コント職人・かが屋が明かす「他事務所芸人との交流が生む刺激」 | FRIDAYデジタル

コント職人・かが屋が明かす「他事務所芸人との交流が生む刺激」

2022 M-1、KOCへの道:「かが屋」【後編】

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『有吉の壁』(日本テレビ系)、『千鳥のクセがスゴいネタGP』(フジテレビ系)といった人気番組だけでなく、今年から冠番組『かがやけ!ミラクルボーイズ』(テレビ神奈川)もスタートし、勢いに乗るかが屋の加賀翔と賀屋壮也。バラエティーでも人気だが、やはり彼らの真骨頂はネタや舞台にある。 

5、6月に有観客としては3年ぶりとなる単独ライブ「瀬戸内海のカロ貝屋」を開催し、盛況のうちに幕を閉じた。そのほかにも様々な劇場に顔を見せる彼らは、どんな笑いを追求しているのだろうか。単独ライブでの意外なエピソード、吉本興業の劇場に出演するメリット、大阪公演の反応の違いで感じたこと、今後やってみたい笑いなど、外からは見えないコンビの実情に迫る。 

今年から冠番組もスタートし、勢いに乗る「かが屋」の加賀翔(写真左)と賀屋壮也(同右)(撮影:スギゾー)

僕が発信しないと加賀くんのすごさは誰もわからない 

――5月の単独ライブ「瀬戸内海のカロ貝屋」を拝見して、今ここまで人の機微で笑わせるコント師はいないなと思いました。アドリブの笑いに逃げないイメージが強いですけど、実際のところはどうなんですか? 

加賀:うわ、これ賀屋さんどうですか? 

賀屋:それで言ったら、私はいらんことをする派ですね。 

加賀:僕は死ぬほどアドリブなんですよ。 

賀屋:単独ライブはだいぶですよ。だいぶというか……どこまで言っていいのかわかんないけど。 

加賀:実は、当日しか言ってないことが半分以上あります(笑)。 

――そんなに! それは各シチュエーションの自然な流れの中だから許されるという考えですか?

加賀:そうです、そうです。マジメなので、その範疇を超えはしないんですよ。でも、戻ってこれるんだったら、どこまででも離れたいっていう。けど、それを評価してくれる人は賀屋しかいないんですよね。 

――観客には伝わってないところですもんね。ストイック過ぎてすごい……。あと仮に脱線したとしても、まったく関係ないところでは笑わせないイメージもありますね。

賀屋:そうですね。アドリブはめちゃくちゃやるんですけど、ネタに大きな影響はないというか。僕がネタ飛んじゃったりしても、加賀くんはアドリブで対応して“そういうもの”として見せられる。だから、「あそこのアドリブすごかったね」みたいなのが見てる人はわからないと思う。それゆえに僕が発信しないと加賀くんのすごさは誰もわからないっていう。そこがちょっとかわいそう(笑)。だから、僕が言わないと。 

加賀:賀屋がネタ飛ばしたりセリフが出てこなかったりする瞬間がちょいちょいあって、その時に僕は本当に頑張ってるんですよ(笑)。でも、誰にもわかってもらえない。本人はもう「はぁ~ん!」って思いながら一生懸命やってます。 

賀屋:僕もわかんない時ありますから。終わった後に「ネタ飛ばしてたよ」って言われて初めてハッとする。加賀くんの対応力がすごくて、本番中は見てる人も僕もネタのどこをどう変えたのかがわからないんです。そういう部分で加賀くんには本当に助けられてますね。 

吉本の劇場に出るメリットは「文化の違いを見られること」 

――単独ライブを開催した一方で、マセキ芸能社の所属でありながら吉本興業の劇場にもコンスタントに出演しています。以前、GAG福井俊太郎さんにインタビューしたところ、「僕らぐらいの世代からするとあり得ない」とおっしゃっていました。

賀屋:今はもう普通に吉本さんの劇場でやらせてもらえて。無限大ホールにも本当にお世話になってます。 

加賀:無限大ホール、ドームどっちもね。今吉本の若手の子より吉本の劇場に立ってることありますから。めっちゃ呼んでもらえるので、本当にありがたいです。たぶん先輩たちが事務所の垣根を緩くしてくれたおかげで、後輩たちがやりやすくなってるってことだと思います。実際にそういう活動をしてきた先輩に誘っていただいて出させてもらってる感じですね。 

賀屋:コロナ禍もありましたし、諸々あって流れが変わったのはあるかもしれないですね。

加賀:僕らの場合で言うと、最初の最初はナイチンゲールダンスとかが呼んでくれたりしました。あと、やさしいズさんとか空気階段さんとかもそうです。

――吉本の劇場に出演していて、どんなメリットを感じますか?

加賀:やっぱり、文化の違いを見られることですかね。吉本さんらしいお決まりの流れがあるとか、各コンビのお決まりのネタとか、そういうものの「ここも準備できるよ」みたいなことがたくさん見られる。 

賀屋:とくに出演者みんなが参加するコーナーとかはすごい感じますね。毎回お決まりでやるコーナーだから、けっこうみんなやり尽くしてるみたいなところがあって。だから、まだやってないところを考えていって、何とか自分たちで新しいくだりを生み出すんです。そういう作業って他事務所のライブにはないですから。 

コーナーとか企画に対する向き合い方、団体芸的なものもそうですけど、やっぱり回数重ねてる人たちの立ち振る舞いに最初はかなり面食らいましたね。一緒にやらせてもらう中で、「こういうことをこのタイミングで言うんだ」「この人ってこうやって取り戻すんだ」みたいなことを目の当たりにしたというか。すごいそこは影響を受けました。 

加賀:あと、やっぱり小道具がすごいですね。半端じゃなく充実してます。僕らは、お金がないことを理由にシンプルな衣装でどうにか雰囲気を出そうとしてやってるんです。それが吉本の劇場に行くと、レジがあったりベッドがあったりソファーがあったりする。一撃でシチュエーションが作れるから、「そりゃこの教材なら優秀な子も育つよな」って思う瞬間もありますし、逆に「僕らは貧乏だからできたこともあるな」って自分たちの強みを認識できたりもします。 

もう一つ、単純に普通のライブでめっちゃ前に出るようになりました。最近は周りを見渡すと自分のほうが先輩ってこともちょっとずつ増えてきたんですよ。そういう時は、ほかの芸人さんにどう思われようがガンガン前に出ます。初めてのライブの子は、絶対僕らよりやり辛いじゃないですか。だから、そういう子たちがやりやすい雰囲気を作るためにも、「自分が引っ張っていこう」って考え方になりましたね。 

東西の違いを感じるレベルのネタでは満足しない 

――今年1月、よしもと祇園花月(京都府)でアキナさんとツーマンライブ「アキナ×かが屋 in 祇園」を開催。ここ最近で関西のコント師との交流も盛んになっている気がします。

加賀:本当にちょっと流行ってますよね。「あれ、意外と東京近いじゃん」ってなったんじゃないですかね。 

賀屋:今年5月にも、「アキナ×かもめんたる in 祇園」がありましたよね。何かあるのかな? 

加賀:吉本さんの垣根がちょっと薄くなったのかなぁと思いますね。平気で呼んでもらえるっていうのが本当にありがたい。マセキ(芸能社)もマセキで寛容というか。「ダメです」とか言われたことがないので。すごい優しく平和になりましたね。 

賀屋:事務所のハードルとかってほとんど感じたこともないですし。嬉しい限りですね。 

――ちなみに6月に単独ライブの大阪公演が終了したばかりですが、東京公演との反応の違いみたいなものはありましたか?

加賀:最終日はまだ良かったんですけど、初日は正直あんまり反応がなくて。本当に実力通りになっていくんだろうなって思いましたね。強い人はやっぱりそこの差がなくなっていく。どんな状況であろうが、ある一定の笑いをとるんですよ。 

そういう意味では、単純にまだ実力が足りてない段階なんだなって思いましたね。ラバーガールさんとかって、やっぱりいつどこで見ても大爆笑なので。 

賀屋:ゲストで大阪に呼ばれて行った時って、拍手で出迎えてくれるんですよ。でも、今回は「僕らの単独にきてください」ってことだったので、僕らも見る側もちょっと心境が違ったのかなって。こっちの気負いもあっただろうし、あっちもちょっと緊張感があったのかなって思いますね。 

大阪と東京の違いって、はっきりとしたものじゃなくて何となく文化的にずっとあるじゃないですか。緊張感がある時は、そこが作用しやすいのかなと思ったりします。実際にそうかは別として、賞レースとか緊張感があるところでは、その違いが雰囲気のいくらかを占めるんじゃないかって感覚はありますね。 

加賀:東京と大阪の違いってそりゃあると思うんですよ。けど、こっちがそれを上回るくらい面白ければ何も関係ない。単純に東京と大阪の違いを感じるレベルのネタでは、僕は満足しないっていうか(笑)。 

賀屋:めちゃくちゃ正しいこと言ってる(笑)。 

加賀:もちろんキャラの強さもありますけど、ロバートさんが大阪で死ぬほどウケてるところってやっぱり見ますし。逆に関西のロングコートダディさんが、ものすごく雰囲気のネタやったりするわけですよ。僕はロングコートダディさんのお客さんを信用してるし、そういう大阪の土壌で僕らがウケないとも思わない。 

ウケなかったら、「ここは違ったな」って改善点があるだけのような気がします。ただ、やっぱり知名度の問題は大きいと思います。ぜんぜん知らない人のコントはちょっとハードルが上がるというか。大阪のお笑い好きの方は絶対目が肥えてるので、「どんなもんや?」ってハードル自体はあると思いますね。 

破天荒な父親によって培われた笑い 

――加賀さんが執筆した小説『おおあんごう』(講談社)を読ませていただいて、加賀さんの笑いに破天荒な父親がすごく影響を与えているんだろうなと思いました。

加賀:大きいと思いますね。後半は楽しかったけど、小さい頃は注意深く見てないと普通に危なかった(笑)。いつ何が起こるかわからなかったので、ずっとピリピリして暮らしてましたね。ちなみに小説に書かれてる“父親が僕のLINEをブロックした”ってところはマジな話です。

――その部分はひどいなと思いながらも笑ってしまいました。 

加賀:ありがとうございます。そう思ってもらえると本当に嬉しいです。ハッピーエンドにしちゃうと、おかんが悲しむなと思って。「うちの子、過去変えとる!」ってなっちゃうだろうから(笑)。

――その配慮もあったんですね(笑)。賀屋さんは読んでみてどう感じました?

賀屋:ずっとムカついて読んでたんですけど、本当に同じように父親の「ファッキュー」でめっちゃ笑っちゃって。うわ、すごいなって思いました。文字で声を出して笑うみたいな体験を、相方が書いたものでするわけですからね。 

しかも、読んでいくうちに加賀くんが書いたってことも頭を過らなくなってくる。映画観てたら現実との境目がなくなってくるみたいな感覚というか、普通に小説家が書いた本を読んでる感じの時があって。僕みたいなのが書いたら、そうはならなかっただろうなって思いましたね。 

賀屋:今だったら絶対書けてないですね。「こんなんじゃダメ。もっと面白くしないと」って思って終わらなかったと思います。「まぁいいでしょう」って思えたのが良かった。そこは、しばらくお休みをもらった後に書いた部分が大きいと思います。

漫才やコントのうまさよりも「どう目立つか」が大事 

――お二人のコントは感情や物事の“機微”で笑わせるのを持ち味としていますが、意識してパワーワードやインパクトの強いものを外しているんでしょうか?

賀屋:そうしないと決めてるわけではないですね。 

加賀:ぜんぜん僕らは尖ってないので。尖ってないというより、ウケを最優先で考えてます。 

賀屋:本当に、マジでそうなんですよ。「僕らのできることで一番笑ってもらえるものって何だろう?」って毎回やってる感じですからね。 

加賀:ただ、自分たちの手札がちょっとシュールに見えがちというか。印象でだけですよ? 中身を見たらぜんぜんわかりやすい味なのに、何かそういう印象になったりするんですよ。 

――シュールと言われてしまうのは、ネタの切り取り方の部分でしょうね。

加賀:それも単純に笑ってほしいがゆえのものなんです。ちょっとでも変わったことをして興味を引かないと最後まで見てもらえないだろうっていう結果というか。それは僕らがオーディションで事務所に入った影響もあるかもしれないですね。オーディションで最後まで見てもらうためには、漫才やコントのうまさよりも「どう目立つか」が大事なんですよ。 

賀屋:2分のオーディションなんですけど、ダメだったら1分ぐらいで強制終了。基本的に2分経過するとチンチンッて終了の音が鳴るんですけど、良かったら時間オーバーしても最後までやらせてもらえる。だから、ネタを最後まで見てもらうために、目立つことをするっていうのがあるのかもしれないですね。 

加賀:これまでは単純に「この雰囲気が好き」ってだけで、言葉を中心に考えたことがなかったんですよ。だから、そういうものもいつかやりたいなって思いはあります。

【前編】「コント師・かが屋が語る、KOC優勝への道『あと3年ください!』」はコチラ

  • 取材・文鈴木旭

    フリーランスの編集/ライター。元バンドマン、放送作家くずれ。エンタメ全般が好き。特にお笑い芸人をリスペクトしている。2021年4月に『志村けん論』(朝日新聞出版)を出版。個人サイト「不滅のライティング・ブルース」更新中。http://s-akira.jp/

  • 撮影スギゾー

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