羽生結弦の「固定給」は年間240万円?あまりに切ない懐事情 | FRIDAYデジタル

羽生結弦の「固定給」は年間240万円?あまりに切ない懐事情

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5月27日、千葉・幕張にある会場で「ファンタジー・オン・アイス」で演技する羽生結弦(写真:共同通信)

冬季北京五輪から3ヵ月。国民的フィギュアスケーター、羽生結弦(27、ANA)が5月27日、コロナ禍の中で3年ぶりに千葉・幕張で開催された「ファンタジー・オン・アイス(以下FaOI)」で再始動した。海外トップスケーターがゲストで来日、ミュージシャンとの生共演もあるアイスショーだ。幕張を皮切りに名古屋(6月3~5日)、神戸(6月17~19日)と回り、今週末の6月24~26日の静岡で締めくくる。4都市12公演を行う全国ツアーで、羽生が出演することが決まった途端、チケットは激しい争奪戦になった。来るべき新シーズンに向けて現役続行か、あるいはプロ宣言か、引退するのか、注目される今後の去就を一切明言していない羽生のおカネ事情に迫った。

「僕も全力で頑張りますので、めちゃくちゃ、楽しみにしてください」

5月27日の公演初日はSMAP初のミリオンセラー「夜空ノムコウ」を作詞した人気シンガー、スガシカオと共演。「KAT-TUN」のデビュー曲「Real Face」でスガシカオの生演奏の中、軽々と4回転トウループとトリプリアクセル(3回転半ジャンプ)を完璧に着氷し、ファンの期待に応えた。

フィギュアスケーターは五輪で一つの区切りを迎える選手が多い。2月の北京五輪で94年ぶりに期待された五輪3連覇を逃し、4位に終わった直後の羽生も去就が注目された。「フィールドは問わない、と自分の中で思っている」とアマチュアとしての現役続行か、プロ転向なのか、どちらとも受け取れる発言が、注目度に拍車をかけた。

羽生は世界トップスケーターだが、プロではない。アマチュアだからこそこれまで3度の五輪に出場し、あらゆる伝説が生まれてきた。

プロ宣言をしていないフィギュアスケーターの収入源は、主に以下のようになる。

① 協会、連盟などからの特別強化指定選手としての助成金
② 専属契約料(羽生の場合はANA)
③ 大会賞金(五輪や世界選手権やグランプリ(GP)シリーズ)
④ TVやCMの出演料
⑤ 写真集や出版印税
⑥ アイスショーのギャランティー

北京五輪が閉幕した2か月後の4月、日本スケート連盟は羽生を2022年度も特別強化指定選手として承認した。

「引退の意思を伝えてきた選手以外を指定した」(日本連盟・竹内洋輔強化部長)。

ただ、去就を明かしていない選手を特別強化指定選手に選ぶことは極めて異例で、羽生は日本スケート連盟の推薦を受け、日本スポーツ振興基金から年間240万円の助成金を受け取る。またコロナ禍になる前、海外に拠点を置いていた当時は、助成金とは別に、サッカーくじ(toto)から「選手・指導者研さん活動助成」を受けていた。これは海外で活動するアスリートや指導者に対して支払われ、半年間で約300万円支払われていたが、羽生の場合、コロナ禍で国内に拠点を戻したこともあり、2020年度以降、この300万円は受け取っていない。したがって現在の羽生の固定費は240万なのだ(①)。

また羽生はANAと2013年から専属契約を結んできたが、その契約料(②)はそのシーズンの活躍や、社会情勢によって金額に大きな幅がある契約と言われる。あるスポーツ紙記者はこう分析する。

「東京五輪前、金メダルを期待された競泳の瀬戸大也選手に女性問題が発覚してANAとの契約が解除になったとき、もらっていた報酬が年間推定1億円だったことが明るみに出ました。羽生選手の場合、いい時でもその半額にも満たないそうですが、それでも羽生本人は『ありがたい』と言って契約していると聞きました。

今はコロナ禍でANAも企業として大打撃を受けていますので、ピーク時の金額はさすがに払えないのでは。これまで契約していた他の選手やチームとの契約が更新されない状況なので、現在の羽生選手との契約は数千万円だと思います」

五輪3連覇がかかった2月の北京五輪で演技前、スケート靴のエッジカバーを額に当てる羽生。感謝の意味を込めたルーティーンだ(写真:日本雑誌協会)

さらに大会に出て優勝した場合の賞金を調べると、2月の北京五輪で金メダルをとっていれば報奨金は500万円だった。さらに五輪後に開催された国際スケート連盟(ISU)主催最大の大会、世界選手権が864万円(6万4000ドル)で、規定では日本スケート連盟から追加で100万円の報奨金が出る。さらに四大陸選手権が283万5000円(2万1000ドル)、GPファイナルが337万5000円(2万5000ドル)、GPシリーズが243万円(1万8000ドル)となっている。すべての大会で優勝したと仮定しても、2328万円が手に入る計算だ(1ドル135円で算出)。

しかし、フィギュアスケートはとにかく諸経費がかかる。トップクラスのスケーターで靴代は年間30万から50万円と言われる。世界的に著名な専属コーチをつければ通常1年契約で年間1000万円からの交渉になる。これに衣装代、リンク使用料などを加えると、少なく見積もっても年間2000万円近くかけないと日本トップクラスのフィギュアスケーターとしてシーズンを戦っていけない。

年間経費2000万円を賄おうと思ったら、固定費240万円ではあまりに足りない。賞金がある4大大会(世界選手権、GPシリーズ、GPファイナル、四大陸選手権)で出場できる最大5試合で全勝したとしても、経費を差し引くと浮くお金は固定費をあわせた568万円ほどしか浮かない計算だ。すべての大会で優勝するのは至難の業であり、羽生クラスの選手であっても『賞金だけでは〝赤字〟になる』のが現実だ。日本を代表するアスリートであることを考えれば、あまりにも切ない。

したがってANAからの専属契約料(②)の増額や、CM、スポンサー料、出版印税などに頼りたいところだが、いずれも、そのシーズンの活躍や、社会情勢によって金額に大きな幅がある。北京五輪前には自叙伝の中国語版も現地で販売され、山積みになっていたが、印税がどれぐらい羽生の収入になるかは未知数だ。

ちなみに羽生と同い年でメジャーで活躍する大谷翔平の今季年俸は550万ドル(約7.1億円)。あの大谷が野球をしていく上で諸経費を負担してさしひくと赤字になるリスクが生まれることはありえないだろう。いかに羽生が厳しい財政状況の中で戦ってきているかがわかる。

北京五輪期間中に現地で見られた「羽生結弦王者のメソッド」(文春文庫)の中国語簡体字版、中信出版社の新書「羽生結弦王者之路」が中国国内で発売されていた(写真:新華社/共同)

それでも、実は羽生はこれまで数多くの寄付活動を継続して行っている。競技を始めた「アイスリンク仙台」(仙台市)に10年以上寄付を続けて、その総額は3000万円を超えた。五輪で得た報奨金も「スケート選手の育成に使って欲しい」と全て寄付。2014年平昌五輪金メダル獲得後、地元仙台に10万人を集めた凱旋パレード行ったときも、8万枚を売った記念Tシャツなどの余剰金2200万円を寄付している。

おカネだけのことを考えれば、プロ化することが改善への近道のように見えるが、本音では「できればそれをしてもらいたくない」と考えているのは日本スケート連盟だろう。それは同連盟にとって、羽生がいるだけでお金が入る仕組みが存在するからだ。

連盟規約の「賞金等の取扱規程」がその証明である。選手が大会賞金や出演料、契約金、許諾料などで得た金銭に対して実に細かい規程がある。国際スケート連盟など公式大会で得た賞金を筆頭にスケート得た収入の10%を日本連盟へ管理料の名目で「控除」される。CMやテレビ出演なども連盟の許可がいる上に、マネジメント会社と契約する場合も連盟に事前に相談することが条件になっている。浅田真央がプロ宣言する2017年ごろまでは、羽生&浅田の「両巨頭」によって連盟にもお金が入ってきていたが、もし羽生からアマチュアの肩書が外れた時点で、連盟は大きな収入源を失うことは明らかなのだ。

去就を決めかねている羽生が今回、FaOIに出演を決めたのは、1公演200万円と言われるギャランティーとは決して無縁ではないだろう。日本で行われるアイスショーは欧米よりも2倍近く高い、と言われる。だからこそ世界トップスケーターがFaOIにやってきた。今回12公演を予定している羽生には机上の計算で2400万円のギャラが入るというわけだ。それでもやっと、フィギュアスケートを続ける年間経費をなんとか捻出しただけと言えるのだが……。

アマチュアとしての現役続行か、プロ宣言か。北京五輪後に羽生はこう明かしている。

「どっちにしろ、皆さんに見ていただいた時に〝やっぱり羽生結弦のスケートが好きだな〟と思ってもらえる演技を続けていきたいと思う」

自らの思い描くスケートを極め、お客さんに喜んでいただきたい――立場が変わったとしても、唯一無二の羽生スタイルを貫いていくことだけは間違いない。

ソチ五輪後に当時の安倍晋三総理と記念写真。浅田真央(右)はその後、プロスケーターの道に進んだ(写真:共同通信)
北京五輪の練習にて。足の痛みだったのか、内なる重圧との戦いか。羽生の言葉からは、五輪に対して受けていた大きな重圧をひしひしと感じさせた(日本雑誌協会)
転んでも、転んでも立ち上がってきた(日本雑誌協会)
レース後、氷を顔につける羽生。感謝の気持ちがあるのだという(日本雑誌協会)
どんな未来を選ぶのだろうか(写真:共同通信)

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