人工中絶、家出…「出稼ぎ風俗嬢」の生々しい実例と厳しい実態 | FRIDAYデジタル

人工中絶、家出…「出稼ぎ風俗嬢」の生々しい実例と厳しい実態

ノンフィクション作家・石井光太が家を無くした若者「ヤング・ホームレス」の実態に迫る!

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トラブルが重なり風俗で働く女性も多い(写真はイメージです)

【前編:「出稼ぎ風俗嬢」が急増する生々しい背景】に続き、風俗界の底辺で働く女性たちの実態に迫る。紹介するのは、彼女たちの生々しい実話だ。

・さな(26歳)

長野県の父子家庭で、さなは育った。高校生だった17歳の時、彼女はギャンブル依存の父親が嫌で、当時付き合っていた8歳年上の恋人の家に転がり込む。父親は激怒してさなを勘当。高校も中退することが決まった。

同棲開始から1年後、さなは人工妊娠中絶を機に彼氏との仲が悪くなり、浮気の発覚も重なって家を出た。彼女は実家に帰れなかったことから、東京で暮らす中学時代の先輩を頼って、池袋のキャバクラ店の寮に入り、ホステスとして働きだす。間もなく、そこでの人間関係がうまくいかずに心を病み、摂食障害になった。寮を追い出されため、求人サイトで見つけた寮付きのデリバリーヘルスへ移る。

「もっと指名をとれ」

デリバリーヘルスでは思うように客がつかなかった。店長からは連日のように「もっと指名をとれ」とプレッシャーをかけられた。ノルマを達成できなければ、寮から出ていけとまで言われた。そのせいでさなは心の病が悪化し、リストカットまでするようになった。

悪いことは重なるもので、23歳の時に客の子を妊娠する。さなは店を解雇され、自腹で人工妊娠中絶手術を受けた。しばらく漫画喫茶で暮らしていたが、東京での生活に疲れ果てていたこともあり、出身地に近い石川県の風俗店で働くことにした。

石川県の風俗店では、「新人」として売り出されたこともあって、そこそこ客がついた。だが、客層は東京よりずっと悪かったし、「新人」でなくなった途端に指名がぴたりと止まった。このままでは再び体調を崩してしまう。そう悩んでいたところ、同じ店に地方の風俗店を転々として働いている子がいることを知る。

「数ヵ月おきに店を変えた方がしがらみがないし、新人でいられるから稼げるよ」

そう教えられ、さなは3、4ヵ月おきに北陸、東北、北海道の風俗店を回って生きていくようになった。

・こはく(37歳)

静岡で育ったこはくは、地方の国立大学の教育学部を卒業した秀才だった。

東京に祖父母が暮らしており、昔から憧れていたことから、都内の小学校の教員として働くようになる。だが、4年目にうつ病を発症して退職。静岡の実家では親が難病治療をしていたこともあり、東京に残って治療に励んだ。

2年ほど療養した後に、マッチングアプリで知り合った男性と結婚。翌年には帝王切開で第一子、2年後には第二子を出産した。だが、ほどなくしてうつ病が再発。夫ともぶつかり、家出同然で家を飛び出してしまう。夫が子供2人を育てることになった。

こはくは都内のビジネスホテルを寝場所にしたが、貯金はみるみるうちに減っていく。懸命に仕事を探しても、ホテル住まいであることと年齢が邪魔になって採用されない。やっと見つかっても、週5日の交通誘導やパチンコ店の仕事など、うつ病では1週間とつづけることの難しいものばかりだった。

しかたなく、彼女が応募したのが風俗の仕事だった。もともと酒が飲めないので水商売という選択肢はなかった。人妻系の風俗店だったが、想像以上に稼ぐことが難しかった。客は日に1人つくかどうかで、一日の手取りが1万円を超すことはほとんどなかった。店長に相談したところ、身体の傷が理由だろうと言われた。学生時代に腸の病気でお腹を切った傷と、帝王切開の傷があったのだ。また、皮膚むしり症といって指の皮をむく癖があった。

どうやって生きていけばいいのだろう。そんなことを考えて鬱々としていた時、風俗サイトでこんな書き込みを見つけた。

〈田舎の風俗店は慢性的に人手不足だから、多少見た目が悪くてもサービス次第で稼げるらしい。それにどこも寮を用意してくれているので即日行って働けるみたい〉

ネットで調べて、地方の風俗店に問い合わせたところ、歓迎された。寮もあるし、最低保証も用意するので入店してほしい、と。

こはくはビジネスホテル暮らしを止め、すぐに地方の風俗店に入店した。客の数はさほど変わらなかったものの、寮費が安かった上に最低保証をもらえたので、東京よりは生活が安定した。また、同僚の風俗嬢もほとんどが自分より年上だったため精神的にも楽だった。

ただ、地方では客の数が少ないため、同じ地域の別の店に移ったところで「新人」を名乗ることが難しい。そのため、いろんな地域を転々とした方がよいと考え、そのような生活をすることにした。

このように、出稼ぎ風俗嬢には、もともと都会で働いていた者が少なくない。いわば都会での競争に敗れたり、疲れ果てたりした人たちが、風俗という仕事をつづけるために地方へ流れていくのだ。

彼女たちの抱えている事情は千差万別だが、安定した住居がないという点は共通する。実家に帰れない事情があり、今寝泊まりしているところも不安定な人にとって、風俗店が寮と仕事をセットで用意してくれていることは魅力だ。さらに、「新人」として売り出してもらえて、指名が期待できるとなれば、飛びつかない手はないだろう。そういう理由で、都会から地方へと流れていくのである。

【募集】定住先のない10~40代の方を探しています。車上生活者、ネットカフェ難民、出稼ぎ風俗嬢、寮暮らしの日雇い労働者、ホテル生活者、店舗生活者、支援施設での生活者など、現在でも過去でも、住居を失った経験のある人の実体験、あるいはその支援をされている方々の声を募集しています。匿名などの条件にも応じますので、著者までご連絡下さい。

石井光太(作家)ツイッター @kotaism

メール postmaster@kotaism.com

  • 取材・文石井光太

    77年、東京都生まれ。ノンフィクション作家。日本大学芸術学部卒業。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに取材、執筆活動を行っている。著書に『「鬼畜」の家ーーわが子を殺す親たち』『43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層』『レンタルチャイルド』『近親殺人』『格差と分断の社会地図』などがある。

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