独特な世界を放つコンビ・キュウ「M-1の戦い方が見えてきた」 | FRIDAYデジタル

独特な世界を放つコンビ・キュウ「M-1の戦い方が見えてきた」

2022 M-1、KOCへの道:「キュウ」【前編】

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飄々としたキャラクターで独特な世界観を放つ漫才コンビ・キュウの清水誠とぴろ。彼らは2年連続で『M-1グランプリ』準決勝に姿を現し、昨年の『マイナビLaughter Night』グランドチャンピオン大会、昨年と今年の『ツギクル芸人グランプリ』で決勝に進出するなど、着実に存在感を示している。

そんな二人が目指している漫才とはどんなものか。昨年のM-1敗者復活戦で「ルパン」を選んだ理由、尊敬する漫才コンビ・笑い飯から受け取ったもの、M-1で勝つために必要なことなど、今まさにコンビが抱えているリアルな心境を聞いた。

着実に存在感を示している「キュウ」のぴろ(写真左)と清水誠(同右)(撮影:スギゾー)

M-1の戦い方が見えてきた 

――2年連続でM-1グランプリ準決勝進出。これまでの何が結果に結びついていると思いますか?

ぴろ:やってることはそんな変わらないんですけど、芸人とかテレビ局の方とか、いろんな人たちが認知してくれて名前を出して評価してくれるようになったのが大きいと思います。その影響でいろんな方と出会ったりとかして、気付かない部分で成長してるところもあるとは思うんですけど。 

清水:「継続は力なり」じゃないですけど、本当に続けていたらって感じですね。僕の勝手なイメージでは、年を追うごとにちょっとずつ軌道修正して着実に前に進んできてるというか。M-1に関しての戦い方とか、「これだけやってこなきゃわかんなかったな」ってことは確実にありますね、見えてきたというか。

――具体的にはどんなところが見えてきたんでしょうか?

ぴろ:単純にすごい面白いコンビであれば必ず巡ってくる順番があると思ってて。少し前にM-1の上の層にいた人たちが卒業したりドロップアウトしたりして、ロケット鉛筆式に僕らが先頭の芯の部分にいけてる部分もあるのかなっていう。 

そのタイミングでチャンスを逃さないっていうのが大事で、変に焦ってフォームを崩したりしないようにしようとは思ってます。やっぱ文化とか流行りって生ものなので。ある瞬間から「もう飽きた」って見切られることもあるし。だからこそ、僕らも今年はもうちょっといかないとなって。 

いつこの集団から落とされるかわからないので、そのプレッシャーというか、義務感みたいなのはありますね。毎年、“M-1に選ばせる”ようなネタを持っていくんですけど、選ばれたからには恥ずかしくない戦士でいないと。今までは、試験を受けてるだけの受験生ですから。 

M-1敗者復活戦で「ルパン」を選んだ理由 

――M-1敗者復活戦のネタ(「ルパン」)、すごく面白かったです。第1回目の単独ライブ『キュウの新ことわざ辞典』で披露しているネタですが、どういう基準で選ばれたんですか?

ぴろ:「刺さる人に刺さればいいな」みたいな感じですね。そういう種類の中でもウケるネタではあるんですけど、やってることは変だし、「こんな漫才見たことないだろ」ってちょっと尖ったネタです。 

清水:敗者復活で一石投じるためのネタというか。見取り図とかニューヨークとかハライチさんとかいっぱいいる中で、我々がどうインパクトを残すかってところでの戦い方でもあったのかなと思います。 

ぴろ:出順が決まる前にスタッフさんと打ち合わせがあるので、最初からあのネタをやることは決まってたんです。敗者復活って難しくて、全国の視聴者の方たちが票を入れるとなると、やっぱり人気票・知名度票になっちゃう。そこがどうしても僕らは弱いんですよ。 

その票を取りにいくネタをやったら、僕らはどっちにもいかないんです。勝てもしないし、印象にも残らない。どっちか取らなきゃいけないとなると、やっぱり歪なものでインパクトを残す戦い方になる。その中でも、勝負から降りてないネタというか。変なネタではありますけど、「ルパン」は真剣に戦うための選択でした。

――そもそもお芝居に近い世界観の中で見せる漫才コンビ、という印象です。ただ、賞レースや寄席といった舞台では、“観客に話し掛けるように見せる”のが漫才の一つのセオリーでもありますよね?

清水:僕らの会話ってどう考えても非日常じゃないですか。言ってしまえば、夢というか、画面を見てるような感覚。透明の壁がある感覚で見せたほうがいい気はしますね。 

ぴろ:“その場で会話してるようにリアルに見せる漫才”っていう王道の考えがあって、みんながそっちをやるなら僕らは違ってもいいだろうと思ってます。役割とか、棲み分けみたいなものですよね。 

結局、ネタなんて嘘なので。そもそも嘘なら、もっとちゃんと「これは嘘です」っていう世界観でやってもいい。そっちのほうが潔いんじゃないかっていう。嘘なのに半分本当っぽくやるって、個人的にちょっと恥ずかしいんですよ。嘘ならまるっきり嘘。お客さんがいない体でもいいですし。 

ネタ中と平場(ネタ以外のトークなど)は、違っていいと思ってますから。だから、僕らってコント師みたいな考えではあるかもしれないですね。 

笑い飯のスピリットに惹かれた 

――お二人の漫才はスローテンポで言葉を被せていくのも持ち味ですが、M-1で戦うにあたって不利だと感じることはありますか?

ぴろ:賞レースって3、4分だから、尺の問題はありますよね。ただ、その尺でまとまるもの、ウケるものであれば別にボケがいくら少なくてもあんまり不利とは思わないです。たぶん賞レースで落ちる理由って「ボケが少ないからダメ」ってことではないんですよ。 

個性がなかったり、単純に「物足りないな」って思われたりってことじゃないですかね。ボケが三つでも、めちゃめちゃ満足させられるネタはあるから、単純にネタが強いか弱いかだと思います。 

清水:僕らには今やってるような形が合ってると思うんですよ。賞レースのために形を崩して、スピードを上げるのは絶対違うと思いますし。 

ぴろ:しかも、ほかの人たちと違うから選んでもらってるっていう部分もある。「あの人たちみたいにこうしないと」って思ったら、どんどん後退していく気はします。 

清水:あんまりこういうスタイルで戦ってる人っていないから、競争相手が少なくて逆に有利に働いてるところもあると思うんですよ。王道とか正統派で勝負しようと思ったらいっぱいいるじゃないですか。

ぴろ:僕らの適性的に、それをやっても勝てないというかね。インディアンスさんみたいに高速でボケを繰り出していく漫才の人たちには勝てないし。 

清水:インディアンスさんがいる限り、その枠はもう難しいだろうね。 

ぴろ:勝てないフィールドで時間掛けてネタ作るのってマジで損だと思うんですよ(苦笑)。僕ららしく、「これはほかの人たちにはできないぞ」っていうネタをやることが大事かなと思います。 

僕は笑い飯さんが好きで尊敬してますけど、一番惹かれたのは「あの人たちにしかできないネタ」をやってるところ。天才と天才が漫才の新しい形を発明したっていう、そのスピリットが好きなんですよ。そこの部分は、僕らの漫才にも引き継がれていると思います。 

M-1に必要なのはドッと笑えるネタ 

――コンビの持ち味を生かしつつ、M-1決勝にいくためには何が必要だと思いますか?

ぴろ:どこを磨くというよりは、僕らのまま変わらずに、変えずに“ただもっとウケる”っていう感じですかね。 

清水:今年は本当にそうだなと思いますね。とにかくウケるものをやる、というか。 

ぴろ:今の形のまま、そこを強化するっていう。あとはM-1グランプリって生き物がいるとしたら、もうそいつの視界には入ってると思うんです。何年も結果が出ない時期があって、その時は「まだ視界に入ってない」「相手にしてくれてない」って感じがあったんですけど、今はど真ん中周辺に捉えてくれてる。 

その辺まで攻め寄ってはいるから、向こうからすれば「そのままで、あとは一番上までいけるウケをとってくれ。そしたら、いかせるよ」って感じじゃないかと思うんです。 

――「ウケる」というのは、具体的に言うとわかりやすさですか? 

清水:笑いどころがわかりやすいものですね。クスッと笑えるというよりは、ドッと笑えるもの。とくに去年の単独ライブは、そういうネタを多めに作ってM-1用に準備してました。そのほうが審査する人たちからしても上げやすいとも思うし。 

ぴろ:基本的には、うちの相方が生きるネタですよね。数年前だと、M-1用とかってことはあんまり気にせず、「こんなネタあったら面白いな」っていうのをいっぱい作って単独ライブでおろしてたんです。二人とも同じテンションだったり、同じ思想の会話のネタだったりとか。 

ただ、この2年ぐらいは“はっきりとした立ち位置のネタ”っていうのを多めに作ってます。そのほうが見てるほうもわかりやすいだろうし。そもそも変わったネタが多いんですけど、「少しでも多くの人が面白いと思えるような作りにしよう」という意識は強くなりましたね。 

清水:わかりやすくすればいいところと、とんでもないこと言ってるところと。 

ぴろ:その“とんでもないボケ”をウケさせることができたら勝ちなんですよね。そこは常に考えていて、なるべく序盤からいいウケをとれるような、変で分厚いネタができればなと思ってます。 

あと、出ていってすぐの緊張感が絶対にほしいんですよ。ツカミをやらないのは、そういう理由もあるかな。ホラー映画でも、「いるのか、いるのか? 誰もいない。真っ暗だ……」ってタイミングで突然ゾンビが出てくるから怖いみたいな。そういうハラハラが、ツカミをやると「1回、みんな友だち」みたいになっちゃうから、最初は突き放したところからいきたい。そのほうがワクワクするんです。 

結局、M-1は他人って関係ない 

――M-1で勝ち上がるにあたって、ライバル視している芸人さんはいますか?

ぴろ:毎年M-1予選の時期になると、周りの芸人と素直にお話ができなくなったりもするんですよ。核心の部分ではみんなそれぞれ気を遣い合うというか。みんなどっかでライバル意識があるから、仲良くしてるように見えてもぎこちなくなる。 

だからM-1グランプリが終わって、1~3月のライブはみんなピースフルなんですよね(笑)。まだ今年のM-1まで時間があるから、ぜんぜんピリついてない。近づいてくると、みんな“かかって”ますから。目の奥がどっか戦士になってる。普通に話せないこともあったりしますね。

――準決勝に上がってこられると嫌だなと感じる芸人さんは?

ぴろ:本当に言いたくないぐらいマジなのはいますけどね(笑)。まぁ周りにいる仲のいい芸人はみんなライバルですよ、面白い芸人が多いので。真空ジェシカもそうですし、カナメストーンとかダイヤモンドとか、フリーの時(2016年10月~2017年10月頃まで)から一緒にライブに出てるようなコンビですから。 

清水:一緒に決勝いけるもんならいきたいしな。 

ぴろ:そういう気持ちもあるしね。でも結局、M-1は他人って関係ないんですよ。「あいつに負けたくない」って内心ライバルに感じてる人はいると思うんですけど、実質は自分たちが自分たちらしく満足のいくパフォーマンスができるかどうかだけなので。 

清水:ライバルを挙げるのであれば本当にみんなになっちゃいますからね。ぴろの言う通り、自分たちのやれることをやるだけだと思います。 

ぴろ:他人がどれだけウケてようが、当確であろうが、それと自分たちが受かる、落ちるは関係ない。それに気付くまでにも、ちょっと時間が掛かったなと思います。「枠争いがある」とか「あの人たちが受かってるから、僕らは落ちてるかな」とか、そんなことを考える必要はないんだって今はすごく感じますね。

【後編】「『必要ないものはすべて省く』お笑いコンビ・キュウが語る美学」へ>

  • 取材。文鈴木旭

    フリーランスの編集/ライター。元バンドマン、放送作家くずれ。エンタメ全般が好き。特にお笑い芸人をリスペクトしている。2021年4月に『志村けん論』(朝日新聞出版)を出版。個人サイト「不滅のライティング・ブルース」更新中。http://s-akira.jp/

  • 撮影スギゾー

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