スクープ!「公選法違反疑惑」秦野市長の告発状が受理されていた! | FRIDAYデジタル

スクープ!「公選法違反疑惑」秦野市長の告発状が受理されていた!

神奈川県秦野市の伊藤大輔市議を支援したのは、東京地検特捜部時代に「リクルート事件」を捜査した大物弁護士だった

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伊藤市議らが指摘する、1月28日の選挙投票日に配信されたLINEの投稿文(画像提供:秦野市民)

今年1月23日、神奈川県秦野市で行われた同市長選挙で、現職の高橋昌和市長(65)が2期目の当選を果たした。しかし後日、投開票日当日に高橋市長陣営が公式LINEアカウントで自身への投票を呼びかける投稿をしていたことが判明。しかし、多くの議員がこのLINEメッセージを受け取っていたにも関わらず、問題を黙認し、市議会として「公の場」での説明責任を高橋市長へ求めない秦野市議会に対して「自浄作用がない」と感じた無所属新人の伊藤大輔市議(46)が、高橋市長やLINE配信責任者を公職選挙法に抵触するとして、横浜地方検察庁あてに告発状を提出。この告発状が、6月上旬に受理されていたことがFRIDAYデジタルの取材でわかった。

「自浄作用がない」

 「選挙運動は選挙の公示日から選挙投開票前日まで行うことは可能ですが、選挙当日の1月23日に高橋市長への投票を呼び掛ける投稿がされたことは、公職選挙法129条に違反する行為です。それにも関わらず、事が発覚した後の答弁で高橋市長は『選挙事務所スタッフのLINE配信責任者とSNS管理者がやったことで、何が投稿されているかは全て事後に知った』と不自然な発言をされていますし、選挙管理委員会も『私たちに調査権限はない』とあいまいな答弁しかなかった。

 選挙は市民が政治に参加し、主権者としてその意思を政治に反映できるもっとも重要な機会です。この件は既に証拠があることから、誰かが罰せられるべき状況にあるのに、このままでは誰も罰せられない。それは民主主義社会にあって不健全な状態です。なので、市議として最大限にできることは何か、とずっと考えてきました」

そう明かした伊藤市議はどんな行動に出たのか。それは高橋市長やLINE配信責任者を刑事告発することだった。6月14日、秦野市議会で高橋市長にLINEを使った選挙運動についての一般質問をした伊藤市議を直撃。取材に応じた同市議は「告発は考えていないのか?」との記者の質問に対して、「実は6月に入って(横浜地方検察庁に)受理された、ということを弁護士の先生からは聞いています」と答えた。

6月14日、神奈川県秦野市議会の一般質問する伊藤大輔市議(撮影:林大輔)

伊藤市議の弁護人はリクルート事件を捜査した元敏腕検事

2019年に初当選したばかりの伊藤市議がなぜ、高橋市長を告訴せざるを得ないと考えるようになったのだろうか。

まずは1月23日の投票日当日、何が起きたのかを振り返ってみよう。同日の午後1時28分ごろ、高橋市長の公式LINEアカウントから、高橋市長が子供と一緒に写った写真とともに、以下のような、高橋市長に投票を依頼するようなLINEの投稿がなされていた。

<今日は投票日です。私の4年間を評価していただく日であるとともに、これからの4年間の舵取りをお任せいただけるかのご判断をいただく日でもあります。積極果敢、有言実行、率先垂範を胸にさらに取り組む所存ですので是非高橋まさかずにお任せください。よろしくお願いします>

LINEメッセージが拡散されていた事実をすぐに市民も把握。事態を重く見た市民らが中心となって署名を集め、3月14日付で秦野市議会議長宛に、164筆の署名とともに、事実確認、真相究明、調査結果の公表を求める「要望書」が提出された。

2日後の3月16日、その要望書をもとに、秦野市議会本会議において露木順三市議(6月9日に死去)が高橋市長に対して直接質問をぶつけた。同市長は「(私のLINEの)公式アカウントの配信責任者が事前に内容の確認をするため、SNS管理責任者に対してテスト配信をしようとしたところ、誤って本配信をしてしまった」と答弁した。

6月14日、伊藤議員は秦野市議会の一般質問で高橋市長を約40分間にわたって直接追及。この場でも、自らの事務局員から選んだ「LINE配信責任者」が投稿文を作成し、「管理責任者」が内容を確認した上で、問題なければ「LINE配信責任者」が投稿する流れを繰り返し説明しようとする高橋市長に対して「投稿する内容は2人に一任し、投稿内容については(高橋)市長自身では事前に目を通していない」という内容のコメントを引き出した。

また同じ一般質問の席上、伊藤議員は選挙当日に、投票を求めるような投稿をする行為が違反行為にあたるか否かの見解を選挙管理委員会にも求めたが、「選挙管理委員会は公職選挙法上、行われた行為が法律に抵触しているかどうかを判断する機関ではない」と繰り返し答弁するのみ。「白なのか黒なのか」という見解すら述べなかった。「本来ならファシリテーターとしてきちんと能力がある人が議長職に就くべきだ」と伊藤市議は言う。

「私たちの立場で刑事的な責任は追及できないのはわかっています。でも議会は政治的な責任の追及はできる場であるはずです。ですが、このような『うやむや』な答弁が続いてしまったら残念ながら、市民への説明責任を議員として果たすことはできないと考えます」(伊藤市議)

そんな思いが、今回の具体的な行動の原動力になっているが、追及しようとする本気度は、告発状を出すときの弁護士の選定にも表れていた。高井康行弁護士は、東京地検特捜部時代にリクルート事件なども捜査した元敏腕検事だ。伊藤議員が「自浄作用がない」と判断した以上、秦野市のトップの権力者の個人情報を調べるにはどういった方法をとることが得策なのか。同じ市内の秦野警察署ではなく、横浜地方検察庁や神奈川県警本部といった「外部」に告発する必要性がある。まさにボクシングのウエルター級のチャンピオンに、ヘビー級のチャンピオンをぶつけるようなイメージで戦いを挑んだのだ。

6月14日、伊藤市議の質問中、顔をしかめる高橋昌和・秦野市長(手前、一番右端、撮影:林大輔)

2019年に秦野市議に初当選した伊藤市議だが、これまで写真集を出版するほか、大手企業の広告写真や多くの著名人の写真等も手掛けるプロの写真家として現在も活躍中である。ブラジルのリオデジャネイロのスラム街を拠点に,ブラジルの格差社会を世間に知らせるため,貧困街で暮らす人々の写真を撮り、その模様は番組『クレイジージャーニー』などでも紹介された。MCのダウンタウン・松本人志をして「(人としての)圧がすごい」と唸らせたほどだった。

「犯罪と判断されれば責任は回避するつもりはない」

10年間ブラジルで暮らした後、帰国したのが2016年夏。仙台市出身の伊藤市議だが、妻の実家のある自然豊かな秦野市で生活を始めた。しかしある時,子供たちの通学路に大手飲料メーカーの工場が誘致され、その周辺には新しい大きな道路が作られる計画案を知った。

しかし、46億円もの巨額な市税が投入されるにも関わらず、この計画案のメリット、デメリットの議論も大して行われずに、既得権をもった一部の人たちの利益が優先されてしまう政治に疑問を感じた。そして、数ヵ月後に迫った2019年8月の秦野市議会議員選挙に立候補して見事初当選。立候補の最大の原動力となったのが、「怒り」だったと言う。

この計画案に対する市民約2500名もの署名付き陳情書が、市議会へ提出されたにも関わらず、それが「議員配布に留める」という形で、議会で議論すら行われなかったのだ。昨年5月、FRIDAYデジタルの取材に伊藤市議はこう明かしている。

「当時の市議会議員や市議会にはまともに相手にされませんでした。この時から、私は当時の秦野市議会が『結論ありきのトップダウン方式』とも言うべき構造上の問題を抱えていると感じました。結局、都合の悪いことは、各会派の代表者から成る議会運営委員会や代表者会議という場でうやむやにされ、もみ消されてしまう。この時は私たちの反対運動の声が当該企業に届いたのか、当該企業が自主的に工場の建設計画を中止にしてくれたのですが、私はこの時に感じた秦野市の構造上の問題を解決しなければ、再び同じような問題が起こる可能性が高いと強く思い、立候補を決意したんです」

伊藤市議は当選後も既存の土地区画整理事業の撤回や補助金の見直しなど既得権益の打破、財政の見える化、「子供の国はだの」、地産地消と学校給食、働き方改革、ジェンダー平等などをかかげて精力的に活動をしてきた。ただ残念ながら、伊藤市議が立候補する原動力となった「結論ありきのトップダウン方式」の構造上の問題は「数の原理」で無所属新人一人では変えることはできない。「市議会をフレッシュに!」という「当選時の初心を貫きたい」という一途な思いが、たったひとりで行動を起こした伊藤議員の覚悟に表れている。

一方、高橋市長やLINE配信責任者は伊藤市議から刑事告訴を受けたことについて、どう感じているのだろうか。FRIDAYデジタルの文書による取材に対し、秦野市役所政策部秘書課を通して、こんな返答があった。

伊藤市議の告発状が横浜地検に受理されたことについては「知りません」とした上で、こう続いた。

今回の件につきましては、告発状を提出されるまでもなく、配信責任者が警察に届け出をして事情を説明し、捜査をされるのであれば、いかなる協力もするというお話をしております。

 今回のことが犯罪になるということであれば、配信責任者も私も責任を回避するつもりはまったくありません。いずれにしても、私自身の選挙に関して、多くの皆様に多大なるご迷惑、ご心配をお掛けしていることに、深くお詫び申し上げます」

当選3年目の市議1期生が、市で一番の権力を持つ市長陣営を訴える異例の事態。どんな形で決着がつくのか。捜査の行方から目が離せない。

2019年8月の選挙戦。スーツも身につけず、選挙カーにも乗らず。「何を成し遂げたいのか」という中身を伝えることを大事にした。「政治家として評価されるべきなのは何よりも発言の質で、パフォーマンスなんていらない」というポリシーからだった
高橋市長およびLINEの配信責任者と伊藤市議のバトルに「捜査のメス」が入ることに…。どんな結末が待っているのだろうか(撮影:林大輔)

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