電気自動車普及のウラに「大量の血税」が使われている不都合な事実 | FRIDAYデジタル

電気自動車普及のウラに「大量の血税」が使われている不都合な事実

古いクルマが増税されるのは納得いかない

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日産『サクラ』(左)と三菱『ekクロスEV」。両社のジョイントベンチャー「NMKV」が開発を主導している/photo by アフロ

クルマの世界では、電気自動車の話題が豊富だ。電気自動車は、走行する時には二酸化炭素を含めて排出ガスを発生させず、環境負荷の少ない技術とされる。そこで各メーカーとも、電気自動車の開発と普及に力を入れる。トヨタは2030年までに、世界で1年当たり350万台の電気自動車を販売すると発表した。日産は2030年代の早期に、主要市場におけるすべての新型車を電動化するという。

ホンダは、2040年までに、すべての新車を電気自動車と燃料電池車にすると発表した。ハイブリッドを含めて、エンジンは搭載しない方針だ。電気自動車の普及には、海外の市場とメーカーが特に積極的で、日本も対応している。

そこで日本メーカーも、最近は電気自動車の新型車を発表している。2021年から2022年に掛けて、日産アリア、トヨタbZ4X&スバルソルテラ、さらに軽自動車の日産サクラ&三菱eKクロスEVもデビューした。

この中で注目されるのが、軽自動車の日産サクラ&三菱eKクロスEVだ。軽自動車は税額が安く、大半の車種が国内向けに開発されるから、デザインや機能でも日本のユーザーの共感を得やすい。

そのために2022年に国内で販売された4輪車の内、38%を軽自動車が占めた。国内販売ランキングの上位にも、軽自動車がたくさん並ぶ。ホンダN-BOX、スズキスペーシア、ダイハツタントなどは、販売ランキング上位の定番だ。

そして電気自動車と軽自動車も、相性が良い。電気自動車は前述のように環境負荷を抑えられることがメリットだが、1回の充電で走行できる距離が短い欠点も併せ持つ。これを克服して走行距離を伸ばすには、駆動用のリチウムイオン電池を大型化せねばならない。

ただしリチウムイオン電池の製造時には、二酸化炭素を排出するから、大型化すれば環境負荷が一層増える。電池を大型化すると、ボディも重くなり、モーターを強化する必要も生じる。これも電力消費量を増やす。以上のように1回の充電で走行できる距離を伸ばすと、二酸化炭素の排出量も増えて、環境負荷を軽減する目的が妨げられてしまう。もちろん価格も高くなる。

その点で軽自動車なら、一回の充電で走行できる距離が短くても、不都合が生じにくい。軽自動車は、小さなボディを生かして、主に街中の移動に使われるからだ。午前中に仕事で外出して、自宅に戻ったら充電する。午後に再び買い物に出かけて、戻ったら充電する。このような使い方なら、一回の充電で長い距離を走る必要はない。

そして複数のクルマを所有する世帯が、軽自動車の電気自動車をセカンドカーとして使う場合、遠方への外出にはファーストカーを利用する。この用途なら、一回の充電で100km程度を走れれば十分だ。そこでサクラとeKクロスEVは、1回の充電で走れる距離を180km(WLTCモード)としている。

ちなみにリーフ、アリア、bZ4Xといった3ナンバーサイズの電気自動車では、このセカンドカーの使い方は難しい。リーフのボディは比較的コンパクトだが、それでも街乗り用のセカンドカーとするには大きすぎる。価格も高い。

その点で軽自動車は、セカンドカーとして使えて、「電気自動車は走行可能な距離が短くて価格は割高」という欠点を回避できる。日本で電気自動車を普及させるには、軽自動車は最適なカテゴリーだ。

この事情もあり、サクラとeKクロスEVは、売れ行きが堅調に伸びている。サクラは発表から約3週間で1万1000台、eKクロスEVは先行受注の開始から約1か月で3400台を受注したと発表された。

2021年におけるリーフの売れ行きは、1か月平均で900台少々だ。日本では総世帯数の約40%が集合住宅に住み、自宅に充電設備を設置しにくい事情もあるから、電気自動車を順調に売るのは難しい。そこも考えると、サクラとeKクロスEVの受注台数は注目される。

そしてサクラとeKクロスEVの普及に役立っているのが補助金だ。経済産業省による補助金交付額は55万円とされる。サクラで中級に位置するXの場合、車両価格は239万9100円だから、55万円の補助金を差し引くと184万9100円になる。eKクロスEVのGは、車両価格が239万8000円だから、補助金を引くと184万8000円だ。

これらの実質価格は、日産ルークスハイウェイスターXプロパイロットエディション、三菱eKクロススペースTなどと同等だ。補助金を活用すれば、一般的な軽自動車の上級グレードと同等の負担で、同等サイズの電気自動車が手に入る。

しかも地域によっては自治体からも補助金が交付され、東京都は、電気自動車やプラグインハイブリッドの価格を問わず交付額は45万円だ。仮にその交付を受けられると、経済産業省の55万円と合計して100万円に達する。サクラXであれば、車両価格は239万9100円だが、補助金を差し引いた実質価格は139万9100円だ。デイズのベーシックなXと同等の負担で手に入るから、前述の通り受注台数も急増した。

ただし補助金は、予算を使い切ると終了する。今後の見通しはどうなのか。納期も含めて、東京都内にある日産の販売店に問い合わせた。「補助金の使われ方は分かりにくいが、現時点では、経済産業省、東京都ともに、2022年10月頃に終了すると予想される。そしてサクラの納期も、6月下旬の契約で10月から11月だから、購入直後に補助金の交付を受けられるか、微妙なところだ」。

仮に10月に補助金の予算が使い切られて交付も終わり、11月に登録された時はどうなるのか。補助金の申請では、登録が要件になるから、登録前の申請はできない。この点は経済産業省の補助金を扱う次世代自動車振興センターに尋ねた。

「来年度のことは分からない。仮に来年度にも予算が成立して、同様の補助金が実施されると交付を受けられる可能性もあるが、予算が通らなければ交付も見送られる。また実施されても、補助金の交付額が減額される可能性がある」

サクラとeKクロスEVの場合、経済産業省の補助金は55万円で、そこに自治体の補助金も加わるから、交付を受けられるか否かの差は大きい。従来の経緯を振り返ると、今後も補助金は継続すると思われるが、交付額が減る可能性は高い。補助金の目的は普及の促進で、それが進むに従って、交付額は減らされるからだ。

そうなると現時点での受注は好調だが、補助金が間に合わない可能性が高まると、売れ行きが急落するかも知れない。この対処方法を日産の販売店に尋ねた。

「今は電気自動車を含めて、新車の納期が全般的に長い。そのためにリーフやアリアも、6月下旬に契約した場合、納期が10月から11月になりそうだ。電気自動車の補助金交付額は55〜85万円と高額だから、交付を受けられないと割高な買い物になる。補助金が終了した場合、販売会社がその金額を負担することは不可能だから、最近は納期遅れを心配して、購入を見送るお客様も増えている」

現状では、軽自動車に限らず、電気自動車を購入しにくくなりつつある。プラグインハイブリッドのアウトランダーやプリウスPHVも、経済産業省による同様の補助金が55万円交付される。そうなると補助金の終了が近づくと、プラグインハイブリッドも買いにくい。サクラとeKクロスEVの登場で、電気自動車が一気に普及しそうに思えたが、今後の動向は不透明だ。

「予算を使い切ったら終了」という補助金の仕組みにも問題がある。国は「予算があっての補助金だから、使い切れば終了するのは当然」というが、電気自動車は企業が購入する設備ではない。一般ユーザー、つまり素人が買う商品だから、補助金を交付する時にも混乱を避ける配慮が必要だ。

補助金の裏側も知っておきたい。予算があっての制度だから、それを捻出するために、残酷なことも行われている。

それが古いクルマの増税だ。ディーゼルエンジン車は初度登録から11年、ガソリンエンジン車は13年を超えると増税の対象になり、ガソリンエンジン車の自動車税は約15%増える。軽自動車税については、2倍近い金額まで増税される。さらに自動車重量税も、初度登録から13年、さらに18年の2段階で増税される。

公共の交通機関が未発達な地域では、高齢者が古いクルマを使って通院や買い物をしている。今は新型コロナウイルスの影響で所得が減り、仕方なく古いクルマを使い続けるユーザーも増えた。そのような人達から、多額の税金を巻き上げるのが今の自動車税制だ。

そして電気自動車の減税や補助金の交付は、経済的に困窮するユーザーをさらに苦しめる増税の上に成り立つ。国の言い分は「環境性能の優れた電気自動車は、補助金の交付などによって普及を図り、その損失は環境性能の劣った古いクルマのユーザーに負担させる。そうすることで、環境性能の優れた新車に乗り替えさせる」というものであるからだ。

このような〝悪法〟と引き替えに交付されるのが、電気自動車の購入に伴う多額の補助金だ。苦しみや不幸を生み出してまで、電気自動車を普及させる必要があるのだろうか。

  • 取材・文渡辺陽一郎

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がける。執筆の対象も、試乗記や車両の紹介、メカニズム解説だけでなく、価格設定やグレード構成、リセールバリュー、さらに値引き、保険、税金など、カーライフに関する事柄全般。ヒストリー関連の執筆も行っている。

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