難しく考えなくても大丈夫…「柴犬」に学ぶコロナ禍のお悩み処方箋
ツンデレで頑固、ちょっと神経質なところもあるといわれる柴犬。イラストレーターの影山直美さんは柴犬に魅了され、20年にわたって4匹の柴犬たちと生活を共にしてきた。

初代のゴンは「日本犬ってこんなだっけ?」と拍子抜けするほどフレンドリーで、誰にでもすぐになついた。2匹目のテツは侍のよう。「お友達はいらない!」と我が道を行くが、目下の犬には優しかった。ゴンが天国に行き、迎えた3匹目のこまは、とにかく無邪気で陽気な女の子。さらに4匹目の黒柴で保護犬だったガクは「柴犬の姿を借りたプードルなのでは?」と思うほど甘えん坊。そして4匹に共通するのは「そっけないふりをしながら飼い主をよく観察していること」だという。
これまでに数多くの柴犬本を出している影山さんだが、今回はそんな彼らから学んだことや日々の気づきをまとめた『読むだけで心がほどける柴犬処方箋』(主婦の友社)にあやかって、コロナ禍のお悩み別に処方箋を出していただいた。柴犬たちはこの悩みに、どう答えてくれるだろうか。

Q_リモートで一日中家族と一緒。息が詰まる。
A_無理に付き合わず、居心地の良い場所に移動を。
「柴犬は“おひとりさま時間”の達人です。さっきまで一緒にテレビを見ていたのに気づくといなくて、2階で丸くなって寝ていたり。そうして何事もなかったようなスッキリとした顔で戻ってきます。
音もなくいなくなるので「今まで一緒に楽しくしていたんじゃなかったっけ?」とがっかりすることもありますが、無理に付き合わず、自分がその時にいちばん居心地のいい場所に、さりげなく移動してしまうんです。
ひとりになれと言われてもどこに行けばいいのか、という人もいるかもしれないけれど、散歩に出るなどして、ちょっとした息抜きの時間を作るのはできそうかなと思います」


Q_飲み会などが減り、憂さ晴らしができなくなった。
A_風船が膨らみきる前に、こまめに爆発させて。
「テツは一時期、ストレスが溜まると家族の足に噛みついたりといった問題行動があったんです。そこで、いつも20分の散歩を3日に1度は1時間にするとか、家の中でもボールを投げて遊ばせるといった小さなことの積み重ねで対処していったら、最後は本当に穏やか〜な、いいお爺さんになりました。
ガスを抜くことは大切。これまでは、飲み会で溜め込んだものを一気に爆発させるのが当たり前だったかもしれないけれど、風船が膨らみきる前の小さな膨らみの段階でポンポンと爆発させてあげることで、いつの間にかストレスが発散されている、そんな流れを作るとよさそうです」

Q_妻と自分ではコロナ対策などに温度差があり、くだらないいざこざが増えた。
A_ ゆったりと構えてピリピリの連鎖を消す。
「自分がピリピリしていると、そのピリピリが周りに伝わってしまうこともあります。柴犬は観察力が鋭く、私が行動を起こす前に“あれが来る!”というのがわかってしまうんです。“このあと足を拭かれるんじゃないか。ブラッシングをされるんじゃないか”と読まれてしまって、唸る子もいます。すると私もだんだん、唸る3秒前くらいにはわかるようになってきて、お互いにピリピリと(笑)。
なので、何もかも犬の希望どおりにするわけではないけれど、嫌なことは無理にしなくてもいいと考えるようにしました。私がゆったり過ごしていると犬のほうもゆったりしてきて、そのうちに苦手だったブラッシングも嫌がらなくなったんです。ピリピリにピリピリで返すんじゃなくて、ゆったりと返せたら理想ですよね」

Q_3年間、あまり人と話さなかったせいか、人見知りになったり、人と会うのが億劫になった気がする。
A_会いたくないなら無理に会わなくても。無理をしていると感じたら、立ち止まることも大切。
「柴犬たちを見ていると、“無理に何かしているというのは、あの人たち無いんじゃないかな”と感じます(笑)。外で私が誰かと立ち話をしていても、自分はよそを見てツンとしているし。
自分はこれを愛でているから相手も同じように感じているとつい思いがちだけど、実は全然違う。それが当然なんだと思っていたほうが、気持ちが楽な時もあります。実際に同じものを見て“きれいだね”と喜び合うこともあるけど、それはとてもラッキーなんだ、そもそも元は違うんだと思っていたほうがいいのかもしれません。人と会いたくないと感じるなら、自分軸を大切にしてみてはどうでしょうか。
無理をしているなと感じた時には頑張りすぎずに立ち止まって、心を柔らかくするのも大切かなと思います」


Q_暗いニュースばかりで漠とした閉塞感があり、楽しく暮らせない。
A_ずっとこのままではないと考え、流されないようにしよう。
「コロナですれ違う人たちがみんなマスクをするようになっても、それで柴犬たちが動揺することはありませんでした。手に消毒液の匂いが残っても、元々の声や匂いといった総合的なものがあるので、あまり気にしていないみたいです。
コロナで不安が募るなか、ペットが変わらないことで安心感を得られたという人は多いようです。暗い気持ちになっても、まずは自分の生活をちゃんとしなければいけないから、流されないことは大事ですよね。
あの子たちを見ていると、そんなに考えすぎなくてもいいのかなと思わせてくれます。ある時、急にコロナになったわけだから、また急に状況は変わるかもしれません。“ずっとこのままじゃないんだ”と前向きに捉えたほうがいい気がします」


影山直美(かげやま・なおみ)イラストレーター。現在は2匹の柴犬(こま、ガク)、夫と湘南に暮らす。著書に『柴犬さんのツボ』シリーズ(辰巳出版)、『柴犬テツとこま のほほんな暮らし』(ベネッセコーポレーション)、『しば犬こたのしっぽっぽ』(神宮館)、『柴犬のトリセツ』(西東社)などがある。

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- ・『読むだけで心がほどける柴犬処方箋』(主婦の友社)
- ・『柴犬さんのツボ』(辰巳出版)
- ・『柴犬テツとこま のほほんな暮らし』(ベネッセコーポレーション)
- ・『しば犬こたのしっぽっぽ』(神宮館)
- ・『柴犬のトリセツ』(西東社)
取材・文:井出千昌
フリーライター。ファッション誌、情報誌、ウェブなどジャンルはさまざま。影山さんの取材を通し、子どもの頃から13年間飼っていた愛犬を思い出した。病気で逝ってしまう直前、立ち上がる元気さえないのに「散歩に行こう」とリードをくわえてきたのは、多分「散歩に行けば家族が喜ぶ。家族が喜べば自分も嬉しい」と考えていたから。動物から学ぶことは本当にたくさんある。