地方を転々「出稼ぎ風俗嬢」 違法スカウトと密接関係の特殊背景 | FRIDAYデジタル

地方を転々「出稼ぎ風俗嬢」 違法スカウトと密接関係の特殊背景

ノンフィクション作家・石井光太が家を無くした若者「ヤング・ホームレス」の実態に迫る!

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地方にある風俗嬢の待機場所

現在、日本の地方都市にある風俗店は、出稼ぎ風俗嬢なしでは成り立たないといわれている。

出稼ぎ風俗嬢とは、文字通り全国各地の風俗店へ出稼ぎに行く女性たちだ。

一つの地方都市に数週間、短い場合は数日間滞在して稼ぎ、また別の地方都市へ流れていくか、都会にもどって何事もなかったかのように生活する。住むところは、風俗店の寮。そんな流浪の風俗嬢だ。

実は、こうした風俗店の仕組みを支えているのが、本来は違法であるはずのスカウト会社なのである。そして、このスカウト会社によって、今、地方都市の風俗店はまったく新しい時代に突入しようとしている。

出稼ぎ風俗嬢と、その裏で暗躍するスカウト会社の最前線を追う。

80年代からの求人の変遷

風俗嬢たちのグッズが入った袋

現在、地方都市の風俗店で働くのは、県外からやってきた出稼ぎ風俗嬢がほとんどだ。

後に理由を述べるが、店は出稼ぎ風俗嬢を雇えば、1人また1人と雇わなければならなくなり、最後はキャスト全員が出稼ぎ風俗嬢となる。

そのため、町に10店の風俗店があった場合、8~9店はキャストのほぼ全員が出稼ぎ風俗嬢という状態になっている。なぜ、こうなったのか。

その答えを知るには、まず風俗店の求人の実態を見る必要がある。

80年代くらいまで、風俗店はスポーツ新聞の3行広告をつかって求人をしていた。女性もそこで仕事を探して応募していたのである。風俗店の店長の役割は、いかに3行で魅力ある職場に見せるかだった。

風向きが変わったのは、92年に風俗求人雑誌「てぃんくる」が創刊されてからだった。それまでスポーツ新聞をつかって行われてきた求人が、風俗専門の求人雑誌に取って代わられたのである。

さらに10年ほど経って00年代半ばになると、今度は多くの店が店舗型からデリバリーヘルスへ業態を変え、ガラケーでも閲覧できる店のホームページを開設するようになる。

消毒液などを完備し新型コロナ対策は万全の店内

風俗店は、この店のホームページに求人広告を掲載した。たとえば、女性が「宇都宮 デリヘル」と検索すれば、カテゴリでずらっと店が並んで表示される。そこから自分が働きたいと思う店の求人に応募するのだ。

インターネットの普及は90年代であり、その頃には一般のアルバイトの求人はほとんどネットに移行していた。こうしてみると、風俗店のネット移行は少々遅い気がする。

だが、風俗店を含む夜のビジネスに新しい風が吹き込むのは、昼間のビジネスに比べて5年遅いといわれている。そういう意味では、00年代半ばに、求人がネットに移行したのは、妥当といえるのかもしれない。

問題は、この後だった。

10年代に突入すると、多くの人たちがガラケーからスマホに乗り換えた。普通なら店もスマホ用サイトを開設し、そこで求人をかけるだろう。

だが、スマホ時代のそれは、ガラケー時代と比べて高度なSEO対策が求められるようになる。先の例でいえば、「宇都宮 デリヘル」と検索しただけでは店のホームページが出てきにくいのだ。そのため、SEO対策に費用をかけられない店は、ホームページでは求人が集まらなくなった。

見る側を混乱させる方法

栃木県小山市でデリバリーヘルス「パイ」を経営する長谷田亨(仮名)は、次のように語る。

「もともとデリヘル店がホームページで求人をする場合、見る側を混乱させる要素がありました。店は事務所が1ヵ所しかないのに、お客様を獲得するために、HP上ではいくつもの地域にあるように見せることがあります。

東京でいえば、新宿に事務所があるのに、池袋や上野にあるように見せる。女の子がホームページを閲覧して、上野の店で働くつもりで応募しても、店から事務所は新宿にありますと言われれば、話が違うとなりますよね。

こういうわかりにくさがあった上、スマホ時代になって余計に店を検索しにくくなった。店を検索しづらい、事務所の所在地がよくわからないということで、女の子は店のホームページで求人を探そうとしなくなったのです」

WEB上には、風俗求人サイトというものが存在するが、掲載にはそれなりの費用がかかる。都市部で複数の店を展開するグループ店なら、数百万円を払って大勢のキャストを集めようとするだろう。

だが、地方の個人経営の店にはその費用がない。さらに少子高齢化が進む地方に暮らす女性は、地元の店で働こうとしないので、求人サイトに広告を出したところで、金額に見合うだけの応募が集まらないのだ。

出稼ぎ風俗嬢の「仕事場」

そんな時代の中で次第に大きな力を持つようになったのが、違法なスカウト行為によって女性を集め、店へ紹介するスカウト会社の存在だった。

昔からスカウト会社は存在したが、00年代前半~半ばにかけて職業安定法違反や迷惑行為防止条例違反によって厳しく取り締まられることになった。スカウト行為が見つかれば、逮捕され、罰金が科せられる。

それでも、闇の業者は、需要があれば、警察の目をかいくぐってでもやる。彼らは人材不足に嘆く地方の風俗店に目をつけ、スカウトによって手に入れた風俗嬢に出稼ぎをさせて利益を得ようとしはじめた。

スカウトは違法行為だけあって、手口も様々だ。繁華街の路上や店で女性に声をかける方法は王道だが、最近はSNS駆使したオンライン上でのスカウトが盛んだ。そこでうまく口車に乗せたり、好条件を示したりして、彼女たちを地方の風俗店へ出稼ぎに行かせるのだ。

スカウトが10~15%のワケ

風俗情報サイトのエディターは次のように語る。

「オンラインでのスカウトの手口は、SNSで風俗や水商売をしている女性を見つけ、DMを送って好条件を示し、『今の店よりこっちの方がいいよ』と誘うのが一般的ですね。人気の子であれば、移籍金が支払われることもあります。

また、ホストが副業としてスカウトマンをやっていたり、風俗店やキャバクラの黒服が裏でスカウト会社に人を紹介したりするケースもあります。大きなスカウト会社だと、自社でキャバクラやソフト風俗の店を経営していて、そこに集まる子たちを地方の風俗店へ出稼ぎに行かせることもあります」

スカウトが違法であっても成り立つのは、大きなメリットがあるからだ。

まず、風俗嬢には、スカウトマンという後ろ盾ができる。スカウトマンは、店に交渉して歩合を上げたり、最低保証をつけたりしてくれるし、トラブルがあれば助けてくれる。非常に頼もしい存在なのだ。

逆に、地方の店にしてもスカウト会社を利用すれば、確実にキャストを集められるというメリットがある。むろん、それなりの対価が必要だ。その内訳は、だいたい次のようになっている。

・客の支払い(売り上げ)=1万円

・キャストの取り分=6000円(50~60%)

・スカウト会社の取り分(スカウトバック)=1000円(10~15%)

・店の取り分=3000円(30%)

店は、スカウト会社から紹介されたキャストが稼ぎつづける限り、売り上げの10~15%を支払わなければならない。

これを求人広告費として高いと見るか、安いと見るかは、それぞれだ。ただし、違法行為であるため、書類の上では「顧問料」として処理される。

だが、店にとってスカウト会社の利用は諸刃の剣だ。

一見便利なように見えて、その裏にはスカウト会社の恐ろしい戦略が隠されている。それにはまり込むと、店は倒産するまでスカウト会社から利益をむさぼり取られることになりかねない。

一体、違法なスカウト行為のさらなる裏側で、何が行われているのか。

その生々しい肉声と、翻弄されるキャストたちの人生については【後編】をお読みいただきたい。

後編:女性と店を食い物にする違法スカウトの実情

  • 取材・文・撮影石井光太

    77年、東京都生まれ。ノンフィクション作家。日本大学芸術学部卒業。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに取材、執筆活動を行っている。著書に『「鬼畜」の家ーーわが子を殺す親たち』『43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層』『レンタルチャイルド』『近親殺人』『格差と分断の社会地図』などがある。

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