令和不況のウラで…実は「勝ち組タワマン」が建設ラッシュ中!
勝どきエリアに5年で9棟も建つ!
最後のフロンティア「豊海エリア」
ただでさえ高止まっている都内のマンション価格。円安に伴う原材料高やインフレ不安で、一般消費者の購買力にさらなる陰りが見えるなか、「勝ち組の象徴」とも言える都内のタワーマンションは「建設ラッシュ」を迎えようとしている。
「そのホットスポットが、すでに何棟ものタワマンが建っている中央区の『勝どき』エリアです。実は、今後5年以内に合計9棟もの高級タワマンが建設される予定になっているのです」(デベロッパー関係者)
その全容を明かそう。まず、東京五輪選手村から転用が進められている『晴海フラッグ』エリア内に、地上50階建てのタワマンが2棟建設予定だ(総戸数1455戸)。晴海フラッグは五輪延期などさまざまな情勢が影響したが、結果的に都心地価の上昇で割安感が強まり、売り出されれば「即日完売」となっている。
次に、三井不動産レジデンシャルによる『パークタワー勝どき』だ。地上58階の「サウス」を鹿島建設、地上45階の「ミッド」を清水建設が施工を担当。もう1棟、29階建てのタワマンと併せ、総戸数2786戸の巨大プロジェクトが目下進行中である。
「パークタワー勝どきの価格を見ると、約40平米で6000万円、坪単価500万円台という高額な部屋もあります。レジデンスのグレードにも拠りますが、10年前の勝どきエリアのボリュームゾーンが坪280万円付近だったことを考えると、凄まじい値上がりと言えます」(前出・関係者)
埋立地である勝どきで、「最後のフロンティア」と言われているのが、エリアの西端に位置する「豊海(とよみ)エリア」だ。水産業関連の倉庫などが立ち並ぶ地区だが、今まさに再開発のメスが入っている。
1973年に建てられた『東卸豊海住宅』(清水建設施工)の跡地に、56階建てのマンション2棟が建設され、総戸数2077戸が供給される予定だという(同施工)。ただでさえタワマンが建つたびに「空が狭くなる」印象のある勝どきだが、より沿岸が開発されることによって、その異様さは際立つことになるだろう。

晴海フラッグに2棟、パークタワーが3棟、豊海エリアに2棟。勝どきエリアの建設ラッシュで最後に挙げる2棟が、「月島もんじゃストリート」を擁する月島3丁目における再開発計画だ。
こちらはふたつの再開発計画が並行して進んでおり、片方は総戸数1295戸、もう片方は総戸数723戸のタワマン2棟が建てられようとしている。ただ巨大なマンションが2棟建つだけでなく、周辺の商業施設も建て替えられる予定だ。
月島といえば、前述の通り月島もんじゃストリートや居酒屋など、東京下町の面影を残すエリアであり、近年で言えばインバウンド需要も高かった。このような街にタワマンが建つとあって、近隣住民の反対運動が起こっている。

これら9棟が供給されれば、単純計算で6000戸以上の住まいが新たに増えることになる。国税調査によると、一戸あたりの平均居住人数は2.33人であるから、勝どき・月島エリアの2キロメートル四方以内に1万人以上の人口が増える可能性があるのだ。
『60歳からのマンション学』(講談社+α新書)の著者・日下部理絵氏はこう解説する。
「かつて、東雲、豊洲、そして勝どきといった湾岸エリアはいわゆる『お買い得タワマン』で、津波や液状化、駅遠などのリスクやデメリットと引き換えに割安でタワマンに住めると人気でした。ですが、都心のマンション価格高騰に伴って、勝どきエリアもつられるように強気な価格設定の物件が次々と出てきています。
おそらく、デベロッパーも手探りの営業でしょう。勝どきエリアでも、売れ残りが目立つ既存のタワマンがちらほらあります。一気に6000戸以上が供給されるわけですから、『勝ち組』と『負け組』の差は如実についていくと思います」
人口が一気に増えれば、駅のキャパシティや保育園の空きなど、周辺施設の問題も大きくなっていく。特に勝どき駅は混雑緩和と利便性のため、2019年に新設ホームを供給したばかりだが、また混雑が予想される。いざ住んでみると、思い描いていた暮らしができないーーそんなことも起こりそうだ。

取材・文:金子大輝
1993年生まれ。不動産、マーケット情報を中心に、ベンチャー企業、音楽、飲食、アパレル、自動車など、幅広く取材。サウナ・スパ健康アドバイザー取得。