今この瞬間にも…日本を襲う「直下型&アウターライズ地震」の恐怖
東日本大震災から11年 太平洋プレートの活発化 石川県能登地方での震度6弱、熊本県での震度5弱など頻発する大きな揺れ 南海トラフ地震より前に警戒すべきこと
「日本列島を東から押している太平洋プレートの動きが近年活発になっており、この影響で大地震の前兆的な地震が日本各地で頻発するようになってきています」(立命館大学環太平洋文明研究センター・高橋学特任教授)
6月19日午後3時過ぎ、石川県能登地方の珠洲(すず)市で震度6弱を観測するマグニチュード(M)5.4の大規模な地震が発生した。また、その1週間後の26日には、’16年に起きた熊本地震の震源近くである熊本県美里町で、M4.7の地震が起き、震度5弱を記録した。
「太平洋プレートに押されて、玉突き的に北米プレート、フィリピン海プレートもこれまで以上に動いています。結果、日本列島各地でひずみが溜まり、あちこちがバリバリと割れて地震が起きている状況なのです」(高橋教授)
実際にM4以上の地震は6月だけで全国で50回(上図表参照・6月27日時点)起きているが、その中で注意すべき地震活動として挙げられるのが、今回の石川県能登地方の地震であろう。M5.4の地震が起きた翌20日にもM5.0の地震が起こっている。
「今、能登地方で起きている地震はいわゆる群発地震ですが、M5.4、5.0の地震も一連の群発地震活動の一つと考えられる。群発地震は地殻が大きくひずんでいるために起きる、ということがわかっています。ですから、地震活動が今のように続く場合、同規模の地震が再び起きる可能性はあります」(東北大学災害科学国際研究所・遠田晋次教授)
また、高橋教授は北陸地方を中心にM6.5~7.5の直下型大地震の危険性を指摘する。
「北海道や東北地方は太平洋プレートの力で西方向に、西南地方はフィリピン海プレートによって北のほうに押されるため、日本列島は逆”く”の字型となっています。結果、鳥取から北陸地方・新潟、近畿地方、岐阜、愛知辺りにひずみが溜まりやすい。今回の能登の地震はその象徴的な事例です。太平洋プレート、フィリピン海プレートの動きが活発になっている以上、この地域や周辺でいつ巨大な直下型地震が起きても不思議ではない」
最近の地震活動でもう一つ危険な兆候を見せているのが台湾から沖縄本島にかけての海域での地震だ。震度は2程度だがマグニチュードでは5を超える地震がいくつも起きている。
「南海トラフの延長にある琉球海溝付近で中規模の地震が目立って増えてきています。原因はフィリピン海プレートの活動が活発になったため、かなり近い将来、首都圏直下や南海トラフ地震と連動する形で琉球海溝や沖縄トラフで海溝型の地震が起きる可能性がある」(高橋教授)
一方、これら二つのほかに、東北地方の沖合では、’11年の東北地方太平洋沖地震に連動する大地震の発生が懸念されるという。
「アウターライズ地震と呼ばれる巨大津波を引き起こす可能性の高い地震です。海溝型の大地震に連動して起こりやすい地震で、沖合の太平洋プレートがちぎれることによって起きます」(高橋教授)
この地震は本震よりも規模が小さくなることが予想される。しかし、それでもM8.0程度の地震にはなるという。高橋教授が続ける。
「インド洋大津波を起こしたスマトラ・アンダマン島沖地震が’04年。その8年後の’12年にM8.6のアウターライズ地震が起こっています。東北地方太平洋沖地震が’11年ですから、いつ来てもおかしくないと思います」
’11年の東日本大震災以降、日本の防災に対する意識・技術は格段に向上した。しかし、来(きた)る巨大地震にはさらなる備えが必要だ。

『FRIDAY』2022年7月15日号より
PHOTO:郡山総一郎 幸多潤平