「出稼ぎ風俗嬢」の告白 都会で行き場を失い地方へ移る悲壮な現実 | FRIDAYデジタル

「出稼ぎ風俗嬢」の告白 都会で行き場を失い地方へ移る悲壮な現実

ノンフィクション作家・石井光太が家を無くした若者「ヤング・ホームレス」の実態に迫る!

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都心から地方に向かう風俗嬢が増えている(写真はイメージです。画像:アフロ)

現在、地方の風俗業界を支えている「出稼ぎ風俗嬢」。日本にいる35万人の風俗嬢のうちの少なくない人たちが、数ヵ月おきに地方の風俗店を転々としながら、その日暮らしをしている。〝流しの風俗嬢〟とも言うべき彼女たちの日常がどのようなものか、前後編に分けて見ていきたい。

日本では人口10万人規模の市区町村であれば、だいたい無店舗型も含めて風俗店が存在する。市区町村の数でいえば、おおよそ300だ。

沖縄県のような観光地の歓楽街は、風俗嬢たちにとって働き場所としても人気で、観光も兼ねてやってくることが多い。シーズン中であれば、客も絶えないし、休みの日には珊瑚礁の広がる海で遊ぶこともできる。那覇市で風俗店を営む人物によれば、彼の店で働くのは、季節によっては沖縄県出身者より、内地からやってくる女性の方が多いそうだ。

だが、人気があるということは、競争率も激しいということだ。したがって、東京や大阪といった都市の歓楽街で指名が取れないからといって沖縄に来ても、同じような競争にさらされるため、簡単には稼ぐことはできない。

都会にはない「お得感」

本稿で取り上げる出稼ぎ風俗嬢は、観光目的の出稼ぎとは異なる。彼らは都会や観光地から意識的に逃れ、もっと寂れた町の歓楽街に自分の居場所を見つけようとする。

かつては温泉地として栄えたが、今はシーズン以外は閑散としている町だとか、かつては炭鉱や港でにぎわったが、今は商店街の多くがシャッターを下ろしている町だとか、そういうところだ。

こうした町は、人間関係が密接なので、地元の女性が風俗店で働くことが多いわけではない。だからこそ、都市で働けなくなった女性たちが、ここまで流れてくる余地があるのである。

店はこうした女性を受け入れるために寮を用意する。5年ほど出稼ぎ風俗嬢をした経験のある30代の女性は言う。

「東京や神奈川といった都会の風俗店も寮を用意していることがありますが、家賃は普通にアパートを借りるのと同じくらいなので、あんまりお得感はありません。店側も家のない子をわざわざ雇いたいとは思わないでしょう。

けど、地方の風俗店は違います。彼らは都会から流れてくる子を受け入れなければなりませんし、そういう子は大抵何かしらの事情があって住居に困っています。なので、店が寮を用意して、家賃を何割か負担するというのが普通なのです。お鍋、洗濯機、冷蔵庫などがついていることもあります。店によっては、働いている女の子はほぼ全員、寮暮らしってこともあるくらいです」

風俗店の寮は大きく分けて3タイプあるそうだ。

1:アパートやマンションを利用した個室。

2:貸家や広いマンションに数人が共同生活をする。

3:デリバリーヘルスの事務所が寮にもなっている。

1は、完全個室の寮だ。あらかじめ店がいくつかのアパートやマンションを借り上げ、それを貸すのだ。

2は、借家やマンションに複数のベッドが並べられたドミトリー式の寮だ。調理場やトイレが共同になっている。

3は、たとえば3LDKの一室がデリバリーヘルスの事務所になっていて、もう一室が女性たちの待機室。そして残りの一室に2段ベッドが何台か置かれ、寝泊まりできるようになっている。

風俗寮の大きな問題点

先の女性はつづける。

「家賃としては個室が一番高いですね。ドミトリーなんかは頭数で割るので結構安い。特徴的なのは、月払いじゃなく、日払いだってことです。安ければ日に1000円、高くてもビジネスホテルよりは安めで3000円くらいですね。大抵がお店や事務所のすぐ近所にあるし、遠くても店の車で送迎してもらえるので、寮に住んでいる限り交通費はかかりません」

ただし、問題がないわけではない。

繁華街から離れた一軒家が寮になっている場合、彼女たちは開店時間に合わせて送迎車で店へつれていかれ、閉店とともに寮に帰される。寮の周りにはコンビニすらないので、帰ったらさっさと寝るか、スマホをのぞき込んでいるしかない。

また、寮の清掃は、利用する女性たちの役割だが、そもそも長く住むつもりがないので積極的に掃除しようとする人が少ない。あちらこちらにゴミが散らばっているのは当たり前で、寮によっては床に穴が開いていたり、ネズミが住み着いていたりすることもある。

セキュリティの問題もある。

風俗店の給料は原則として現金の日払いだが、寮内での私物の管理は自己責任だ。そのため、シャワーを浴びている間も財布を手放すことができず、毎日寮から店へ行くにもキャリーケースを持っていかなければならないこともある。彼女たちにしてみれば、キャリーケースの中身が全財産なのだ。

先ほどの女性は次のように述べる。

「地方の風俗に出稼ぎにくる子って、そもそも家がない子が多い気がします。だって、もとからちゃんと家があったら、地方の店の寮に住もうと思わないし、そうするにしても住んでいるアパートを解約するとか、いろんな面倒なことがありますよね。

だから、都会から流れてくるにしても、それ以前は都会で漫喫やホテル暮らしをしていたとか、彼氏の家を追い出されて住むところがないといったような子が、仕事と寝場所を簡単に得られるからという理由で飛びつくケースが多いんです。

こういうのも何ですが、風俗嬢ってホームレスすれすれみたいな子が結構いますね。愛人の家を転々としているとか、店長とかスカウトの家に居候させてもらっているとか。体と引き換えなら、男って簡単に泊まらせてくれるでしょ。だから、風俗嬢ってホームレス予備軍がすごく多いんです」

出稼ぎをする理由の一つとして「地方の方が競争率が低い」ということがある。だが、都会にだって探せば低い条件で働かせてもらえるところはある。それでも、彼女たちが出稼ぎを選ぶのは、住居の問題が大きく影響しているのだ。詳細は【後編】で紹介したい。

【後編:「出稼ぎ風俗嬢」が犯罪に手を染める悲しい背景】

  • 取材・文石井光太

    77年、東京都生まれ。ノンフィクション作家。日本大学芸術学部卒業。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに取材、執筆活動を行っている。著書に『「鬼畜」の家ーーわが子を殺す親たち』『43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層』『レンタルチャイルド』『近親殺人』『格差と分断の社会地図』などがある。

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