190㎡だけどエアコンは2台だけ…「最強の節電一軒家」を訪ねる | FRIDAYデジタル

190㎡だけどエアコンは2台だけ…「最強の節電一軒家」を訪ねる

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「エネルギーをいかに使わないか」を考えた家 

東京で初の連続猛暑日9日を記録。熱中症で救急搬送される人も、6月26日までの1週間で、全国で4551人を数えた。その多くが室内で倒れたという。電力不足が懸念され、節電が叫ばれるなかでの猛暑。いったいどうすればいいのかと思うが、そんな状況の中で一つの答えとなる家がある。武蔵野美術大学建築学科教授の持田正憲氏の自宅だ。

約190㎡、56坪の広々とした家。ほとんど仕切りはなく、冷暖房費がかかりそうに思えるが、

「この家にあるのは、夏用のエアコンと、冬用のエアコンの2台だけ。以前、2DK、60㎡の家に住んでいましたが、そのときと比べて、光熱費はほぼ同じです」 

なぜ、そのようなことが可能なのか。

「この家は、自然の力を取り入れたり、きちんと防いだりすることで、エネルギーをいかに使わないか考えて建てられているんです。そのために断熱性能を上げ、庇により夏の日射を遮り、冬の日差しを取り入れ、熱交換システムによって換気で失われるエネルギーをできるだけ少なくする。それによって、夏も冬もエアコン1台だけを動かすことで快適に過ごせるんです」

一般的な住宅の壁に入れられている断熱材は50~100㎜、屋根には100~150㎜だが、持田氏の家の壁には300㎜、屋根には400㎜の断熱材が入れられているとか。窓はすべて樹脂製サッシの3枚ガラス。家を厚い断熱材で包み、窓から熱が逃げたり、入ったりするのを防いでいるという。

「この家は南向きなのですが、庇を長くすることで、高い位置から差し込む夏の日差しを遮り、低い位置から差し込む冬の日差しを室内に入れることができるのです」 

庇が長く、夏の直射日光は遮り、冬の日差しを取り入れることができる

義務化された省エネ法は「20年前の基準」

日本ではシックハウス対策として、2時間に1回室内の空気を入れ替えることが義務化されている。コロナ対策で、現在はもっと頻繁に換気することが推奨されているが、換気をすることで、夏はせっかく室内を冷やしても、夏の暑い外気を室内に入れることによって、室温が上がってしまい、逆に冬は温めた室内の空気を外に捨てなければならない。室温を適温に戻すために、電気代がかさんでしまう。

「この家に導入した熱交換システムは、熱交換の効率が90%。そのため、たとえば冬、室内温度が20、外気が0のときは、ふつうだったら20の空気を外に出してしまいますが、熱交換システムによって0の外気を18にして室内に入れるので、2分暖房するだけでいいんです。逆に夏は外気が36、室内温度が26のとき、外気を27にして室内に入れるので1分だけ冷やせばよくなるんです」 

こうした工夫によって、空調費80%減を実現しているのだ。

エアコンの設置の仕方にも工夫がある。冬は床面を温めるよう、一般的な壁掛形エアコンを半分床下に埋めて、床下に向かって空気を吹き出し、各部屋に作った吹き出し口から、温かい空気が出るようにしている。

夏には、屋根裏の小部屋に設置された夏用エアコンによって上から冷たい空気が送られるように部屋の上に吹き出し口が作られている。

夏と冬、空気を送り出す場所を変えることで効果的に室内を温めたり、冷やしたりすることができるのだとか。

工夫がいっぱいの持田邸。しかし、持田氏によると、CO₂削減のために冷暖房に頼らない住宅として、持田邸レベルの住宅性能は、ヨーロッパではふつうなのだという。

先日、日本でも住宅の省エネ法が成立したが、

「今回の基準は平成11年に提案されたものとほぼ同じ断熱性能です。すでに20年前にできた基準を義務化しただけ。断熱性能にはレベルがあり、我が家はいちばん厳しいレベルに合わせて作っていますが、現在の省エネ法では、世界基準には遠く及びません」 

冬は、半分床下に入れたエアコンから、床下を通って暖かい空気が室内に流れ込む
リビング、トイレ、洗面所などあらゆる場所に吹き出し口を設け、ここから温かい空気が流れ出る仕組み。これにより冬は家中が同じ温度に保たれる
夏はもう1台のエアコンから、天井近くに設けられた吹き出し口から冷たい空気を送り込む。夏冬各1台のエアコンで190㎡の室内は快適な温度になる

「すだれ」と「内窓」。これで省エネ性能は一気に上がる

持田邸がすぐれているのはわかった。しかし、我々はどうすればいいのだろう。猛暑の中、エアコンの温度を下げるくらいしかできることはないのだろうか。

「いちばん簡単にできるのは窓です。家に入ってきたり、出ていく熱のうち6~7割は窓から。夏の暑い日差しを遮るためには、窓の外から日射を遮るのがいちばん有効。すだれを下げればいいのです」

おお、これならすぐできる。

「余裕があれば、窓の内側に窓をつけるのもおすすめです。2枚ガラスの内窓をつければ、すでについている窓ガラスを合わせて3枚ガラスになるので、それだけで一気に断熱性能が上がります」

断熱性能のいい家で暮らすことは、省エネだけではなく、健康のためにもいいという。

「寒い冬、室温は22でも、体の近くに冷たいガラスや壁があると、体を芯から冷やしてしまう。夜、布団をかけて眠るとかいですが、暖房を入れなければ、室温は低いままです。その空気が呼吸により体の中に入ると、体を中から冷やしてしまう。慶応義塾大学理工学部伊香賀俊治教授の研究によると、断熱性能の悪い家から、良い家に移った場合、気管支喘息やアトピー性皮膚炎が改善されたり、高血圧になるリスクが抑えられるなどのデータもあります」

結露によってカビが発生すると病気にもなる。樹脂サッシの複層ガラスにすれば、結露も防げる。

ドイツのパッシブハウス研究所により、1991年に確立された住宅性能基準に合致した住宅は「パッシブハウス」と名付けられ、持田邸もパッシブハウス。最近ではパッシブハウスを建てる人たちも増えているという。

「私の家はパッシブハウス認定を取得しています。パッシブハウスとなると、暖房を使わずに、冬の朝、外気温度が氷点下であっても、家の隅々まで室温は20を下回りませんし、夏は弱運転で24時間、快適な温度を保つことができます。

ドイツでは断熱性能のいい家に改修するのに補助金を出しています。そのおかげで改修する人が増え、工事をする地域の工務店は仕事が増えて、税収が上がる。また、これにより省エネが進めば国外からエネルギーを輸入することが減り、支払いが減る。最終的には補助金以上に利益が出ています。 

日本では9月30日まで『夏の節電チャレンジ』として節電するとポイントがもらえるというキャンペーンを行っているようですが、我慢をして節電するようなことも考えられます。来年、もっと節電が必要になったら、今年以上に我慢しろ!ということになってしまい、持続性がありません。そんなことより、ほかにやるべきことがあるように思います」

夏の日差しを遮るためにスクリーンを設置。すぐ真似できる夏の省エネ法

持田正憲 武蔵野美術大学建築学科教授。’96年 工学院大学工学部建築学科卒業後、設備設計事務所、組織設計事務所での設備設計実務を経て、’18 MOCHIDA建築設備設計事務所を設立。建築と環境・設備の融合、建築と自然の共存、建築と人間の新しい環境をテーマに研究を行っている。設備設計を担当したおもな建築作品に、山形エコハウス、ROGIC-ROKI Global Innovation Center-、青森県黒石市立図書館など。

  • 取材・文中川いづみ撮影各務あゆみ

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