急増「出稼ぎ風俗嬢」 女性と店を食い物にする違法スカウトの実情 | FRIDAYデジタル

急増「出稼ぎ風俗嬢」 女性と店を食い物にする違法スカウトの実情

ノンフィクション作家・石井光太が家を無くした若者「ヤング・ホームレス」の実態に迫る!

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出稼ぎ風俗嬢の「仕事場」

現在、日本の地方都市にある風俗店を支えている「出稼ぎ風俗嬢」のバックにいる違法なスカウト会社。【前編:出稼ぎ風俗嬢 違法スカウトと密接関係】につづいて、その内幕を見ていきたい。

風俗で働くという点だけでいえば、女性にとって地方へ行くメリットは小さいように思われるかもしれない。都会より地方の方が明らかに客が少ないし、客単価も高いわけではない。なぜ彼女たちは見知らぬ土地へ行き、身体を売るのか。

女性にとってのメリットとして次のようなものがある。

・短期で働いている間、店から「新人」として扱われるので指名が増える。

・スカウト会社が最低保証や交通費などの交渉をしてくれる。

・新人期間が過ぎれば、また別の地域へ行って「新人」として働けばいい。

・顔まで写ったセミヌード写真が広告で使用されるため知人のいない場所で働きたい。

・短期間の在籍のため、リピート客を意識した接客をしなくても良い。

・店側が寮を住む場所として提供してくれる。

エスカレートするスカウトの要求

地方の風俗店は、出稼ぎ風俗嬢がいなくては営業が成り立たない。

スカウト会社はそれを逆手に取り、自分たちが女性を送り込むから、きれいな寮(アパート)を用意しろとか、1日5万円の最低保証をつけろとか、「大型新人」として売り込めなどと要求してくる。だから、出稼ぎ風俗嬢の労働条件がどんどん上がっていく。

店長は店を回していくために、スカウト会社からの指示に従うのだが、そこに大きな落とし穴がある。キャストがすべて出稼ぎ風俗嬢になってしまいかねないのだ。

たとえば、店に10人のキャストがいたとしよう。そのうち、7人が出稼ぎ風俗嬢だったとする。出稼ぎ風俗嬢には最低保証がついているので、店側はそれを回収するために、彼女たちにたくさん働いてもらわなければならない。

客単価が1万円で、キャストの取り分が50%の5000円、最低保証が3万円だったとする。

この場合、店は出稼ぎ風俗嬢に日に最低6人の客を取ってもらわなければ損をすることになる。だから、必死になってフリーの客をつけたり、指名を勧めたりする。

こうした店では、出稼ぎ風俗嬢だけが仕事をもらえ、最低保証のない他のキャストには客がつかないことになる。後者がやめてしまえば、店はさらに出稼ぎ風俗嬢を雇わなければならなくなる。それで瞬く間にキャスト全員が出稼ぎ風俗嬢になるのだ。

出稼ぎ風俗嬢の待機場所

店のキャストが100%出稼ぎ風俗嬢になれば、スカウト会社の力はますます大きくなる。それはスカウト会社からの要求が膨らむことを意味している。最低保証の値上げ、移籍金の請求、寮のグレードアップ……。

こう見ていくと、地方の風俗店がスカウト会社を利用することで、悪循環にはまっていく過程がわかるだろう。

栃木県小山市でデリバリーヘルス「パイ」を経営する長谷田亨(仮名)は、次のように語る。

「今や風俗店は儲からない仕事になっています。客の高齢化、不況、コロナ禍があって、少し前と比べてお客様の数は7〜8割減っている。

それなのに、スカウト会社をつかえば、1人当たり数万円の最低保証などに加えて、店側が高い寮を用意して、清掃から何からすべて面倒をみなければならなくなる。1人のお客様あたり3000円くらいしか得られないのに、そこから店の経費、宣伝費、寮費などを支払っていったら、利益なんてほとんど残りません。

店を回していくために出稼ぎの子をつかっているのに、いつしかそれが重荷になって潰れてしまうお店がたくさんあるのです」

長谷田の店は、小山地区でもスカウト会社をつかっていない極めて珍しい店だ。それが可能なのは、長谷田の努力があるからだ。

彼はSEO対策を必死に勉強して、自らプログラミングを行ってホームページをつくっている。紙媒体への広告も、自分で制作してデジタル入稿したりしている。だからこそ、独自にキャストを集められるのだ。

「仕事場」は消毒液などのケアが欠かせない

一方、多くの店を取り仕切るのは雇われ店長であり、彼らはそこまで努力する必要性にかられていない。ゆえに、スカウト会社を利用することになり、それが仇となって経営が立ち行かなくなる。

地方の風俗業界で、今、スカウト会社に狙われているのが、新規の店舗だ。

古くからある店は、それなりにキャストや常連客がついていたり、スカウト会社を利用することの落とし穴を理解したりしているので、リスクを回避できる。

だが、新規に参入してきた店長は、そうした内情に詳しくないし、独自でキャストを集める力がない。ゆえに、スカウト会社を利用して、初期投資と考えて赤字を許容する。

崩壊へのカウントダウン

これが崩壊へのカウントダウンだ。

風俗不況の現代では、客の数はたかが知れている。それなのに、スカウト会社は出稼ぎ風俗嬢をどんどん送り込み、開業資金を搾り取っていく。どこかで運転資金が底をつくのは必然だ。

地方で新規店の倒産が相次いでいる背景には、そうした裏事情があるのだ。

こうしたあくどいスカウト会社は、違法な商売をどのように行っているのか。

一般的にスカウト会社は、「風俗コンサルティング会社」「人材派遣会社」「イベント会社」などを名乗っている。スカウトによって集めた出稼ぎ風俗嬢を地方に送り込んでいることは隠し、店からは「顧問料」の名目で金をもらっている。いわば、それでマネーロンダリングをしているのだ。

最近、こうしたスカウト会社が自ら風俗店をオープンさせる現象が相次いでいる。

彼らの強みは、豊富な資金力、地方の風俗の情報、豊富な人材だ。彼らは地方の風俗店から利益を吸い上げるだけ吸い上げて倒産に追い込んだ後は、その場所に直営の風俗店をオープンさせる。

スカウト会社にすれば、自分の店で出稼ぎ風俗嬢を働かせるので、10%~15%のスカウトバックは必要ない。最低保証、交通費、寮にかかる費用も、自分たちの裁量でおさえられる。さらにいえば、スカウト事業で稼いだ金を、風俗の売り上げにして資金洗浄することができる。

長谷田は語る。

「今後は、スカウト会社が経営する風俗店が地方で増えていくかもしれません。そうなった時、地方の風俗店のあり方は、今とはガラッと変わってくるはずです。まったく新しい業態やサービスなんかが出てくるかもしれません。

ただ、それでキャストが稼げるようになるかどうかはわかりません。今も専業で食べていけているのはごくわずかで、大半は昼間の仕事との兼業というのが実態ですから」

スカウト会社の組織力をもってすれば、多額の利益をたたき出すことは夢ではないだろう。実際に、地方の老舗店は彼らによって放逐されている。

しかし、風俗が稼げない職業になってから久しい。出稼ぎの女性も平日は昼職をしていて、土日だけ1泊2日で地方に出稼ぎをしているという子も珍しくない。その地域に住んでいたとしても、昼間は普通に働いて夜や休日だけ風俗嬢をするというのが一般的だ。

昔は借金、今は普通に仕事

長谷田は言う。

「昔は借金を返すために必死に働く子がいましたが、06年の賃金業法の改正で年収の3分の1しか借金ができなくなってから、そういう子がぱったりいなくなりました。

今いるのは、昼間は普通に仕事をして、『夜は1人で家にいてもすることがないから風俗で働く』みたいな子ばかりです。大方は、心のどこかに寂しさを抱えている子ですね。店長の僕に昼間の仕事の愚痴をこぼしたり、頭をなでてもらってホッとしたがる。お客様とのボディータッチで安らかな気持ちになる子も多いみたいです。みんな、お金というより、心のケアみたいなものを風俗に求めて働きにきているという感じです」

彼女たちが抱えている孤独の背景には様々な問題があるだろう。だが、それを巧みに利用して、地方の風俗業界を席巻しているのが、スカウト会社なのだ。

スカウト会社は出稼ぎ風俗嬢をつかって、どこまで勢力を伸ばしていくのか。それによって何が変わるのか。

明らかなのは、彼らがやっている違法行為がなければ、今の地方の風俗は成り立たなくなっているということだ。

【募集】

シリーズ「ヤング・ホームレス」では、定住先のない10~40代の人を探しています。車上生活者、ネットカフェ難民、出稼ぎ風俗嬢、寮で暮らしの日雇い労働者、ホテル生活者、店舗生活者、支援施設での生活者など、現在でも過去でも、住居を失った経験のある人の実体験、あるいはその支援をされている方々の声を募集しています。匿名などの条件にも応じますので、著者までご連絡下さい。

石井光太(作家)

ツイッター @kotaism

メール postmaster@kotaism.com

  • 取材・文・撮影石井光太

    77年、東京都生まれ。ノンフィクション作家。日本大学芸術学部卒業。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに取材、執筆活動を行っている。著書に『「鬼畜」の家ーーわが子を殺す親たち』『43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層』『レンタルチャイルド』『近親殺人』『格差と分断の社会地図』などがある。

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