大会開催も決定! 男・山根明がまさかの総合格闘技界に殴り込み!
今年で83歳を迎えるプロボクシング団体『WYBC』会長の山根氏。総合格闘技の新大会設立を果たした胸中を明かす

「昔っから、俺は一流になった選手よりも埋もれている選手を取り上げたいんだよ。どの競技のスポーツでもね、運のええ子がチャンスに恵まれる一方で、埋もれている子も多い。そんな選手たちを日の当たる場所に出してあげたい」
本誌記者を前に、自身の夢を高らかに語るのはプロボクシング団体『WYBC』の会長を務める山根明氏(82)だ。6月20日、同団体のヘビー級王者・高橋知哉(34)と初代『修斗』ヘビー級チャンピオン・エンセン井上(55)とともに、世界最強を決める総合格闘技の大会『SPIRIT(スピリット)』を発足させた山根氏。9月4日には早くも第一回大会が京都・亀岡市で開催される。4試合予定で高橋はメインイベントで登場する。すでに全国の格闘家たちからも「参戦したい」と連絡が寄せられているという。
これまでボクシング一筋の人生を歩んできた山根氏。80歳を超えて、新たに総合格闘技の世界に殴り込みを決めた背景には、どんな想いがあったのか。エンセンと高橋とともに、今の想いを明かしてくれた。
山根「若い世代にチャンスを与えたいんだ。俺としてはね、80歳を過ぎても未だにそれが最高の幸せなんだよ。人間の寿命はわからん。いつこの世を去るかもわからん。俺もそんな年齢にさしかかってきてるから。生きてる間にね、総合格闘技の若い世代のためにね、何かを残したいんだよ」
エンセン「高橋とは不思議な縁があってね、彼が中学の頃から知っている。自分としては、総合格闘技に関することなら何でも協力したいと思っていました」

全てのキッカケは高橋の行っていた慈善活動だったという。
高橋「自分もそうだったんですけど、仕事もない。金もない。だけど暇だけはある。そうなると悪さをしたりするんですよ。家庭環境の境遇で、どうにもならへん。苦労してる子が世の中にはいるんです。京都で悪さしてる、そんな子たちの面倒を見始めたら、徐々に増えて60人ほど集まった。で、僕のジムでトレーニングさせていたんです。『WYBC』に参戦する前は『ボーンクラッシュ』という団体を立ち上げて、自分もメインイベントで出場してました。チケット販売や会場予約、いわゆる興行をすべて自分でやってきた」
そんな活動を通じて知り合ったのが山根氏だった。高橋の活動は、「日の目を見ていない才能に光を当てたい」と言う山根氏の想いにピタリとハマった。
高橋「山根会長は本当に男気に溢れる人です。チケット代とファイトマネーの収入を山根会長に全て渡しますって言ったんです。でも何度持ちかけても、山根会長は『それはいらん』とピシャリ。ホンマ、カッコええ」
山根「若い選手はね、いろんな事情でね、燻っているヤツがたくさんいてると思うんですよ。そんなヤツらを日本中から引っ張ってきて、格闘技でスターになってもらいたい」
大会を提唱したのはエンセンだったという。
高橋「二人の橋渡しをしたのは僕です。僕は選手も運営も経験があるから、選手をやりながら興行を仕切る自信があると言ったら、エンセンさんに『あり得ない。そんなの聞いたことない』って一蹴されて(笑)」
エンセイ「だってそんな二刀流、あり得ないって思うだろ!」
高橋「でも、話したらすぐに賛同してくれて。それでエンセンさんが総合格闘技で新しい大会をぶち上げようって提案してくれた。それからは3人で足並みを揃えてやっていこうとなりました」
9月に行われる『SPIRIT』では、エンセンは主催として名を連ねた。最後に9月の第一回大会に向けた意気込みを聞いた。
エンセン「今の格闘技は勝ち負けが一番。勝ち負けも大事だけど、命かけて根性、心を見せる。それがファンも興奮する。世界中の根性ある選手を集めて、心のぶつかり合い、魂を見せる大会にしたい」
高橋「バチバチの試合をみせます。覚悟して、腹決めてどつき合いしますんで楽しみにしておいてください」
山根「まもなく83歳になるが、私は格闘技が大好きだ。この大会は決して大きくはないが、埋もれている若い世代を取り上げていきたい」
新たな仲間を得て、男・山根の挑戦は続く。

写真:加藤慶