入国管理法改正の闇 「位牌になった外国人労働者たち」 | FRIDAYデジタル

入国管理法改正の闇 「位牌になった外国人労働者たち」

最低賃金でこき使われ、異国で命を落とし、母国にも帰れず

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ベトナム人労働者などの位牌の前でお経を唱える尼僧のチーさん。’00年に来日。大正大学で仏教を学び外国人労働者の相談を受けている
ベトナム人労働者などの位牌の前でお経を唱える尼僧のチーさん。’00年に来日。大正大学で仏教を学び外国人労働者の相談を受けている

お経を唱える僧侶の前に並ぶのは、ベトナム語で名前や死亡日が書かれた位牌の列。その数は100柱を超える。多くが日本で命を落とした、外国人労働者のものだ――。

東京・港区の寺院「日新窟(にっしんくつ)」で外国人労働者を供養する、ベトナム人尼僧ティック・タム・チーさん(40)が話す。

「ほとんどが20代~30代の若者です。死因は自殺や急性心不全など悲惨なものが多い。位牌や遺骨は供養して家族に送ります」

12月8日に、出入国管理法の改正案が強行採決された。主な内容は、技能実習制度を通じて外国人労働者の数を増加させるというもの。’19年から5年間で、約35万人を受け入れる予定だ。だが前出のチーさんは「時期尚早では」と懸念する。

「低賃金や差別、虐待など、多くの問題が解決していません。日本人と同じ環境で働けるように、しっかり制度を整えるべきです。誰にも相談できず閉塞感を深め、自ら命を絶つ外国人労働者は大勢います」

神奈川県内で塗装関係の仕事をしていた26歳のベトナム人男性は今年7月、会社近くの河川敷で首を吊った。前日には同じく日本で働く弟に、電話でこう伝えていたという。

「寂しい……。一人でビールを飲んでいる」

男性が来日したのは昨年10月だ。最低賃金の時給900円ほどで働き、帰宅しても夜遅くまで会社から宿題として課された日本語の勉強。ミスしたり宿題が進んでいなければ、殴られ給料を払われないこともあったという。

「遺書には、こう書かれていました。『毎日、孤独感をかみしめています。環境がとてもヒドいです。彼ら(日本人上司)は、ボクがどれだけガンバっているかわかってくれません。軽蔑されています……』と」(チーさん)

亡くなる理由は、劣悪な労働環境によるものばかりではない。発展途上国出身の労働者ならではの事情もある。チーさんが続ける。

「ベトナムの平均月収は3万円ほどですが、日本では15万~20万円のおカネをもらえます。多くの外国人労働者は食費などを切り詰め、収入の大半を貧しい家族への仕送りに当てているんです。茨城県内で働いていた20代のベトナム人男性は、毎日カップラーメン1~2杯しか食べておらず、栄養失調でガリガリに痩せていました。にもかかわらず、仕事は農家の手伝いで毎日20~30kgの農作物を運ばなければなりません。とても体力が続くはずがない。昨年8月に急性心不全で、突然命を落としました。外国人労働者を受け入れるには、生活面のサポートも必要でしょう」

わずか38時間ほどの審議で採決された出入国管理法改正案。未整備な労働条件による悲劇を、これ以上繰り返してはいけない。

本誌未掲載カット
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  • 撮影小松寛之

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