日本の危機を救った リーチマイケルの復調を呼んだ「新たな習慣」 | FRIDAYデジタル

日本の危機を救った リーチマイケルの復調を呼んだ「新たな習慣」

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相手を突き飛ばして突破を図るリーチ。コロナ禍で日本代表に大量の離脱者が出た中、存在感を示した(写真:アフロ)

ラグビー日本代表で、新型コロナウイルスの陽性者が続出。世界ランク2位のフランス代表との2連戦を前に、危機を迎えていた。他方、復調ぶりをアピールするのがリーチ マイケルだ。一時は故障が重なり苦しんだが、所属先の同僚を手本に状態を上げてきた。

スタジアムで歓声をあげても憚られない雰囲気になったからだろうか。あの人がボールを持つと、ファンが一斉に合唱する。

「リーーーーチ!」

2019年のラグビーワールドカップ(W杯)日本大会時、ファンの間で流行った掛け声だ。ウイルス禍に突入して以来、久々の復活を遂げた。

7月2日、愛知・豊田スタジアム。周辺の最高気温が35度という猛暑日にあって、日本代表が世界ランクで8つ上のフランス代表へ挑む。

チームではこの日までに、堀江翔太、齋藤直人、山沢拓也、野口竜司といった主力候補が離脱。抗原検査で陽性が出たためだ。登録メンバーの変更は、試合前日の朝まであった。

それでも予定通りの出場を叶え、持ち味を発揮した戦士もいる。そのひとりがリーチだった。

前半7分頃には、自陣10メートルエリア右中間で味方と強烈なダブルタックルを放つ。その地点の球に別な仲間が絡み、次なる防御の鋭さが増す。日本代表は結局、ペナルティキックを得られた。

10―10で迎えた21分頃にも、ダブルタックルとジャッカルのコンボにリーチが関わる。自陣ゴール前でのピンチを脱する。

続く33分には、空中戦のラインアウトでもボールを奪い返した。円陣を組めば一団を鼓舞した。

最後は23―42と敗れたものの、ノーサイドの瞬間まで走り続けた。

この日はチーム方針もしくは日本ラグビーフットボール協会の意思決定で、リーチの取材対応はなかった。とはいえ本人は、かねて手ごたえを掴んでいた。

「身体の調子は、悪くないです」

振り返ればここ数年は、その「調子」を取り戻すのに苦労してきた。

2019年のW杯日本大会では、直前期に負った股関節の怪我に悩んだ。ロシア代表との初戦における働きが厳しく評価され、続く第2戦目では先発から漏れた。

結局は途中出場を果たし、大会前に世界ランク2位と優勝候補にもあがったアイルランド代表を下した。しかし史上初の8強入りを果たすまで、順風満帆とはいかなかったわけだ。

その後、約2年間で複数のオペを施したものの、2021年のシーズンも本調子には至らなかった。秋には、2014年以降に計4年半も担ってきた主将職から離れた。

リーチの右隣にいるのがマット・トッド。王国・ニュージーランド代表で活躍した経験もあるが、リーチより体は少し小さい(写真:アフロ)

33歳。一介の兵士としてフォワード第3列のポジション争いに挑んだ。果たして通算74度目の代表戦となったフランス代表戦で、見事な働きぶりを示したのだ。

背景にあるのは、新たな習慣だった。

今年1月からの国内リーグワンへ、11年に加入の現東芝ブレイブルーパス東京の一員として挑戦。旧トップリーグ時代の15年度以来となる国内4強入りを果たすまでの間、徐々にパフォーマンスを高めていた。

その背景は。同僚の三上正貴が証言する。

三上は東海大学時代からのリーチの同級生。2015年にはともに日本代表として、W杯イングランド大会で歴史的3勝を挙げた。

旧知の友はリーチについて「それが(好調の)原因かはわからないですけど」と前置きをしつつ、感染症対策のため非公開とされた練習時の様子を明かす。

「全体練習にプラスして、マット・トッドとフィットネス、コンタクト(の練習)をしています」

名前が挙がったトッドは、リーチと同じフランカーのポジションを務める34歳。ラグビー王国のニュージーランド代表として、25度の代表戦に出てきた。

身長185センチ、体重104キロのサイズは、リーチよりもそれぞれ4センチ、9キロずつ下回る。しかし、地面のボールへ絡んだ際の強さ、運動量、相手に掴まれた際の粘り腰が際立つ。

リーチより体格に恵まれないなかでも世界トップクラスに躍り出たこのタレントを、ブレイブルーパスのトッド・ブラックアダーヘッドコーチは「ロールモデルになれる」と信頼する。リーチもトッドを、「僕はいつも彼のプレーを見て、学んでいます」。いわば師匠と見立てた。特に今季中盤以降は、三上の言うようにトッドの自主練習に付き合った。

土日の試合に向け、週の前半には心拍数の上がる「コンディショニング」をするのがトッド流だ。リーチは自身の故障が癒えたのもあり、そのルーティーンに倣った。

やがて、本人は好調の要因を聞かれるたびに「練習量が、増えたと思います」。6月3日からの日本代表の宮崎合宿でも、1日複数回のタフなセッションに前向きに挑めた。

トッドもまた、同世代の日本代表戦士に感銘を受けた。

「リーチのように、ワールドクラスでありながらとても謙虚で努力を続けている選手は素晴らしい。そもそもブレイブルーパスの選手は、お互いに高め合う意識が高い」

フィジーとニュージーランドにルーツを持つリーチは、15歳で初来日。札幌山の手高校にいた頃には、母国ニュージーランドにあっては珍しい地道な基礎反復練習を重ねた。

少なくともアスリートとしては、苦しい状況を乗り越えようとするのが性に合っているのかもしれない。

「もう、(自分は)年もいっているし、(周りには)若い人も増えてきている。負けないように、小さなことから頑張っていきたいと思っています。まずは自分にフォーカスして、(日本代表に相応しい)資格を得るのが大事です。経験だけで(チームに)いるのはよくない」

視線の先には、2023年のW杯フランス大会がある。勤勉であることをやめないベテランは、自身4度目となる大舞台行きを目指す。

若い選手も出てきているが、来年のW杯も2015年W杯で歴史を変えたリーチと稲垣啓太(右)らが頼みの綱となりそうだ(写真:アフロ)
  • 取材・文向風見也

    スポーツライター 1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとして活躍。主にラグビーについての取材を行なっている。著書に『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー 闘う狼たちの記録』(双葉社)がある

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