安倍氏銃撃事件 セキュリティのプロが語る「警備の致命的な欠陥」 | FRIDAYデジタル

安倍氏銃撃事件 セキュリティのプロが語る「警備の致命的な欠陥」

総力取材 多くの目撃者が記録した犯行の一部始終ーー

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凶弾に斃(たお)れた安倍元首相。「弾丸が貫通した首と左胸付近から出血していた」(すぐ近くにいた選挙スタッフ)
凶弾に斃(たお)れた安倍元首相。「弾丸が貫通した首と左胸付近から出血していた」(すぐ近くにいた選挙スタッフ)

その日、現地で選挙取材していた新聞社のカメラマンは「場所取りの段階から違和感を感じていた」と言う。

「天皇皇后両陛下の来県を取材したことがあるんですが、全然違うんです。あきらかに警備が手薄。私が大和西大寺駅に着いた10時の時点で5〜6人。自民党最大派閥のドンなのに、大丈夫かなと思っているうちに演説が始まって……」

途中、奈良市長の仲川げん氏(46)が駆け付けてもSPは増えなかった。

「市長についたSPは1人だけやったんちゃいますかね。安倍さん(晋三元首相・享年67)にも1人。ジッとせず、安倍さんの周りをウロウロ動いていました」(自民党関係者)

1年以上かけて凶器となる手製の銃を準備。前日まで試射を重ね、遊説の1時間半前から会場の下見をしていた山上徹也容疑者(41)とは対照的だった。

安倍元首相の演説が始まると、山上容疑者は会場周辺を移動。死角を見つけると、手製銃を抜きながら車道に進み出て、躊躇(ちゅうちょ)なく引き金を引いた。

現場は騒然。「救急車を呼べ」「AEDを」との声が飛び交った。以下、近くにいた選挙スタッフの証言だ。

「1発目の銃声で振り向くと、2発目の弾丸が発射され、首を貫かれて安倍さんは崩れ落ちた。すぐに近寄るとまだ息はあり、『うぅ、うぅ』ともがいていたが、喉をやられたのか声にならない。看護師が持ってきたAEDを急いで取り付けたが、動かない。すでに心臓が止まってしまっていたからです。同時に安倍さんの身体の力が抜け、顔がどんどん白くなっていった……」

山上容疑者はその場で取り押さえられたが、救急車が到着したのは約6分後。元首相はもう動かなくなっていた――。

奈良県警OBが唇を噛む。

「会見で鬼塚友章本部長は警護担当者の数を明かしませんでしたが、どうも20〜30人だったようだ。元首相クラスの要人なら倍以上は必要。明らかな失態だ」

陸上自衛隊と米海兵隊でセキュリティに関するキャリアを積み、アメリカでセキュリティコンサルタントとして活躍する越前谷儀仁氏は「警護計画には致命的な欠陥がいくつもあった」と嘆く。

「最大のミスが演説場所。背後がガラ空きになっているうえ、バスや車が走っていた。動くものがあることで監視対象が増え、不審者の発見が遅れた。交通規制できない事情があるなら、防弾車両を背後に置いておくべきだった。救急車両を近くに配置していなかったのも疑問です。人員も足りない。演説者のすぐ傍に身を挺して守る要員が3人。聴衆の間を常に移動しながら不審者に目を光らせる外周警備員がブロックごとに3〜4人必要です。映像を見た限り、まったく足りていない。30%ぐらいの警戒度だった。犯人が使った凶器は火縄銃に似た構造で連射できず、射程距離も短い。通常の警護体制であれば、問題なく守れたはずです」

憲政史上最長政権を率いた男は、その最期も歴史に刻まれることとなった。

ドクターヘリで病院に担ぎ込まれたのは午後0時20分過ぎ。心肺停止状態となって1時間近く経過していた
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爆発音に振り向いたところを2発目が襲う。被弾でシャツの右襟が激しく揺れた後(左端)、安倍元首相は左胸を押さえながら、ゆっくり崩れ落ちた(Twitterより)
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7月9日午後、奈良から夫を連れ帰った昭恵夫人。葬儀では号泣しながら数分間、遺体に頬ずりしていたという
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通夜に参列した岸田文雄総理(64)。派閥は違うが、安倍元首相は後継者として目をかけ、重要ポストに起用した
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葬儀会場の増上寺(港区)にできた黒山の人だかり。安倍元首相の棺を乗せた霊柩車が通ると、拍手で見送った
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『FRIDAY』2022年7月29日・8月5日号より

  • PHOTO共同通信社(1枚目) 朝日新聞社(ドクターヘリ) 蓮尾真司

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