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科学のプロも見抜けず!マジシャンが認める「本物のメンタリスト」

KiLaの世界マジシャン列伝!② バナチェック

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日本のマジック界の第一人者、KiLa氏

皆さん、こんにちは。
マジシャンのKiLaです。皆さんにマジックの世界に触れていただきたく、僕の独断と偏見で厳選したマジシャンを紹介させていただく「マジシャン列伝」。

今回紹介させていただくのはアメリカのメンタリスト、バナチェックです。メンタリズムやメンタリストという言葉は、いまや日本でもおなじみになりましたが、バナチェックを知っている方はほとんどいないと思います。マジシャンでさえ、知らない人のほうが多いのではないのでしょうか。ただ、僕の見立てではバナチェックがメンタリズムの第一人者です。

まずはバナチェックの経歴を紹介します。1960年11月30日イギリス生まれ。1987年TV番組「ザ・サーチ・フォー・フーディーニ」で脱出スタントを披露。これまで国際的なショーの他に、メンタリストとして色々なエンターテイナーのコンサルタントを務めています。

彼を紹介する際に、外すことができないエピソードがあります。それは1980年代のアメリカで起こった「プロジェクトアルファ」の一件です。

1979年、マクドネル・ダグラス航空株式会社会長のジェームズ・マクドネルによって、「超心理学」の発展と研究のためにワシントン大学に「マクドネル超心理学研究所」が設立されました。マクドネルは科学者であり、超常現象に関心があったため、50万ドルもの大金を研究所に寄付しました。研究所所長に就任したのは、当時のワシントン大学物理学科教授ピーター・フィリップス。同研究所は全米から超能力者を募り、本物かどうか検証を始めました。

募集をかけると、全米から300人近くの応募者があり、審査を経て2人が被験者として選出されたました。マイケル・エドワーズ(18)とスティーブ・ショウ(17)という二人の少年でした。

実験が始まると、二人は念力や念視を披露しました。ただスプーンやフォークを曲げるだけではなく、アクリル板に埋められた金属片を曲げたり、ガラスドーム内にある金属製の回転翼を手を触れずに回したりして見せたのです。3年ほど実験と研究は続き、2人は超能力者と結論づけられました。このニュースは全米で報道されました。

しかし――その後、二人は衝撃の告白をすることになります。「我々はマジシャンであるジェームズ・ランディの弟子であり、実験中の超能力も全てトリックを使用していた」と言ったのです。ジェームズ・ランディは”ジ・アメージング・ランディ”の名前で活躍したイリュージョニストです。懐疑論者で疑似科学批判家でもあります。

実は、マクドネル研究所が超能力検証実験を始めるにあたり、ランディはフィリップ所長に「実験途中、被験者に最初の計画を変更させてはならない」「実験の周囲の状況は厳密にコントロールすること」「被験者の気まぐれな要求に応じてはならない」など、11項目におよぶ注意事項を送っていました。トリックを見破るための助言です。「必要であれば無償で実験に立ち会う」とも申し出ていたのですが、それらはすべて無視されたのです。

そこでランディは弟子である少年二人を送り込み、しっかりとした検証環境を用意しないままに超能力研究を進めた場合、トリックと超能力の違いを見抜けないことを証明しようとしたのです。もし実験中に「トリックでは?」と聞かれたら、すぐに認めて「ランディによって送り込まれた」と答えるよう言づけてありました。すべての責任はランディが取ることになっていたというのです。

ところが、マクドネル研究所の研究員たちは最後までトリックを見破ることはできず、2人に「トリックでは?」と質問することもありませんでした。そして、この衝撃の告白から2年が過ぎた1985年、マクドネル研究所は閉鎖されました。

大勢の科学者が見守る中で、マジックを駆使して超能力を認めさせた少年のひとり、スティーブ・ショウこそ、後のバナチェックです。

 

 

あらためて――メンタリズムとは一体何か。皆さんおわかりでしょうか。

多くの方が「メンタリズム=心理学」と思われているんじゃないでしょうか。イコールとまでは言わないまでも、トリックを一切使わず相手を誘導したり心を読んだりできるものをメンタリズムだと思っている方が多いと思いますが、正解ではありません。メンタリズムは「マジック」です。音楽の中にジャズ、ポップス、レゲエなどがあるように、マジックの中にカードマジック、コインマジック、イリュージョン、そしてメンタリズムという分野があるのです。メンタリズムはマジックの一つのカテゴリーです。

香港のメンタリスト、 Zenneth Kok氏

僕の今日におけるマジックの定義は「現実の中に超常現象やファンタジーを含むフィクションを、あらゆる手段で落とし込み楽しませるエンターテインメント」です。「あらゆる手段で」と言ったように、そこには科学、化学、物理学、錯覚、心理学、手技、そしてトリックが含まれます。我々マジシャンは目的を達成するために手段は選びません。ですから、メンタリズムを演じる際に心理学を用いることはありますが、メンタリズム=心理学ではないのです。

人の心を直接読むことは、心理学を極めてもできません(医療科学が進むことで、脳内の電気信号を読み取り、考えていることを可視化することが近い将来できるようになるかもしれませんが)。ただし、心を直接読むことはできなくても、トリックを使わず心理学を応用することで、「思考を読む精度を上げる」ことは可能です。バナチェックは思考を読む精度がとても高いのです。

僕は2006年。ストックホルムで彼のショーを生で観ました。ショーの冒頭、こんなことが行われました。

数百人いる客席の中から男女2人ずつをその場で立たせます。その4人に頭の中でそれぞれ一枚カードを思い浮かべてもらいます。それをバナチェックはステージ上から「今、男性のあなたが思っているカードは絵札ですね?」「女性のあなたは赤いカードですね?」と絞っていき、最終的に4人が選んだカードを当ててしまいました。4人は何も答えていないのにもかかわらず、です。

観客の多くはアマチュアやプロのマジシャンです。それでも会場は驚きに包まれました。

カード当ての方法は、自由にカードを選んでいるようで、マジシャンのバーバルコントロール(口頭技術)で相手に気づかれない範囲で誘導をかけます。彼はステージ上を右に左に歩き回って観客の視線を自分に向けさせ、「選んだカードは絵札ですね?」と当てているように見せながら、実際には質問を重ねています。壇上の4人は質問には答えませんが、バナチェックはステージ上を動き回ることで観客の視線の反応を見極めて、自分の質問に対してのYES・NOを感じ取り、カードを絞っていって当てていたのです。

この文章だけではまったく当て方がわからないと思いますが、人は「筋肉の動きや視線」に考えてることの反応が出るのです。

筋反応を読み取るマッスルリーディングという技術があります。例えば、4つの物品の中から一つを観客に頭の中で選んでもらいます。そして観客に演者の手首を握ってもらいながら、演者は物品にそれぞれ手をかざしていきます。その際、観客は選んだ対象物に集中してもらうのですが、手首を通して微弱な反応を読み取ることで対象を絞り、選ばれた品物を当てて見せるのです。

前述のショーでバナチェックが行ったのは、マッスルリーディングの非接触版です。マッスルリーディングの話をすると、そんなことができるのかと信じられないかもしれませんが、やってみると皆さん、想像以上に反応を感じることができます。もちろん、非接触版のほうが難しいですが、彼の精度はとても高かったのです。

当時、僕は確認のため同じショーを2度観ました。2回とも違う結果だったので、彼が実際に非接触でマッスルリーディングをやっていたことが確認できました。

以前から、機会があれば僕はバナチェックに確認したいことがありました。「サイコキネティックタッチ」という、現在、僕がTV番組などでも披露している演目に関しての質問です。サイコキネティックタッチは、誰にも触れられていないのに、身体の任意の場所を触られたと感じさせる技法で、バナチェックがずいぶん前に、小冊子で解説していました。僕はその解説を読んだのですが、そんな不思議なことが成立するのか、文章だけでは理解できませんでした。だから、バナチェック本人に会う機会があれば是非聞いてみたかったのです。

ショーの後、直接話を聞けるチャンスがありました。僕の拙い英語で質問をぶつけると、彼は快く実際にパフォーマンスを見せながら解説を丁寧にしてくれました。そこで彼の真摯さを感じることができました。文章表現だけでは伝わらないことも、一見すればわかるものです。やはり価値ある情報は足を使って取りにいかなければならないと感じたものです。

サイコキネティックタッチと言っても、やり方はいくつかあります。マジックは表面上同じでも、裏の技術や形式はいくつもあったりします。だから「胴体切りのマジックはどうやるの?」とマジシャンに聞いても、方法は無数にあるので答えようがありません。

余談ですが、バナチェックはそのとき、公には公開されていないサイコキネティックタッチの手法も僕に伝授してくれました。その内容はマジシャンらしく秘密にしておきたいと思います。

メンタリズムの考え方は、野球で三振のリスクを取ってホームランを狙うのに似ています。失敗のリスクを取って、不可能な奇跡を狙うのです。ですから、失敗も起こり得るのですが、成功した場合は僕らマジシャンが見ても不思議な現象となるのです。

このように、メンタリズムはあくまでマジックの一つです。「恋愛やビジネスがうまくいく」と情報商材のように販売しているメンタリストも世界には一定数いるようです。たしかにマジシャンの技術をコミュニケーションに応用することは可能ですが、メンタリズムが直接、ビジネスや恋愛を上手くいかせたり、ポーカーを強くさせたりするわけではありません。皆さんはそういった輩に騙されないようにしていただきたいです。バナチェックがマクドネル研究所に潜入した目的は、こういった輩から皆さんを守りたい気持ちが強かったからです。メンタリズムは是非エンターテインメントとして楽しんでいただき、マジックの深さを知っていただけたら幸いです。

  • KiLa

    75年熊本生まれ。身長190㎝。独学でマジックを習得。各種メディアに出演する一方、演出やマジック商品のプロデュースなども手がける。観客自身がリアルに体感する参加型マジックで、一つ一つの演目が最後に繋がるオープニングからエンディングまで目が離せない伏線回収型マジックショーは、他のマジシャンのショーとは一線を画す。

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