港湾局も苦悩 大黒ふ頭に「ナンバー無し車両」があふれているワケ | FRIDAYデジタル

港湾局も苦悩 大黒ふ頭に「ナンバー無し車両」があふれているワケ

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大量の「ナンバー無し車両」が並んだ大黒ふ頭の一角。100台以上が隙間なく並んでいる
大量の「ナンバー無し車両」が並んだ大黒ふ頭の一角。100台以上が隙間なく並んでいる

大黒ふ頭と聞くと、多くの人は「車好きの聖地」とも呼ばれる大黒パーキングエリアをイメージするだろう。その大黒PAに入っていくときに目にすることができるのが、船積みを待つ大量の自動車だ。新車はもちろん、大量の中古車もある。MOL(商船三井)や、NYK(日本郵船)などの文字が入った巨大な自動車専用船を見かけることも珍しくない。

自動車を輸出する際の船は、大別すると、RO-RO船(車を自走で積み下ろしできる船舶)とコンテナ船(コンテナごと積みこむ船舶)に分かれる。日本から海外には、年間120万台以上の中古車が輸出されているが、大黒ふ頭はその中でも国内最大級の輸出規模を誇る。また、「トランジット」として、日本では販売される予定のない外国の新車や中古車が途中寄港して、別の船に載せ替えて目的地まで運ぶ際の拠点でもある。

そんな大黒ふ頭の港には、ナンバーのない車両がズラリと並んでいる場所がある。約500mの道路両脇に100台近くが隙間なく並び、なかには大型トラックまである。視界に入る車すべてが、ナンバー無しの車両と言ってもいいほどだ。

筆者の友人の海上コンテナドライバーによると、「10年くらい前からありますよ。近年は増えましたね」とのこと。グーグルのストリートビューで確認してみても、’19年に撮影されたものと現在を比較すると、確かに車両の数が増えている。

当初は、「ナンバーもないし、廃車にしたはいいけど処分に困って不法投棄されている車か」と思った。しかし、ナンバーの無い車のほとんどは、比較的こぎれいなミニバンやコンパクトカーを中心とした日本車だ。プロボックスが3台、スズキアルトが3台など、まったく同じ型の車が同じ場所に並んでいることもあった。それに、筆者は年に数回、大黒ふ頭を訪れているが、行くたびに車が入れ替わっている。

不法投棄された車両にしては不自然だ。では、いったいこれらの車はどこから来たのか。大黒ふ頭を管轄する横浜市港湾局に取材すると、意外な答えが返って来た。

――大黒ふ頭内の道路に放置された車は何なのでしょうか。

「あの車は、ほとんどがこれから輸出される中古車です。船積みのための保管場所(通関業務や中古車輸出業務を行う会社)が満杯になって入れなくなり、あの場所に『仮置き』しているのでしょう。よく見ると、オークションシートや記号などが書かれている車もあるはずです。オークション会場で落札した車の置き場がなく、『仮置き場』として使っているケースもあるでしょう。何度も注意や指導をしていますが、なかなかなくなりませんね」

――2019年頃と現在では車両がずいぶん増えた印象です。

「はい、おっしゃる通りです。それには理由がありまして、大黒ふ頭はかつて『東日本最大の自動車取扱拠点』でしたが、国交省と横浜市は’15年度から自動車運搬船の大型化や大黒ふ頭に着岸する隻数の増加に対応するために、岸壁の水深を深くしたり、延長を延伸したりなどの整備を行ってきました。

そのひとつに、コンテナターミナルから自動車専用船(RO-RO船)ターミナルへの転換があります。コンテナ船用にターミナルを使っていた時には巨大なコンテナを運ぶトレーラーの出入りのために、ターミナル周辺の道路を空けておく必要がありました。しかし、コンテナターミナルが廃止されてからは、その部分のスペースが空いてしまいました。その空いたスペースにナンバーのない車が置かれるようになったのです。’19年に比べて放置車両が増えたのは、コンテナターミナルの廃止も関わっていると思われます」

――盗難車の可能性はありますか。

「可能性としてはゼロではないでしょう。私たちも盗難車であることがわかって、警察から連絡を受け確認に立ち会うこともありました。盗難車や盗難に関わる車両であると発覚する例はあまりないのですが、何台かは紛れ込んでいる可能性もありますね」

ふ頭に放置されたように思っていたナンバーのない車の正体は、輸出を待つ「置き場のない車」。海外での日本車人気は高い。ふ頭内の公道に大量に置かれているだけに、港湾局は頭を悩ませているが、解決には時間がかかりそうだ。

かなり雑な停め方がされており、接触してしまっている車もあった
かなり雑な停め方がされており、接触してしまっている車もあった
大量のゴミが車内に放置された車。「輸出待ち」の車のなかに、盗難車が紛れ込んでいる可能性もある
大量のゴミが車内に放置された車。「輸出待ち」の車のなかに、盗難車が紛れ込んでいる可能性もある
  • 取材・文加藤久美子(自動車生活ジャーナリスト)

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