40代後半の半数は「アルツハイマー最初期の可能性」の衝撃データ | FRIDAYデジタル

40代後半の半数は「アルツハイマー最初期の可能性」の衝撃データ

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自覚がないうちに脳の破壊が進んでいる

認知症の原因の約70%を占めるアルツハイマー病。高齢者の病気と思いがちだが、

「アルツハイマー病は発症までに20~30年もの時間をかけて、ゆっくり進行します。40代後半の49%が、アルツハイマー病の最初期の“脳神経破壊”が始まっていることが、わかっています」

こう言うのは、学習院大学理学部生命科学科教授の高島明彦氏。

2025年には高齢者の5人に1人が認知症になると予測されている(写真:アフロ)
2025年には高齢者の5人に1人が認知症になると予測されている(写真:アフロ)

高島氏によると、アルツハイマー病患者の脳には3つの特徴が表れるのだとか。

「一つ目は、脳の表面に“老人斑”と呼ばれるシミのような塊ができること。また、脳にたまるタンパク質の違いで病気が変わってくるのですが、アルツハイマー病ではβアミロイドやタウタンパクがたまります。二つ目は、このタウタンパクが過剰にリン酸化されて、神経細胞の内部に糸くずのようなものが蓄積する“神経原線維変化”が起こること。三つ目は脳の萎縮です。

神経原線維変化が起きると、神経細胞や、神経と神経をつなぐシナプスが死んでしまいます。神経細胞が死ぬことで、その部分の脳細胞が破壊され、脳も萎縮してしまうのです」(高島明彦氏 以下同)

神経原線維変化が最初に起こるのは、脳の側頭葉の内側にある、海馬とともに学習記憶や空間認識を司る“嗅内野”という部位。神経原線維変化の度合いは6段階のステージで表され、ステージⅠやⅡの段階であれば予防することができるが、Ⅲ以上になると、もはや予防は困難になるという。

「外から入ってきた情報を最初に受け取るのが嗅内野。その情報は海馬に送られて処理され、再び嗅内野を介して大脳皮質に送られます。情報処理に関して、とても大事な役割をする部位なのです」

記憶力が衰えた、名称をすぐに思い出せないということがあったら、すでに嗅内野の細胞が破壊されつつあるかもしれないということなのだ。

自覚症状はないけれど、20代前半でも8%の人が嗅内野から海馬にかけて脳神経破壊(ステージⅠ/Ⅱ)が見られ、40代後半では49%まで増加。50代からは予防が難しいステージⅢ(破壊が周辺に拡大)に進む人も現れ、MCI(軽度認知障害)発症が現れる
自覚症状はないけれど、20代前半でも8%の人が嗅内野から海馬にかけて脳神経破壊(ステージⅠ/Ⅱ)が見られ、40代後半では49%まで増加。50代からは予防が難しいステージⅢ(破壊が周辺に拡大)に進む人も現れ、MCI(軽度認知障害)発症が現れる
神経破壊が起きた部分が元に戻ることはないけれど、最初期であれば予防することで進行を抑えることができる。ステージⅢ以上になると予防することは、ほとんど不可能
神経破壊が起きた部分が元に戻ることはないけれど、最初期であれば予防することで進行を抑えることができる。ステージⅢ以上になると予防することは、ほとんど不可能

「心臓病の予防が、認知症の予防」

「老人斑も神経原線維変化も、脳内にできたタンパク質のゴミのようなもの。長く生きていれば、誰の脳にもゴミはたまってきます」 

けれど、アルツハイマー病になる人もいれば、ならない人もいる。これはなぜ?

「遺伝もありますが、生活習慣が大きく関わっていると考えられています。というのは、血流をよくすることが、とても大事だからです。血流によって脳に十分栄養がいきわたっていれば、代謝もスムーズに行われ、まだ沈着していない異常タンパクは体外に排出することができます。

破壊された脳細胞が元に戻ることはありませんが、残った脳細胞ががんばってシナプスを増やしたり、破壊された脳細胞の働きを補うこともできるようになります」

実際、心臓病患者が多かったイギリスでは、心臓病を予防するために、タバコ1箱を1300円程度にして喫煙者を減らしたり、パン業界に働きかけて、塩分を10%減らすなどの政策を行った結果、20年間で75歳以上の認知症が20~30%も減ったという。「心臓病の予防は、認知症の予防」という標語もあるほどだ。

「適度な運動、バランスのいい食事、太りすぎないなど生活習慣病の予防は、そのまま認知症の予防にもなります。そのほかに、知らない道を散歩するということも有効です。

嗅内野には、格子細胞というものがあって、この細胞はA地点からB地点へ行くのに、どのくらいの距離を、どのくらい移動したか認識するGPSのような働きをしています。知らない道を通って、家に戻るということを繰り返すことによって、細胞を活性化することができるのです」

とはいえ、ステージⅢになってしまうと、破壊された細胞が多いため、残った細胞だけで機能を補おうとすると、負担が大きく、残った細胞も壊れてしまうのだという。

3年後は高齢者の5人に1人が認知症…全人口比の割合が世界一の日本

厚労省は、2020年現在、65歳以上の認知症の人は約600万人と推計し、2025年には約700万人になるだろうと予測している。これは高齢者の5人に1人にあたる数字だ。高齢化社会ということもあって、経済協力開発機構(OECD)に加盟している先進国35カ国の中で、全人口比でもっとも多い割合だとか。

予防するためには最初期に見つけることだ。ただ、これまでの認知機能テストではステージⅢ以上でないと診断をつけることができなかった。なんとか「超」早期に見つけようと、さまざまな研究が行われている。高島氏が共同創業者となっているMIG株式会社もその一つだ(Brain100 studioプログラム)。VRゴーグルを用いて「空間ナビ脳機能測定」を行い、脳機能の破壊状況の「最初期」を把握するというもので、これで得たデータをもとにサプリメントの開発も進められている。

もはや他人事ではない認知症。1日も早く予防薬ができるのを期待するばかりだ。その前に、日常生活の見直しもやらなくては。

被験者はVRゴーグルをつけて、仮想空間の広場内を移動。スタート地点から、A地点、B地点と移動し、スタート地点に戻る。正しいスタート地点からどのくらい離れてしまったかで、ステージⅠ以上になっていることがわかる
被験者はVRゴーグルをつけて、仮想空間の広場内を移動。スタート地点から、A地点、B地点と移動し、スタート地点に戻る。正しいスタート地点からどのくらい離れてしまったかで、ステージⅠ以上になっていることがわかる

高島明彦 理学博士。学習院大学理学部生命科学科教授。MIG株式会社共同創業者兼取締役チーフサイエンスオフィサー。’87年より米国国立衛生研究所客員研究員、’98年より理化学研究所勤務、2016年より現職。著書に『アルツハイマー病は今すぐ予防しなさい 第一人者が教える脳の守り方』(産経新聞出版)、『JIN-仁-と学ぶ認知症「超」早期発見と予防法』(集英社)など。

  • 取材・文中川いづみ

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