矢野阪神「史上最弱」勝率0.063から「奇跡の逆転V」への道
球界初の大番狂わせはあるのか!? 新しい勝利の方程式、新外国人A・ロッドの使い方、近本光司のクリンナップ論争ほか 岡田彰布、広澤克実、川尻哲郎が緊急提言
「史上最弱」。こんなパワー(?)ワードが新聞の1面を飾ったのは4月半ばのこと。開幕から9連敗を喫し、史上最低勝率を.063に更新した阪神が2ヵ月後にAクラス入りするなどと、誰が想像したか。
「そらもう、青柳(晃洋(こうよう)・28)よ。交流戦3勝、防御率0.00の青柳を筆頭に、チーム防御率1点台と投手陣が踏ん張ったから12勝6敗と交流戦で貯金できた」
’05年の優勝監督・岡田彰布(あきのぶ)氏は「ちょっとできすぎと思う」と笑うが、暗黒時代のノーヒッター、川尻哲郎氏は逆転Vを「不可能ではない」と見ている。
「首位・ヤクルトは打線が強力で、投手陣も整備されていてスキがない。勝負するにはロースコアの戦いに持ち込むしかないのですが、いまセ・リーグでそんな野球ができるのは阪神くらい。先発のウィルカーソン(33)が少し打たれ始めましたけど、ファームには昨季二ケタ勝利の秋山拓巳(31)、今季の開幕投手の藤浪晋太郎(28)、剛球が復活した才木(さいき)浩人(23)が控えている。質量とも一枚上です」
ウィークポイントだった守護神・スアレス(31)の穴も埋まりつつある。
「湯浅京己(あつき)(22)と浜地真澄(24)の台頭が大きい。抑えの岩崎優(すぐる)(31)は素晴らしい真っ直ぐを投げますが、疲れてくるとキレがなくなり、簡単に打たれてしまう。僕なら7回を浜地か岩貞祐太(30)。あるいは、別人になってファームから帰ってきたケラー(29)に行かせてもいい。もともといいカーブがあって、速球のスピードが上がり、落ちる球も覚えた。8回を岩崎、最後は湯浅に託します」(川尻氏)
’90年代のヤクルト黄金時代の主砲、広澤克実氏はダブルクローザー制を推す。
「高津臣吾(53)と伊藤智仁(51)が、二人で抑えをやったことがあるんですよ。岩崎が疲れないよう、アルカンタラ(29)と併用する手はあると思いますね。7〜8回を浜地、湯浅、いい左打者が先頭に来るときは岩貞に行ってもらう」
新「勝利の方程式」が完成すれば、いよいよ投手陣は盤石。逆転Vのカギを握るのは打撃陣なのだ。貧打解消のため、球団はパドレス傘下の3Aからアデルリン・ロドリゲス一塁手(30)を獲得した。
「大山悠輔(27)は交流戦から絶好調で一塁守備も上手い。代打で使うならいいと思います。糸井嘉男(40)ともう一枚、代打がほしかったですから。
打線で言えば、近本光司(27)に3番を打たせていることには賛否あります。ただ、交流戦でオリックス・山本由伸(23)と対戦した時、8回二死から近本が内野安打で出ただけで、急にチャンスの雰囲気になった。実際、佐藤輝明(23)の三塁打などが飛び出して同点に追いつくことができた。島田海吏(かいり)(26)、中野拓夢(25)、近本の俊足上位打線ならゲッツーは少なく、内野安打などでランナーを置いて佐藤、大山に回りやすくなる」(広澤氏)
弱者の兵法というわけだ。ヤクルトとのゲーム差は13・5(6月20日現在)あるが、川尻氏は残り試合の多さに注目する。
「走りすぎると息切れしますし、油断も生じる。助っ人のオスナ(29)がサッパリなのも不安要素。一方、阪神は岩崎や湯浅を二軍で休ませる余裕がある。余力を残して終盤勝負に持ち込めたら面白い」
広澤氏も「CSになれば、阪神の投手力は脅威のはず」と見ている。
もっとも、勝負どころで求められるベンチワークは「矢野燿大(あきひろ)監督(53)の最も苦手とするところ」(岡田氏)だが……。




『FRIDAY』2022年7月8日号より