安倍元総理銃撃事件直後の「自民党本部」で何が起きていたか | FRIDAYデジタル

安倍元総理銃撃事件直後の「自民党本部」で何が起きていたか

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自民党本部前。普段とは比べものにならないほどの厳戒態勢が敷かれていた

普段は活気ある場所が重苦しい空気に覆われていた。全国に散った職員の空席が目立つ中、残された職員はNHKを呆然とした表情で眺め、虚空を見つめていた。

「本日11時半頃、安倍晋三元総理が奈良市で街頭演説中、銃で撃たれ、心肺停止の状態で搬送されました」

画面から、繰り返しそう流れるが、肝心な安倍氏の容態がわからず、不安は隠せない様子だ。現在の総裁はもちろん岸田文雄総理だが、史上最長の通算8年8ヵ月間に渡って総理総裁だった安倍氏の存在感は自民党にとって非常に大きい。そんな、いわば”主”の「非常事態」とあって、この場所も普段とまったく違う空気に包まれていた。

7月8日午後、千代田区永田町にある自民党本部は刺々しい雰囲気だった。普段は警官2名、党の守衛2名でガードする入り口に大柄なSPの姿もあった。SPは門の前で立ちふさがり、エントランスに向かう記者を睨めつけるような目線で追った。顔なじみの守衛も記者証がよじれ、写真が向いていないことを注意してきた。普段と比べものにならないほどの警戒状態であることがわかる。

1階のエントランスには、50名以上の報道陣が待ち構え、中には海外の通信社の記者の姿もあった。党幹部が入り口に姿を現すと、瞬時に囲み、コメントをとった。

「テロなら許せない。絶対に許せない。生きていていただくことを願う」(高市早苗政調会長)

「民主主義の日本において、選挙期間中にこのような蛮行があるということは絶対許してはならない」(下村博文前政調会長)

遊説中の想像外の出来事に勇ましい言葉から不安が見え隠れした。

入り口に座る旧知の受付の女性が記者に聞いてきた。

「その後の容態は聞いていますか…?」

記者のスマホには未確認ながら「死亡が確認」「株式市場が閉じたら発表」などの情報が寄せられていたが、真剣な眼差しを向けられると、「報道以上のことはわかりません」と返すのが精一杯だった。

静まり返る自民党本部前

4階には選挙を司る幹事長室がある。全国から舞い戻った幹部が入室し、対応を協議。17時過ぎ、茂木敏充幹事長が姿を現した。

「強い怒りを覚えています。言論が暴力によって封殺されることはあってはならない。選挙が行われている最中、今回のテロ行為は民主主義に対する挑戦である」

そう苛立ちを隠さずに述べた。記者団から、翌日9日の最終日に向けて、問われると、またも苛立ちを隠すことなく、強い口調で語った。

「暴力には屈しないという断固たる決意の下、選挙活動は予定通り進める」

この時、ほとんどの報道陣は安倍氏の容態についてはわからないままだった。安否が不明のまま選挙活動を続けることに疑義を漏らす記者もいた。

実はこの時すでに安倍氏は亡くなっていたことがわかるのは、しばらく経ってからのことだった。

退陣後も93名の最大派閥の領袖として岸田政権の運営にも影響を与えていた。事件の背後関係がわかるまで表立っての動きはないだろうが、安倍氏亡き後、清和政策研究会の跡目争いが起こるのは必定だ。

参院選後の「最大の政局」として、140選挙区の区割りを見直す「10増10減」の改定に岸田総理は乗り出すこととなろう。山口県は小選挙区が4から3に減り、安倍元総理の4区が林芳正外相の3区の一部を取り込む形で「新3区」となる予定だ。後継者のいない安倍家はこのまま林家に譲ることとなるのか。

またSPが見守る演説中の凶行でもあり、警察トップの警察庁長官の更迭も視野に入る可能性もある。安倍氏の非業の死はこの参院選、霞が関、そして今後の政局を大きく揺るがしていく。

SPはあたかも罰を受けるかのように上下黒のスーツ姿で汗を拭うことなく立ち続けていた。

  • 取材・文岩崎大輔

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