ウクライナ南東部最前線で戦う「外国人混成義勇兵部隊」従軍記 | FRIDAYデジタル

ウクライナ南東部最前線で戦う「外国人混成義勇兵部隊」従軍記

これまでアフガニスタン、イラクの対テロ戦争を取材してきたカメラマンが ロシア軍が侵攻する激戦地へと飛んだ……

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最前線から戻ったばかりのジョージア部隊の古参兵。殺気が湯気のように全身から漂っていた

ポーランドのワルシャワからバスで国境を越え、ウクライナの首都キーウへ17時間かけて辿(たど)り着いた。私はそのまま市内にある外国人義勇兵部隊の一つ、ジョージア部隊の本拠地へと向かった。

’08年にジョージアはウクライナと同じくロシアの侵攻を受けたことから、’14年にジョージア部隊としてロシアと戦うために結成。’16年にはウクライナ軍に正規に組み込まれた。総員は約1000名。兵士の大半はジョージア人で構成されており、米国、英国、フランスからの外国人義勇兵も加わり、3名の日本人もいるという。

基地で私を出迎えてくれたのはガッシリとした体躯に穏やかな顔をしたマムカ・マムラシュウィリ司令官だった。ロシア軍に甚大な被害を与えている彼の首には1億ドルの懸賞金がかけられているという。この日はキーウ市民で編制される領土防衛隊への軍事訓練を行うというので取材させてもらうことになった。

軍服姿の老若男女に対して元アメリカ軍海兵隊員の教官は歩兵の基本動作を教え、ジョージア空手連盟の会長だったという教官はナイフや素手での近接格闘術を教える。恐れていたキーウ市街戦の脅威はなくなったものの、市民たちは有事に備えて訓練に汗を流している。なかには恋人に誘われて訓練にデート感覚で参加したという20代前半の女性の姿もあった。

私の一番の目的は、ウクライナ南東部における戦闘の最前線を取材することだった。ジョージア部隊もウクライナ軍と共に戦っているということで、最前線の従軍取材ができないものかと思い、マムカ司令官にお願いするが、

「ジョージア部隊の前線部隊は世界のどのメディアにも取材をさせたことがなく、従軍はできない」

と笑顔で言われ落胆した。「そこを何とか」と懇願するも「許可できない」の一点張りだった。キーウにいても埒(らち)が明かないと思った私は、マムカ司令官から紹介されたコーディネーターと共に東部方面へと向かった。2日後に東部の工業都市ドニプロに着いた我々はウクライナ軍関係者に電話をかけて取材申請をしたが、従軍の許可を出してもらえず途方に暮れていた。

そんな時、コーディネーターのスマートフォンにマムカ司令官から連絡が入った。「ドニプロにいるので市内のショッピングモールに近い高架下に来てくれ」と指示があった。急いで指定された場所に行くと、3人の部下と共にマムカ司令官が待っていた。

「ジョージア部隊の最前線の従軍を許可する」

私はマムカ司令官の手を強く握り、感謝の意を伝えた。

ドニプロから100㎞ほど東にポブロスケという町がある。小さな町だがここにはウクライナ軍の兵站(へいたん)基地や軍病院があり、ジョージア部隊の前線基地もここにある。町の中心地にはカフェやピザ屋があり、客の大半は兵士だ。コーヒーを飲み、スマホで家族や友人と連絡を取り合う姿がある。戦場で疲弊した兵士たちにとって貴重なリフレッシュの場になっている。ジョージア部隊はこの町を拠点にさらに東の最前線へ出撃する。

ジョージア部隊の副司令官でもあり、チームリーダーのレヴァンが指揮するのが特殊作戦を専門にするチームだ。かつてジョージア軍の「スペツナズ(特殊任務部隊)」だったという兵士たちで構成されている。欧米の特殊部隊と同等の武器、装備で武装し、NATOからウクライナ軍経由で提供された対戦車ミサイル「ジャベリン」や「NLAW」、対空ミサイルの「スティンガー」を扱えることが、このチームの練度の高さを証明している。キーウ近郊の空港の奪還作戦にも投入されたという戦闘の経験値が高い精鋭チームだ。

ウクライナではスナイパーの活躍も報じられているが、世界のトップスナイパーが愛用する「バレットM82」や、アキュラシー・インターナショナルの「L96A3」で1㎞を超える距離から狙撃するスナイパーもいる。小柄だがレスリング選手だったというレヴァンは部下にとっては頼れるリーダーであるが、存在が恐怖そのものだ。命令を守らなかったり、ミスをした者はレヴァンから容赦ない鉄拳制裁を受けることになる。

私はイギリス製装甲車の後部座席に座り、ポブロスケの町から南東に30㎞ほどの地点にある最前線へと向かう。レヴァンが運転する装甲車は時速80㎞を超えるスピードでぬかるんだ悪路を疾走する。装甲車がこんなスピードを出せるとは思わなかった。頭上のハッチを開けて身を乗り出すと、平坦で広大な耕作地帯が地平線まで続いている。牧歌的な風景に、ここで戦争が起きていることが信じられない。しかし最前線に近づくにつれて破壊された家屋やウクライナ軍の戦車が現れて否応無しに緊張感が高まる。

至近距離に砲弾が落ちた

木々の茂みの中に突っ込むように装甲車を停めると、ここからは徒歩での移動になる。装甲車から出た瞬間から周囲に砲撃音が鳴り響く。兵士たちは携帯式ミサイルを背中に担(かつ)ぐと周囲に展開する。

NLAWは対戦車、スティンガーは対空と役割が分担されている。ウクライナ軍、ロシア軍双方が断続的に砲撃を行う中、我々はロシア軍の陣地がある方向に徒歩で向かう。10分ほど歩くと私の前を歩く兵士が上空を指差して、

「ロシア軍のドローンだ」

と言い、我々は身を隠すために藪の中へと逃げ込んだ。

「ロシア軍にとって偵察チームは脅威となっていることから、彼らは我々を必死で探している」

と兵士は教えてくれた。上空からはドローンの「ブゥーン」という不気味なプロペラ音が聞こえる。身を屈(かが)めながら進んでいると至近距離に3発の砲弾が落ちた。「伏せろ!」と後ろにいた兵士に背中を引っ張られてその場に倒れこんだ。ロシア軍に我々の存在がバレたのだろうか? 落ち着きを取り戻し、さらに茂みを掻(か)き分けると見晴らしの良い場所に出た。ここから2㎞の距離にロシア軍の陣地がある。

部隊は小型ドローンを取り出すとロシア軍の陣地へと飛ばした。ロシア軍からの砲弾が20発ほど着弾するが兵士たちはパニックを起こすことなくタブレットに映し出される敵の陣地を凝視している。今回の作戦はドローンでロシア軍陣地を写真撮影して地図を作成するのが目的だ。

「彼らは恐怖に怯(おび)え、補給も乏しく飢えているに違いない。ドローンの写真を基に正確な砲撃をすれば戦意を喪失するだろう」

レヴァンが説明してくれた。帰投したドローンを回収し、この日の任務は終わった。急ぎ足で装甲車へと引き上げる道中、ウクライナ軍の陣地からロケット弾が発射された。ロケットの吐き出す白煙がほぼ垂直に上っているのはロシア軍の陣地が近いということだ。

ドローンで索敵や攻撃をし、広大な土地では、双方が砲弾や携帯式ミサイルを撃ち合う。また、大統領、軍、市民によるSNSが戦況を変えてしまうという戦争は過去に私が経験したアフガニスタンやイラクの対テロ戦争とはまったく違う戦いだった。

最近、ジョージア部隊は東部ルガンスク州のセベロドネツクの攻防戦に投入されたという。同州のガイダイ知事はロシア軍が支配する地域の5割を奪還したと発表した。ロシアによるウクライナ侵攻から100日が過ぎたが、混迷化する戦争が終結する兆(きざ)しはまったく見えない。

偵察ドローンを警戒しつつロシア軍陣地近くへ進む。ロシア軍の機甲部隊にとって対戦車ミサイルは脅威だ
小型ドローンで敵軍陣地の撮影を行う偵察チーム。現代の戦争ではドローンは作戦を行う上で欠かせないものになっている
ジョージア部隊のスナイパー。「ギリースーツ(茂みに擬態できる迷彩服の一種)」を身につけ、匍匐(ほふく)前進で接近して狙撃する
対戦車ミサイルで乗っていた戦車を破壊され、病院に運ばれたウクライナ軍の戦車兵。「すぐに前線に復帰したい」と士気が高い

『FRIDAY』2022年6月24日・7月1日号より

  • 撮影・文横田 徹(NSBT Japan)

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