「星の数」は信用できる?食のプロが「グルメサイト」を本気採点!
グルメサイトの「透明性と公平性」
グルメサイト「食べログ」の評価点を巡る裁判で、東京地裁は食べログ側に3840万円の賠償を命じる判決を下した。
月額掲載プランや送客手数料をより多く支払う飲食店が上位に表示されるといった以前からの問題に加え、評価の不透明さも露見した今回の裁判。はたして各グルメサイトの評価を、食の専門家はどう見ているのだろうか。
『FRIDAYデジタル』が日頃、取材等でお世話になっている「食のプロ」の皆さんに「グルメサイト」各社を採点してもらった。

- 【アンケート項目】
- ①下記のグルメサイトを5段階で評価してください。
- Googleマップ/ぐるなび/食べログ/ホットペッパー/Retty(五十音順)
- ②上記以外で特筆すべきサイトがありましたらお教えください。
- ③それぞれの評価理由をお教えください。
- ④日頃お店探しなどで参考にしているものがありましたらお教えください。
- ⑤食べログのアルゴリズム評価に対して「変更は独禁法違反」という判決が出たことをどう思われますか?
山路力也さん(フードジャーナリスト・ラーメン評論家)
『Yahoo!ニュース個人』オーサー/著書『トーキョーノスタルジックラーメン』他/「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えながら、テレビ・雑誌・ウェブなど様々な媒体で活動中。
①各グルメサイトの評価
- ・Googleマップ:4.5
- ・ぐるなび:3
- ・食べログ:3.5
- ・ホットペッパー:3
- ・Retty:4
②上記以外の特筆すべきサイト
- ・SARAH:3.5
③評価の理由
Googleマップは地図から店舗情報への遷移がスムーズで、条件検索も同画面上で直感的。Rettyはユーザーを軸にした設計と、ネガティヴな評価は掲載しない姿勢が好印象。食べログは掲載店舗数と集合知としてのデータベースには価値がありますが、利用者側のリテラシーが問われる印象。ぐるなび、ホットペッパーは予約やクーポンなどに利用価値があります。SARAHは店ではなく料理にフォーカスした切り口がユニークで面白いです。
④日頃参考にしているもの
Googleマップ、Retty、食べログ。ただし店データ(住所、営業時間、定休日)のみで、レビューなどはほとんど読みません。
⑤「食べログ裁判」に思うこと
令和2年3月の段階で、公正取引委員会は取引実態調査の報告書を公表し、掲載店舗の採点や表示順位について「ルールの透明性を確保することが望ましい」との見解をまとめて、店に不当な不利益を与えた場合には独禁法違反となる恐れがあると指摘していました。今回の裁判で画期的だった点は2点。一つはサイト側の運用レギュレーションに対して独禁法違反が認定されたこと。もう一つは裁判の過程において、ブラックボックスであった食べログのアルゴリズムが開示されたこと。また、同様のグルメサイトなどへの警鐘の意味合いもあった判決ではないかと思います。
猫田しげるさん(グルメライター)
1979年生まれ。20年以上、グルメ雑誌編集やグルメ記事執筆、レシピ本制作など幅広く活動。「旨い店もそうでない店も愛すべし」をモットーに、飲食店全てを博愛するライター。猫田しげるの食ブログ 「クセの強い店が好きだ!」
①各グルメサイトの評価
- ・Googleマップ:2.5
- ・ぐるなび:3.6
- ・食べログ:4.0
- ・ホットペッパー:3.4
- ・Retty:2.6
②上記以外の特筆すべきサイト
・ヒトサラ:3.8
③評価の理由
やっぱり店舗掲載数が多い食べログに頼ってしまいますね。物凄く詳細に料理の内容を記載している人がいると、「ギャラも貰わずによくこの長文書くなあ~」と感心します。Googleマップはたまに「Very amazing!」みたいな外国人の呟きとか載っていて、なんじゃこりゃってなります(笑)。Rettyは口コミ数が少ない。ヒトサラは料理人に重点を置いた紹介スタンスなので、高い店を探すときに重宝します。
④日頃参考にしているもの
大阪在住なので、関西のグルメ情報誌『あまから手帖』でしょうか(笑)。全店、編集部が客のふりをして覆面調査してから掲載しているそうです。あとはFacebookのグループ投稿。「兵庫の美味しいお店を報告し合う」とか「天満天神★グルメ」とか。
⑤「食べログ裁判」に思うこと
「お客さんが勝手に好きなことを書き込むメディアが営業利益を左右する」ことが国にも認められたわけですね。いかに日本人が人の評価に依存しているか、自分の物差しを持たないかが再認識された気がします。評価基準を透明化したとしても、点数で店を判断するのはまだ難しいでしょうね。自分が店に失礼なことをしたのに「店員の態度が悪い」と低評価する客もいるし。「料理写真を見れば良い店かどうか分かる」というグルメライターも多いので、自分もそうなりたいっす。
平岩理緒さん(スイーツジャーナリスト)
マーケティング業を経て製菓学校で学ぶ。国内外の菓子を食べ歩き、情報を発信。商品開発支援や講演など幅広く活動。「おとりよせネット」達人、「日経新聞」ランキング審査員、Yahoo!ニュース執筆も務める。情報ウェブ「幸せのケーキ共和国」主宰。
①各グルメサイトの評価
- ・Googleマップ:4
- ・ぐるなび:3
- ・食べログ:3
- ・ホットペッパー:3
- ・Retty:3
②上記以外の特筆すべきサイト
・ヒトサラ:4
③評価の理由
Googleマップは経路検索もできるのが便利。他のグルメサイトは、地図や電話番号を調べるのには使うが、私の場合、点数で店を選ぶことが無い。特に菓子店の場合、予約機能を使うことも無く、店のInstagramやTwitterで新商品や営業状況を見る方が確実。初めての町で付近の店を探す場合、投稿画像は参考になるが、レビューは参考程度。匿名評価よりも、「ヒトサラ」のようなプロのシェフによる実名レビューの方が信頼できる。
④日頃参考にしているもの
InstagramやFacebookを通じた、知り合いからの紹介。
⑤「食べログ裁判」に思うこと
「食べログ」の点数を参考に店を選ぶ方も多い中、「チェーン店だから低評価に」と決めつけ、無断でアルゴリズムを変更したとすれば、店側が納得いかないのは当然だと思う。しかも全てのチェーン店に適用するのではなく、恣意的だとしたら尚更だ。私がコンクール等で審査員を務める際も、点数評価基準は明快で、求められれば説明できる。店側がレビューを参考に改善点に気づき、底上げに繋がるようなサイトを目指してほしい。
一般ユーザーの評価は?
昨年の4月、テーブルチェックが20~60代の男女1100名を対象に行なった「グルメサイトに関する意識調査」によると、グルメサイトの点数やランキング表示について、約3割が「信頼していない」と回答。また、サイトごとの評価では、忖度が感じられないGoogleマップが検索数を増やしていることがわかった。


猫田氏の回答にあった「いかに日本人が自分の物差しを持たないか」という言葉に耳が痛いが、ユーザーもランキングには疑問を感じているようだ。ポイントや予約など、便利な機能も多いグルメサイト。要は「使い方」ってことだ。
取材・文:井出千昌