水不足? 豪雨?「早すぎる梅雨明け」で今夏起こる「意外なこと」
6月の暑さがもう一度やってくる可能性
異例の早さでの梅雨明けになり、猛暑日が続いたかと思えば、台風4号で大雨がもたらされるなど、不安定な天気が続いている。7月、8月はまた猛暑になるのだろうか。
「今年は太平洋高気圧が平年よりも北で強まり、さらに太平洋高気圧よりも上空にあるチベット高気圧も平年より北で強まる予想です。この2つの高気圧に覆われて、日本列島は西日本から東日本、さらに北日本でも気温が高くなるでしょう」
こう言うのは気象予報士の池田沙耶香さん。
今年は6月中に40℃を超えたり、東京でも過去最長の連続猛暑日が9日続くなど、記録的な暑さとなったが、その暑さがもう一度やってくるかもしれないと言うのだ。

進路の定まらない台風。ゲリラ豪雨も多発する可能性が
しかも、ラニーニャ現象が発生している影響で、通常より日本に近い、日本列島の南の海上で積乱雲が発生しやすい状況になっているのだとか。
「台風4号のように、フィリピン付近で発生しやすくなるかもしれません。そうなると、台風発生後すぐに沖縄方面に近づき、影響が出ることになってしまいます」
しかも、その台風は進路が定まりにくいのだと言う。
「台風は太平洋高気圧の縁に沿って進みます。太平洋高気圧が西日本まで張り出していれば、台風をブロックしてくれますが、今年は通常より北へ張り出しそうです。そのため、太平洋高気圧の風に乗り切れず、ふらふらと複雑な進路をとることになるかもしれません」
台風4号は速度が遅かったが、このときのように、ふらふらといつまでも日本付近にとどまっている可能性もあるのだ。
「温暖化もあって、気温の高い傾向が続いているため、一度に降る雨の量が多くなっています。夏の局地的な短時間の大雨の頻度も多くなりそうですし、激しさも増すことが予想されます」
なんと、ゲリラ豪雨が何度も起こりそうだと言うのだ。

「天気予報で『大気の状態が不安定』などの言葉を聞いたら、天気が急変する可能性があります。実際に雨が強まってきたら『キキクル』で現在どの程度危険なのかをチェックし、避難の参考にするといいでしょう」

ラニーニャ現象×太平洋高気圧とチベット高気圧のダブルパンチ…記録更新の可能性大
でも、悪いことばかりではないはず。早く梅雨明けしてしまったために、水不足が心配されたが、台風4号で解消されたところも多いのでは?
「高知県の早明浦ダムでは台風4号の影響で100㎜を超える雨が降ったおかげで、取水制限は解除されました。しかし、岡山県の旭川水系では流域に降った雨が少なく、第一次取水制限を継続しています。台風による水の流れ込みは一時的なものなので、しばらく降らないと、すぐに取水制限が始まると思います」
2010年と2018年も暑かった。何しろ2010年の今年の漢字では「暑」が選ばれ、2018年の新語・流行語大賞では「災害級の暑さ」がトップテンに選ばれたくらいだ。
過去113年間で夏(6~8月)の平均気温がもっとも高くなった2010年は、今年と同じくラニーニャ現象が暑さの一因と考えられ、2018年は、太平洋高気圧とチベット高気圧が日本付近に張り出したことで気温が上昇。7月23日には、埼玉県熊谷市で最高気温41.1℃を、北陸で観測史上初めて40℃以上を記録した。
今年はラニーニャ現象と、太平洋高気圧とチベット高気圧のダブルパンチ。2018年の記録をさらに更新することになる可能性もありそうだ。
気になるのは農作物への影響。2010年は、猛暑によって野菜の生長が遅れ、農林水産省の小売価格調査によると、トマトやネギは4割以上、ナスは約3割、レタスやジャガイモは約2割平年より高かった。さらに青森県陸奥湾ではホタテが、北海道の厚岸ではカキが大量死。富山市ファミリーパークでは、飼育していたフンボルトペンギンが脱水症状のため13羽中5羽が死亡するなど、人間以外にも影響を与えた。
今年もすでに「暑さのためブタの食欲が落ち、体重が増えない」といった声が養豚業者から聞こえている。
電力も心配だ。
2010年7月23日には東京電力の1時間の最大電力量が5999万キロワットになったのをはじめ、各電力会社で記録が更新された。
そうでなくても、物価が上昇し、電力不足から節電が言われている今、これ以上暑くなったらどうなるのだろう。無事に夏をやり過ごせるよう、祈るばかりだ。
池田沙耶香 広島県出身。2015年に気象予報士資格を取得。「あさイチ」(NHK総合)、「ジェーン・スー生活は踊る」「たまむすび」「荻上チキ・Session」「5時のニュース・天気予報」「蓮見孝之 まとめて!土曜日」「土曜ワイドラジオTOKYO ナイツのちゃきちゃき大放送」(TBSラジオ 火・土)で気象情報を提供している。
取材・文:中川いづみ