『80歳の壁』和田秀樹氏が警鐘!「テレビを見ると、バカになる」
垂れ流されるわかりやすい『正義』 気づかないうちに身についてしまう『2分割思考』の恐ろしさ 精神科医・和田秀樹氏が警鐘!
「テレビを見るとね、バカになります」
え?
「テレビを見ていると、脳の情報処理がおかしくなって、バカになるんです」
ベストセラー『80歳の壁』をはじめ800冊以上の著書がある精神科医の和田秀樹先生が、今いちばん「言いたいこと」は、「テレビを見るとバカになる」という現実だという。
「テレビ番組は、情報を短時間にまとめて、さらに『ウケ』がいいように作ります。そのため、とりあげるものについて、まず『白か黒か』を決めつけるんです。でもね、現実の世界には、白と黒の間に必ずグレーがあります。しかもそれは、薄いグレーから濃いグレーまで、グラデーションがある。
その中間のグレー部分をすべて無視して、物事を決めつけて紹介する。そうすると、どうなると思います? 見ている人は、その『白か黒か=2分割思考』を身につけてしまうんです」
不適切な思考パターンが人をバカにする
「子どもは成長するに従って、ものの考え方を学びます。好きと嫌い、良いと悪い、白と黒の間にグレーがあるということを学ぶんです。そのグレーの種類がいっぱいあればあるほど、認知的成熟度が高い、思考が深まっているということ。グレーを豊富に認識することが大人になることです。でもテレビは、せっかく成長した大人の思考を白と黒だけの2分割思考に戻してしまいます」
クリニックでのカウンセリング診察もしている和田先生の元には、鬱症状の患者さんも多く訪れる。
「鬱の患者さんに対し、精神医学の世界で重要視されている治療のひとつに認知療法があります。かつては、悲観的な考え方に対してそれに根拠がないことをわかってもらうやり方でした。が、今は、患者さんの『決めつけ』に対して、柔軟に考えるようカウンセリングします。つまりね、『決めつけ=かくあるべし』という思考を修正して、多様な考え方ができるように促し、治療につなげる。しかし、テレビというのはまさにこの逆で、『決めつけ』を促しているんです」
白か黒かを決めつけ、考えることをやめさせる。テレビを見れば見るほど、そういう「不適切な思考」に陥り、「思考停止」してバカになるのだという。
「わかりやすい正義」に飛びつかないで
「ウクライナの問題でも、テレビは、画一的でわかりやすい『正義』だけを垂れ流しています。善悪は、そんなにはっきりした二項対立ではないはず。それだけではありません。テレビに渦巻く、嫉妬や、学びの軽視。これも大きな問題です。
そして結局、当たり前のことしか言わない。テレビは、前頭葉をぼけぼけにするメディアでしかありません。その罪は重いです」
とくにコロナ禍で家にこもりがちなお年寄りや、40代、50代などのテレビ視聴が習慣になっている人が危ないという。
「若い人はもう、テレビなんか見ていませんよね。大学の講義で質問したら、教室の60人中、テレビを見ている学生は1人か2人、時にはゼロ人ですから。心配なのは、中年から高齢の人たち。今すぐ、テレビを切ったほうがいい。テレビをやめて…恋をしたらいいですよ。恋をすると、いろいろ考えるし身なりに気をつけるし、脳の働きを活性化します。ホルモンの働きにも影響するんです」
先生も恋、しているんですか?
「その話はまた今度、ゆっくりしましょう(笑)」
- 撮影:福岡耕造