渋谷、日比谷、横浜、由比ガ浜…決死のフォトルポ「溶ける首都圏」
「天気がよかったので海に来たんですけど、日陰がないと干からびそうです……。7月になったばっかでこんなに暑くて、どうなっちゃうのって感じ……」
由比ガ浜

由比ガ浜(神奈川県鎌倉市)に海水浴に来ていた20代の女性は、パラソルの下でぼんやりと遠くを眺めながらぼやいた――。
埼玉県熊谷市では7月1日に40度を記録し、東京都内でも10日間にわたって30度超え。首都圏の各地では、暑さにあえぐ人々の姿が見られた。
7月1日、由比ガ浜では3年ぶりの海開きが行われた。多くの海水浴客でにぎわっていたが、冒頭の女性のようにぐったりした様子の人も目立った。由比ガ浜で2つの海の家を経営する寺西良将さんが言う。
「例年より客は多いのですが、暑すぎたため日陰の席が争奪戦になりました(笑)。これまでは焼きそばが売れ筋でしたが、今年は冷麺が人気ですね。今後は冷たい食べ物や屋根のある席をなるべく用意したいところです」
6月28日、横浜市では、「灼熱の参院選」が繰り広げられていた。午後4時にJR港南台駅前で街頭演説に立った自民党の三原じゅん子候補は汗で化粧がはがれ落ちそうになり、応援に駆け付けた菅義偉前首相の高級シャツは身体にピッタリとはりついている。その周囲では、マスク・黒スーツで身を固めたSP達が滝のような汗を流しながら周囲を警戒していた。
異常な暑さに命を落とす人もいる。浅草・上野地域で14年にわたって路上生活者に炊き出しや物資の支援を行う「ひとさじの会」の吉水岳彦さんが語る。
「暑さがひどい年には冷却ジェルシートなどを配っているのですが、6月からこんなに気温が高くなるとは思っていなかったため、対応が間に合っていない状態です。残念ながら、支援していたホームレスの方が一人、熱中症とみられる症状で亡くなってしまいました。日陰や公共施設で涼むしかなく、暑さによる睡眠不足もあったと思います」
なぜこんなにも暑いのか。気象予報士の森朗(あきら)氏が解説する。
「太平洋高気圧とチベット高気圧という2つの強力な高気圧が日本上空を覆ったことが原因です。今は高気圧が弱まって少し暑さが落ち着いていますが、8月にかけて再び高気圧の勢力が強まり、6月末から7月頭のような40度超えの猛暑が続くことが、複数回にわたって起こる危険性があります」
6月末には東京都千代田区や府中市で猛暑が原因とも指摘される道路の陥没が起きた。暑すぎる夏による異常事態は、今後さらに頻発するかもしれない。
竹下通り
7月2日。東京・原宿の竹下通りは炎天下にもかかわらずにぎわっていた。ハンディファン購入を悩む人の姿も。

熊谷
7月1日、埼玉県熊谷市で最高気温が40度を記録。百貨店前の看板に最高気温が大きく張り出されていた。

清水坂公園
7月2日。東京都北区の清水坂公園で水遊びをする子供たち。冷たい水が流れ落ちるたびに大はしゃぎだった。

渋谷
7月2日の東京・渋谷。8日連続の猛暑日を記録し過去最長にならんだ。日傘を手に歩いている人が目立つ。

日比谷公園
7月1日、電力ひっ迫を受けて噴水が停止していた日比谷公園(東京都千代田区)。人影は見られなかった。

港南台駅前
6月28日。応援に駆けつけた菅義偉前首相は照りつける西日に顔を真っ赤にしていたが相変わらずの無表情だった。


由比ガ浜
7月2日。あまりの暑さに帽子で顔をあおぐ女性(右)。強い日差しに、二人ともサングラスが手放せない。

上野動物園
7月3日、午後4時ごろ。眠るときは片足で立っているというフラミンゴも、この暑さではうずくまっていた。

『FRIDAY』2022年7月22日号より
PHOTO:田中俊勝(由比ガ浜) 鬼怒川毅(竹下通り、清水坂公園、日比谷公園、港南台駅) 時事通信社(熊谷、渋谷)