無銭飲食、万引き…「出稼ぎ風俗嬢」が犯罪に手を染める悲しい背景 | FRIDAYデジタル

無銭飲食、万引き…「出稼ぎ風俗嬢」が犯罪に手を染める悲しい背景

ノンフィクション作家・石井光太が家を無くした若者「ヤング・ホームレス」の実態に迫る!

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都会でドロップアウトした女性たちの悩みは深い(写真はイメージです。画像:西村尚己/アフロ)

【前編:「出稼ぎ風俗嬢」の告白】に続き、地方に向かう風俗嬢たちの実態に迫る。

そんな出稼ぎ風俗嬢はいくらくらい稼いでいるのだろうか。

沖縄のような観光地を除けば、都会の風俗店で働くのに比べれば収入は落ちるらしい。客単価が安い上に、客数も少ないので、非本番系の店であれば、日当で2万円を超すことはほとんどないそうだ。月にすれば、20~30万円台というところだろうか。

寮費が安いとはいえ、食事は外食で、その他諸々出費があることを考えれば、条件がいいわけではない。体調を崩してしばらく働けなかったり、高級ブランドやホストクラブにはまったりすれば、貯金は夢のまた夢だろう。出稼ぎ風俗嬢の経験のある30代女性が語る。

「出稼ぎって、お金を貯めるためにするって感じじゃないと思いますよ。都会の風俗で働く力がないから、しかたなくやってるみたいな感じ。だから、都会の店にくらべれば、メンタルをやられている子はかなり多いです」

底辺のさらなる深淵……

やはり彼女たちの住居の問題、そして心の問題とは無縁ではないのだ。

出稼ぎ風俗嬢を理解するには、彼女たちの抱えている問題に目を向けなければならない。

巷では、「風俗は最後のセーフティーネット」といわれることがある。社会からこぼれ落ち、行き場を失った女性たちが、身体を売ってなんとか生きている現状があるためだ。

だだし、風俗は一般的なビジネスよりも個の力が物をいう世界だ。弱い者たちはそこでも蹴落とされ、都会の風俗街で生きていくことができなくなる。そんな社会の底辺の、さらなる深淵にあるのが出稼ぎなのである。

風俗店の店長の次のような言葉からもいえることだ。

「地方の風俗で出稼ぎをして回っている子は、生きていけるのかなって心配になる子も結構います。コンビニでパンを買ってきてって頼んでも、買ってくることすらできないような子だとか、もう10年以上イチゴミルクジュースとメロンパンしか食べてないと平気で話している子だとか、明らかに普通じゃないなって子が多いんです。

そんな子たちが、家族や地元のつながりが完全に切れた状態で生きている。だから誰にも頼れないし、自分がおかしいことすら気づいていない。彼女たちはお金の計算とか、貯金といったことができないので、手に入れたお金はすべてつかってしまう。だから、一度出稼ぎをはじめたら、どこかでショートするまで出稼ぎ風俗嬢として生きていくしかないことが多い。

たまにうちの店の寮がそんな感じの子でいっぱいになることがあるんです。そんな時、ふと『うちって福祉施設みたいだな』って思ったりしますね。風俗っていう地方の福祉施設を、問題を抱えた子がグルグル回ってるみたいな感じです」

常識では考えられない犯罪

彼の印象に残っている出稼ぎ風俗嬢がいる。15年ほど前から何度か働きに来た40代の女性だそうだ。明らかに障害がありそうで、年齢も年齢だったので、そろそろ風俗で働くのは無理だろうと思っていた。すると、ぱたりと姿を見なくなった。

6年ほどして、突然その女性が現れ、「金を貸してほしい」と頼んできた。外見はボロボロだった。尋ねたところ、彼女は風俗店で働けなくなってから、衣食住を確保するために紅茶一杯の無銭飲食や、リンゴ一個の万引きといった、常識では考えられないような軽犯罪をわざとして、拘置所や刑務所で生活していたそうだ。

このエピソードを聞いて思ったのが、男性と女性の違いだ。男性の障碍者でも、福祉のセーフティーネットからこぼれ落ちる人はいる。彼らの多くは日雇いの仕事などをして生きていくことになるが、それが困難になった場合は、ホームレス、あるいは軽犯罪を意識的に繰り返して、生涯のほとんどを刑務所を出たり入ったりして暮らす累犯障碍者になる。

一方、女性の場合は日雇いの仕事以外にも、売春という選択肢がある。そこからこぼれ落ちれば、出稼ぎ売春婦になることもできる。だが、遅かれ早かれ、そうした生活には限界が訪れる。その時、彼女たちは先の店長が話したような、女性の累犯障害者となって刑務所とシャバを行き来するような生活をするようになるのだろう。

地方の風俗店を支える出稼ぎ風俗嬢。だが、その実態の多くは、都会の競争からこぼれ落ちた「ヤング・ホームレス」だといえるかもしれない。

彼女たちの生態に光が当たることはほとんどないが、将来的には社会の大きな課題となってはね返ってくるはずだ。もっと彼女たちを社会問題として考える目線が必要になるのではないだろうか。

【募集】定住先のない10~40代の方を探しています。車上生活者、ネットカフェ難民、出稼ぎ風俗嬢、寮暮らしの日雇い労働者、ホテル生活者、店舗生活者、支援施設での生活者など、現在でも過去でも、住居を失った経験のある人の実体験、あるいはその支援をされている方々の声を募集しています。匿名などの条件にも応じますので、著者までご連絡下さい。

石井光太(作家)ツイッター @kotaism

メール postmaster@kotaism.com

  • 取材・文石井光太

    77年、東京都生まれ。ノンフィクション作家。日本大学芸術学部卒業。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに取材、執筆活動を行っている。著書に『「鬼畜」の家ーーわが子を殺す親たち』『43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層』『レンタルチャイルド』『近親殺人』『格差と分断の社会地図』などがある。

  • 写真西村尚己/アフロ

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