都会から地方へ…「出稼ぎ風俗嬢」が急増する背景と生々しい肉声 | FRIDAYデジタル

都会から地方へ…「出稼ぎ風俗嬢」が急増する背景と生々しい肉声

ノンフィクション作家・石井光太が家を無くした若者「ヤング・ホームレス」の実態に迫る!

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風俗界は二極化しているといわれる。都会であぶれ地方に流れる女性が増えている(写真はイメージです)

風俗の世界は近年、二極化しているといわれている。端麗な容姿の女性たちが高収入を得る一方で、障害や病気を抱えて、まっとうな職を得られない人たちが、驚くほど安い金額で体を売らざるをえなくなっているのだ。

後者の女性たちは、社会の底辺に落ちたという意味で、最底辺風俗嬢と呼ばれることがある。それでも彼女たちにしてみれば風俗は自分を受け入れてくれる数少ない「最後のセーフティーネット」なのである。

そんな彼女たちが今、その底辺からもこぼれ落ち、「出稼ぎ風俗嬢」として地方の風俗業界を支えていることを知っているだろうか。まるで旅芸人のように、全国の風俗店を放浪しながら生きる〝流しの風俗嬢〟である。

地方の歓楽街の中には、出稼ぎ風俗嬢なしでは成り立たないといわれているところも少なくない。逆に言えば、それだけ出稼ぎ風俗嬢の存在は業界を下支えしているのだ。

底辺からこぼれ落ちた出稼ぎ風俗嬢の生態に、前後編に分けてスポットを当てたい。

女性の8割が県外から

愛媛県松山市の道後温泉は日本三古湯の1つとされている温泉街だ。だが、同時に観光客を相手にした風俗街としても知られており、ヘルス店がひしめく「道後ヘルスビル」などが有名だ。

松山市内だけで店舗型、無店舗型合わせて70店以上の風俗店が存在する。1店舗あたり15人が働いていたとして、常時1000人以上の風俗嬢がいることになる。

そんな風俗店を支えているのが、全国各地から集まってきた出稼ぎ風俗嬢たちなのである。この地区の5店舗に取材をしたところ、在籍する女性の9割が市外から、うち8割が県外からやってきた女性だった。出身地域は北海道から九州まで多岐にわたっていた。

デリバリーヘルスで店長をつとめる男性は、次のように語った。

「うちは十数名の女の子で店を回していますが、ここ10年くらいは、常に半分以上は出稼ぎの子ですね。彼女たちなしではやっていけないと思います。

在籍期間は数ヵ月から1年くらいがもっとも多いです。最初から3ヵ月限定という形で働くような子もたくさんいますよ。うちを辞めた後は、だいたい市内の店ではなく、他県へ流れていっているようです」

こうした出稼ぎ風俗嬢の大半は、キャリーケースと手荷物で全国を放浪しているという。彼女たちの中には、特定の住居がないホームレス女子も多数含まれており、そういう子は複数のキャリーケースを引くか、大きな手荷物を両手に抱えるかしてやってくるそうだ。

一体なぜ、彼女たちはホームレス同然に地方を漂流しているのか。それにはまず都会の風俗業界の構造を知り、彼女たちがそこから地方へとはじき出される構造を知る必要がある。

日本では、おおよそ35万人の女性が風俗業界で働いているといわれている。歓楽街がひしめく大都会では、風俗嬢の数は相当な数に上るのは明らかであり、その分競争は熾烈を極める。

冒頭で指摘したように現代の風俗業界が二極化している背景には、若者の風俗離れ、不況による風俗嬢の増加、利用者層の高齢化、性嗜好の多様化といった現状がある。一部の高級店で働ける女性は高収入を得られるが、そうでなければ価格競争のあおりを受けて自立すら難しいくらいの収入しか得られない。

具体的に言えば、都内の安価な店だと1サービスあたり6000円~8000円なので、女性に入るのは4000円前後。日に3人の客をとったとしても、1万2000円で、交通費や衣装代などの諸経費はすべて自腹だ。これで物価の高い都内に暮らしていれば、食べていくのがやっとといったところだ。

「新人」マークの意味

そんな世知辛い風俗業界で、女性たちが少しでも客を獲得するために利用するのが「新人」というステイタスだ。都内のデリバリーヘルス3店を掛け持ちして働く20代前半の女性は言う。

「店で働きはじめると最初はサイト内で『新人』マークをつけてもらえるんです。マークがつく期間は店によって違って、都内だと入店から1ヵ月、地方だと3ヵ月くらいって感じです。日本人のお客さんって初物好きなので、新人の子を指名する率が高く、店側も積極的にプッシュしてくれる。なので新人期間中は、3割増しくらいで指名が多く入るんです」

風俗でいう新人とは、必ずしも風俗初心者を意味するわけではない。あくまでもその店にとって新人というだけの話だ。だが、男性客は初心者であることを期待するし、女性もそれを演じるので、指名が集まることになる。

先の女性はつづける。

「店で一定期間働いていれば、『新人』ではなくなっちゃいます。そうなると、お客さんも減る。女の子にとっては条件が悪くなることになりますよね。だから、新人期間が終了したのと同時に、別の店へ移籍してまた新人として扱ってもらおうとする。1店舗で働くより、次から次に店を変えて常に新人でいた方が稼げるんです。

私が3、4店を掛け持ちしているのは、そのためです。1店舗は長く働いて常連さんがたくさんいる店です。あとの2、3店舗は週1ずつ働いて、新人期間が終わったら別の店へ移ります。

いくつもの店を掛け持ちするのは、週6でシフトに入っている子より、週1しか入っていない子の方が、お客さんにとってフレッシュ感があるからです。同じ新人でも、週1しか来てない子の方が指名は集まる。だから、いろんなお店を掛け持ちして、それぞれで素人のイメージをアピールするんです」

人気のある女性なら特定の店でナンバー1を保持しつづけた方が何かと都合がいいだろう。だが、ランキングの上位に入れない場合は、新人としていろんな店を回っていた方が客がつく。週1で複数の店で働くのは、毎日シフトに入るより、客に初々しさをアピールできるからなのだ。

これ以外にも、風俗嬢には本番を要求する男性客をいなしたり、女性同士のトラブルを回避したりする術も必要だ。こう見ていくと、都会で働く女性であっても、あの手この手をつかって厳しい業界で生き残ろうとしているのがわかるだろう。だが、逆に言えば、都会で風俗嬢としてやっていくには、そうした身のこなしが必要なのだ。

冒頭に述べたように、容姿端麗で器用な女性はそれができるだろうが、外見でアピールポイントが少なく、心の病気や障害があったりすれば、次から次に店を変えて、素人を演じて接客し、それなりの収入を手にするということが難しい。トラブルにも巻き込まれやすいだろう。

こうした女性たちは、都会の激しい競争から脱落し、より競争の少ない地域へと流れていくことになる。その行先こそが、地方の歓楽街であり、彼女たちが「出稼ぎ風俗嬢」になる第一歩なのである。

【後編:「出稼ぎ風俗嬢」の生々しい肉声】では具体的にイメージをつかんでもらうために、彼女たちが都会の競争から離脱することになったプロセスを具体的に示したい。

  • 取材・文石井光太

    77年、東京都生まれ。ノンフィクション作家。日本大学芸術学部卒業。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに取材、執筆活動を行っている。著書に『「鬼畜」の家ーーわが子を殺す親たち』『43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層』『レンタルチャイルド』『近親殺人』『格差と分断の社会地図』などがある。

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