぞ』と言っていました。マリウポリでは、いたるところに(アゾフの)スナイパーがいたのです。私はできるだけドネツク人民共和国の戦闘員と話さないように努めました」

――予期せぬ事態が起きたのは、その2日後ですね。

「はい。どういうつもりなのか、ドネツク人民共和国の戦車が病院の4階を砲撃したのです。歩ける人間は全員地下シェルターに避難し、歩けない患者は後から運ばれてきました。それからというもの、3月30日まで私たちは地下シェルターにいました」

ーー悲惨な状況で……。

「病院の周りを戦車が包囲し、アパート群を撃っていました。アパートは燃え、倒壊し、子どもや動物を連れた生存者は病院の地下室に逃げ込んできました。地下室は人であふれ、とても冷たい地面に座ったり寝転んだりしました」

地下に閉じ込められたタチアナさん夫妻。地獄の暗闇からの生還劇については、【後編:瀕死の夫妻が生還できた奇跡の実話】で紹介したい。

粉々になったタチアナさん夫妻が住んでいたアパート内部
  • 画像タチアナさん提供

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