巨額の受領疑惑…”スポーツ界のフィクサー”を生んだメディアの罪 | FRIDAYデジタル

巨額の受領疑惑…”スポーツ界のフィクサー”を生んだメディアの罪

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2017年2月、東京五輪・パラリンピック組織委の理事会に臨む高橋治之元理事(中央)。左は森喜朗元会長(写真:共同通信)

ついに、捜査当局が動いた。読売新聞が7月20日付けの1面トップで「五輪組織委元理事、大会スポンサーから4500万円受領か 東京地検捜査」という特ダネを報じた。フィギュアスケートの羽生結弦の競技生活からの引退を2番手に押しやるスクープだった。

森喜朗元首相は「高橋さんのお陰」と称えた

2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会の元理事とは、元電通専務の高橋治之氏(78)。五輪に限らず、サッカーのワールドカップ(W杯)、陸上の世界選手権などの招致活動に深く関与してきた”スポーツ界のフィクサー”と呼ばれる人物である。そこにわが国最強の捜査機関である東京地検特捜部がメスを入れようとしている。

読売によれば、高橋氏が代表を務める会社と大会スポンサーだった紳士服会社「AOKIホールディングス」とコンサルタント契約を結び、約4500万円を受け取っていた疑いがあることが関係者の話でわかったという。理事は「みなし公務員」で職務に関する金品の受領を禁じられている。事実を把握した東京地検特捜部が慎重に捜査している、とある。

高橋氏は国際サッカー連盟のジョアン・アベランジェ元会長や国際陸上連盟(現・世界陸連IAAF)のプリモ・ネビオロ元会長らスポーツ界に君臨した大物に桁違いの接待攻勢をかけて食い込み、太い人脈を築いたとされる。1991年世界陸上東京大会、日韓共催となったサッカーの2002年W杯招致に大きく貢献、特に海外で名を馳せた。

10年以上前から、さまざまな情報を耳にしたため、電通関係者に取材すると「勘弁してくれ」と一様に多くを語ろうとしない。「なぜか」と食い下がると「あの人は特別だから関わりたくない」「新入社員なのに外車で堂々と出勤していた」という答えまで返ってきた。

異端、異能だからこそ世界のトップと渡り合えたという評価がある半面、他の社員は距離を置いていた。それは畏敬でなく、恐怖だったのかもしれない。

「外国のスポーツ界の偉い人が来日すると、自らオーナーになっているレストランに招いて料理を振る舞い、そのあとは銀座の高級クラブで豪遊です」(関係者)

2020年3月末、ロイター通信は「東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会」の銀行口座取引証明書を入手、高橋氏の口座に8.9億円が振り込まれていると報じた。

これに対し、高橋氏はIAAF元会長で国際オリンピック委員会(IOC)委員のラミン・ディアク氏らにロビー活動の一環として「手土産を渡すのは当然でしょ。中身はセイコーの腕時計やキヤノンのデジタルカメラだった」と答えている。

招致委からの金は自分が経営するコンサルタント会社を経由して受け取り、招致を成功させるための飲食、マーケティングの経費と説明している。

今回、東京地検が捜査対象にしている4500万円も高橋氏のコンサル会社を通じているといわれ、金の流れが重なる。

セネガル人のディアクIOC委員に接近したのは、五輪招致のためにアフリカ票の取りまとめを依頼したからだ。東京が選挙に勝利すると、招致委員会評議会議長で組織委会長に就任した森喜朗元首相は「高橋さんのお陰」と称え、組織委理事に迎え入れ、厚遇した。

ディアク氏は2014年に発覚したロシア陸上界の国家的ドーピングの隠蔽工作にかかわったとして、フランスの司法当局から告発され、有罪判決を下された。21年12月、東京五輪招致疑惑の真相を語らぬまま、88歳で亡くなった。

2013年9月7日、アルゼンチンで行われたIOC総会。五輪開催地に「東京」が選ばれた直後、のちにオリパラトップになる森喜朗氏の背後で高橋氏(左から2人目)も喜ぶ。当時外務大臣だった岸田総理(左端)の姿もあった(写真:ロイター/アフロ)

忘れてはならない人物がもう一人いる。実弟の高橋治則氏である。「バブルの帝王」といわれ、プライベートジェット機で飛び回り、世界のリゾート地を買い漁り、総資産1兆円以上の企業グループのトップまで上り詰めた。

政界、経済界に食い込むために兄・治之氏の人脈が支えの一つになったといわれる。しかし、栄華は続かず、バブル崩壊でイ・アイ・イインターナショナルなどの持ち株会社が次々と破綻。メインバンクの日本長期信用銀行を経営難に追い込み、東京協和信用組合が破綻、1995年6月に背任容疑で東京地検特捜部に逮捕された。

裁判では一貫して無罪を主張したが、一、二審とも実刑判決、最高裁の判断が出る前の2005年7月、この世を去った。死因はくも膜下出血だったとされている。

「死ぬまでに洗いざらい話す」

このように高橋氏の周辺には巨額のカネの臭いが充満している。

東京五輪・パラリンピック特別措置法は、組織委の役員、職員を「みなし公務員」と規定している。職務に対して金品が供与され、賄賂性があると判断されれば、刑法の収賄罪が成立する可能性がある。

IOCの倫理規程でも、五輪関係者は大会に関わる報酬や手数料などを要求したり受け取ったりしてはならない、と定めている。

東京五輪招致疑惑を取材してきた、スポーツライターで国士舘大非常勤講師の津田俊樹氏は「五輪組織委は6月30日で解散し、ひと区切りついたので東京地検が動きはじめました。実際はずっと前から内偵していたのでしょう」と明るみになったタイミングを分析する。

「東京五輪を通じて、IOCは放映権料やスポンサーを第一に考える組織であることを証明しました。いくら『平和の祭典』などと強調してもキレイごとに過ぎないということです。1984年のロサンゼルス夏季五輪から商業主義に走りはじめましたが、その原動力になったのは電通であり、”先兵”になったのが高橋氏です。当初は理想主義に燃えていたかもしれませんが、スポーツビジネスがいかに儲かるかを知り、その利権に群がる連中とともに一線を越え、堕落していった可能性があります。

メディアにも大きな責任があります。内情を知りながら、大手紙は東京大会のスポンサーに名を連ねました。これで、追及の火の手は消され、上っ面な報道に終始しました。読売のスクープも検察のリークではないでしょうか。結局、司直の手によってしか解明できないのか、とても残念です。2030年冬季五輪の開催地に札幌市が立候補しようとしています。そのためにも、今後の動きを注視しなければなりません」

今回の件について「お金をもらって五輪に関する働きをしたことは一切ない」と語る高橋氏は以前、「死ぬまでに洗いざらい話す」と啖呵を切っていたという。それなら、捜査当局に全容を述べてもらいたい。

五輪招致疑惑の責任を問われ辞任した旧皇族の竹田恒和・元日本オリンピック委員会会長(右から2人目)は高橋氏にとって慶応時代の後輩にあたる(写真:ロイター/アフロ)

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