「米ドル1ヵ月物・年10%」…〝円安商法〟の「意外な落とし穴」 | FRIDAYデジタル

「米ドル1ヵ月物・年10%」…〝円安商法〟の「意外な落とし穴」

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止まらない円安の中、続々登場の「買ってはいけない」金融商品に要注意

円安が止まらない。3月中旬に1ドル=115円台だった米ドル/円レートは、4月下旬に130円台へ。わずか1ヵ月強で、約15円という歴史的な暴落を記録した。その後、7月中旬には一時139円台と、約24年ぶりの水準まで下落した。ネット上では、「悪い円安」「日本売り」「日銀の失敗」といった記事が噴出し、日本経済が末期的な状態にあるようなイメージが作られている。 

そうした状況下、またぞろ、〝買ってはいけない〟金融商品が登場している。 

対ドル円相場が下落…7月中旬には一時139円台に(写真:アフロ)

1ドル=140円台も時間の問題か

世界的なインフレ懸念が高まる中、国内でも、電気・ガス料金、食品や日用品などの値上げラッシュが続いている。その結果、円安と、それを招いたとされる日銀が諸悪の根源であるかのような扱いをされている。6月上旬、日銀の黒田総裁は、「家計の値上げ許容度が高まっている」といったコメントをして、大炎上を招いてしまった。何年も賃金が増えない中、相次ぐ値上げに直面した国民のフラストレーションが爆発した格好だ。

欧米の主要国が金融引き締めを強化する一方、日銀は金融緩和を継続し、円安の主因となった。それが輸入物価の上昇につながり、さまざまなコストを押し上げている。金融市場では、国内外の金融政策の方向は変わらず、さらに円安が進行するとの見方が支配的で、ネットを含むメディアの論調は、1ドル=140円突破は時間の問題、為替市場では1998年8月の147円台の可能性も取り沙汰されている。

「預入期間・1ヵ月」の〝円安商法〟外貨預金のカラクリ…

そこへ、「日本経済は円安とインフレで大変になる」といった記事を目にする度に、投資とは無縁だった人も、「何とかしなければ!」という気になる可能性がある。おそらく、そうした層をターゲットにしたと考えられる金融商品のキャンペーンが活発になっている。外貨預金だ。

例えば、あるネット銀行では、「米ドル1ヵ月物・年10%」という外貨定期預金のキャンペーンを実施している。この表示を見て、「いいかも!?」と思った人は要注意。この外貨定期預金で最も注意することは、預入期間が「1ヵ月」である点だ。預貯金の利率は「年率」で表示されているので、年10%の利率は1ヵ月分に直すと、10%÷12ヵ月=0.83%(小数点第3位四捨五入。以下同)となる。つまり、期間中の利率は0.83%にしか過ぎないのである。 

欧米の主要国が金融引き締めを強化する一方、日銀・黒田東彦総裁は金融緩和を継続し、円安の主因に(写真:アフロ)

外貨預金は、高リスクの金融商品「円高or円安の可能性は常に五分五分」

外貨預金では、金利に加えて、購入時よりも円安になれば為替差益が得られるが、逆に、円高になると為替差損が発生する。もし、1ドル=139円のときに、前述した外貨定期預金に100万円を預けたとき、1ヵ月後の満期時に為替レートに変化がなく、1ドル=139円だった場合、利息は約8300円となる。但し、税金とこの銀行の為替手数料25銭を引くと4840円。そして、もし満期時に1円円高となって1ドル=138円となると、為替差損は約7200円発生するので、利息を入れても2000円以上の赤字となってしまう。

もちろん、円安が進んでいれば為替差益が発生するが、円高or円安の可能性は常に五分五分。外貨預金とは、結構リスクの高い金融商品なのだ。現在のように、為替相場の動きが激しいときは、1日で1円程度の変動は十分起こり得る。そんなときに外貨預金をするのは、かなりのリスクを負うことを理解しておかなければならない。「円安で物価が上がって困りそう」といった不安から、一見お得そうな外貨預金に飛びついたものの、予想外の円高で損をしてしまう――これは最悪のパターンだろう。

外貨建ての金融資産は、長期的な観点で考えるもの

外貨建ての金融資産を持つこと自体は合理性がある。長期的な観点から、将来的に円の価値が減少するリスクに備えることには意味がある。その場合、まずは、自分の不動産などを含めた資産と負債の状況を確認し、資産運用に回せる余裕資金がどのくらいあるのかを把握した後、外貨建て資産に何パーセント振り分けるのかを検討する、といった資産運用の基本的なステップを踏む必要がある。短期的な為替差益を狙うのは〝投機〟だ。

「どうしても何かやりたい」と前のめりになっている人には、とりあえず、ネット銀行のような金利が高めの銀行に預けるという手がある。例えば、あおぞら銀行(BANK口座)のように、普通預金で金利が0.2%のところもある。物価高をカバーすることはできないが、気休めにはなるだろう。

投資をするなら基本に立ち返って「投資信託の積立投資」を

そして、できればこの機会に、腰を据えて資産運用に取り組んでみてはどうか。オススメは、投資信託の積立投資だ。一般的な積み立て投資は、毎月、定額で金融商品を購入するというもので、長期間継続して成果を出すことを目的とする。最も重要なのは10年、20年と続けることなので、毎月の積立金額は無理なく支出ができる範囲にしておく。

対象とする投資信託(=ファンド)は、「全世界株式型」が良いだろう。単純に言うと、世界中の株式を投資対象とするファンドで、これ1本だけで、十分な分散投資の効果が期待できる。ここ数年、国内でもさまざまな運用会社が取り扱いを開始し、簡単に積立投資が行えるようになった。『つみたてNISA』(少額投資非課税制度)の対象となっているものもあり、以下、その中から保有コスト(「信託報酬」という)が割安なものをピックアップしておこう。

10年、20年と続ける投資信託の積立投資では、保有コスト(「信託報酬」)のチェックも重要。狙い目は「0.1%超0.2%以下」

資産運用のリスクは「投資金額で調整ができる」

今年に入ってから、日本を含む世界の株式市場は下落傾向となっている。そうした中、海外の株式に投資するのはハードルが高く感じるに違いない。金融商品としてみれば、外貨預金よりリスクも高い。しかし、投資金額を小さくした積立投資にすることで、トータルな資産運用のリスクは抑制できる

ここに挙げた投資信託は、外貨建ての資産となる海外株式の占める割合が高いので、円資産との分散も図れる。目先の円安やインフレ懸念などに惑わされることなく、10年、20年先を見据えた投資をして欲しいと思う。今、世界的に株式市場は安値圏にあると考えられ、積立投資をスタートさせる時期としては悪くないはず

〝悪い円安〟は続くのか?

最後に為替相場について蛇足を。6月中旬より、米国の長期金利は低下傾向に転じ、期間2~3年までの金利も頭打ちが鮮明。したがって、日米の金利差を材料にした「円売り」はひとまず終了している。足元では、ユーロ/ドル相場におけるドル上昇の余波で円安が進んだが、新規の材料が出ない限り、目先的には円が下値を切り下げていく展開は考えにくい。

また、円安は、様々なマクロ経済モデルが示すとおり、日本経済全体にはプラスの影響を及ぼす。分かりやすく反映されているのが国の税収だ。2021年度の税収は、円安の恩恵を受けた法人税の増加により、前年度より6兆円以上増え、約67兆円となる見通し。これで2年連続過去最高となる。実は、今回の円安トレンドは2020年末から始まっており、その効果はすでに表れている。おそらく、今年度もさらなる円安で過去最高となるだろう。

但し、円安メリットがあるのは大企業中心で、中小企業と家計にはデメリットが強い。そして、こうした不公平を緩和する政策として最適なのは税金の活用だ。国税の増収分を財源にすれば、2~3年の時限的措置で5%の消費税減税は実現可能。効果が期待できない為替介入や金融引き締めといった手は、前述した不公平を助長する恐れがある。

  • 取材・文松岡賢治

    マネーライター、ファイナンシャルプランナー/証券会社のマーケットアナリストを経て、1996年に独立。ビジネス誌や経済誌を中心に金融、資産運用の記事を執筆。著書に『ロボアドバイザー投資1年目の教科書』『豊富な図解でよくわかる! キャッシュレス決済で絶対得する本 』。情報サイト「オールアバウト」クレジットカードガイド。

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