ウクライナ侵攻の後始末 “ロシア5分割解体”のシナリオ | FRIDAYデジタル

ウクライナ侵攻の後始末 “ロシア5分割解体”のシナリオ

夏までにプーチン大統領は辞任 中国が支配する「極東共和国」が誕生 北極圏では遊牧民が独立 イスラム勢力も勃興

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毎年開催してきた6月恒例のテレビ特番『国民対話』を今年は行わなかったことで体調不良は深刻だと見られている

筑波学院大・中村逸郎教授、ジャーナリスト・常岡浩介氏が明かす

2月24日の侵攻から約4ヵ月。ウクライナ東部ルガンスク州の完全制圧に向けて、ロシア軍の攻撃が激化している。

英国防省は6月15日、ロシア軍が同州の要衝セベロドネツクの大半を支配下に置いたとする分析を発表。東部制圧はもはや時間の問題との観測が強まっているが、ジャーナリストの常岡浩介氏は「ロシアの勝利は絶対にない」と断言する。

「東部戦線ではたしかにロシアが巻き返しているが、それは西側諸国によるウクライナへの武器支援などが滞っていることが大きな理由です。他方、ロシアも英国防省によると兵力の3分の1を失うという大ダメージを負っている。より深刻なのは経済的なダメージです。ロシア最大手の銀行『ズベルバンク』の最高経営責任者ゲルマン・グレフ氏は、6月17日、『経済が制裁前の水準に戻るには10年かかる』と発言しています。それくらいロシア経済の疲弊は深刻なのです」

アメリカやNATO諸国は、すでに戦争終結に向けて動き出しているが、ロシア国内も状況は同じだ。ロシア政治に詳しい筑波大学の中村逸郎名誉教授は「9月にロシア各地で行われる州知事選に向けて、プーチンは大統領を辞任し、政権交代する準備を進めている」と言う。

「膨大な戦費と厳しい経済制裁によって経済は破綻寸前で、体制への不満は最高潮に達しています。プーチンは大統領を辞任せざるを得ない状況なので、今後は院政を敷き、影響力だけは維持していくつもりです。そのため州知事選前の、遅くとも8月上旬までには辞任するでしょう。後任には36歳と若い大統領府局長のドミトリー・コヴァリョフを推している。しかし、プーチンの後釜を狙う者は多い。政権移譲に失敗すれば、全く別のシナリオが待っています。それは『ロシア5分割解体』です」

中村氏によると、5つの地域は次のようになるという。モスクワを中心とした現ロシアの勢力で構成される「ロシア正教圏」。中央アジアに隣接する「イスラム教圏」。モンゴルに隣接する「仏教圏」。極北地域にあり、多数の遊牧民が生活している「遊牧民国家」。北方領土を含む極東地域の「極東共和国」だ。

はたしてそんなことが本当に起こりうるのか。取材から見えてきたのは、戦争終結後の新たな世界の形だ。

今なお紛争が続くイスラム教圏

ロシアのムスリム(イスラム教徒)の大多数が暮らすタタールスタン共和国。ここを拠点にイスラム教圏が形成される可能性がある。イスラム教勢力は12〜13世紀から対ロシア戦に明け暮れてきた。記憶に新しいのは、チェチェン共和国のイスラム系独立派武装勢力とロシア軍との紛争だ。血で血を洗うチェチェン紛争は、18〜19世紀から今日に至るまで断続的に続いている。だからこそ中村氏は、「プーチンの唱える愛国主義は、ムスリムには全く通用しない。ロシアの動向次第で、イスラム勢力地域の離反は現実化するでしょう」と指摘するのである。

仏教圏は「汎モンゴル」建国へ

トゥヴァ共和国は、1911年の辛亥革命後、帝政ロシアの支配下に入った。20世紀初頭には「汎(はん)モンゴル」という仏教国建国の動きがあったが、ソビエト連邦時代に仏教寺院が閉鎖・破壊され、僧侶のほぼ全員が流刑や銃殺刑に処されるという悲劇の歴史をもっている。

中村氏は「ここの住民は、そもそもロシア語を解さない」と語る。厳格な仏教徒の地だから、仏教を徹底弾圧してきたロシアに対する愛国心など存在しない。ロシアが弱体化したと見るや、再び独立運動が起こる可能性は十分にある。

資源のために遊牧民たちも独立

ロシアの北極圏からはネネツ族を中心とする遊牧民が離脱する可能性が高い。「ロシアができるずっと以前からの遊牧生活で、モスクワの影響などまったくない」(中村氏)という彼らがロシアの支配下にいる理由の一つが、天然資源開発に関する莫大な補償金だ。ロシア連邦国家統計局資料によると、ロシア全体の’19年の平均月収が733ドル(約10万円)なのに対し、ヤマロ・ネネツ自治管区の平均月収は1551ドル(約21万円)。実に倍以上の開きがある。

遊牧民たちも天然資源の価値に気づいている。ロシアが解体されれば、彼らはより大きな利益を求め、土地の所有権や採掘権を主張し、他国との取引のためにロシアから離れていくだろう。

中国による「極東共和国」支配

日本に一番影響があるのが、極東情勢だ。ロシア解体という事態になれば北方領土を含めた広大な極東地域に中国が確実に手を伸ばす。すでに極東ロシアの人口は、現時点で約20%が中国系と見積もられており、中国企業の進出も著しい。北方領土の海底通信ケーブル敷設に『ファーウェイ』が参画するなど、その例は枚挙にいとまがない。だからこそ、中村氏はこう言うのだ。

「一ヵ所がロシアから離れれば、雪崩(なだれ)を打ってみんなロシアから離れていくでしょう。結局、ロシアはウラル山脈の西側の、ロシア正教を信仰軸とする昔のモスクワ大公国のような国になると思います」

以上が「ロシア5分割解体」の全容だ。日本も決して他人事ではない。各国が終戦後に向け動き出している今だからこそ、北方領土などの外交問題解決のために、真剣に向き合わなければならない。

常岡氏は「戦争で一番得をしたのは中国」と語る。ロシアとの貿易は好調で、天然資源も安く輸入できている
タタールスタン共和国の首都カザン。ムスリム人口は増加傾向で、ロシアの全人口の2割弱まで増えているという
約1億4000万人の人口に対して、仏教徒はわずか0.6%。少数だが、近隣国家と結びつきが強い民族が多い
ネネツ族は1000年以上前から極北地域で狩猟生活を営む。電子機器の普及など、急速な近代化が進んでいる

『FRIDAY』2022年7月8日号より

  • PHOTO共同通信社(プーチン、ネネツ族) アフロ(習近平、モスク) alamy(仏教寺院)

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