無償で1日8人と売春…家出少女が誓った「凌辱した父親への復讐」 | FRIDAYデジタル

無償で1日8人と売春…家出少女が誓った「凌辱した父親への復讐」

ノンフィクション作家・石井光太が家を無くした若者「ヤング・ホームレス」の実態に迫る!

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父親から性的虐待を受けるなど幼い頃から壮絶な体験を繰り返してきた未來(画像は本人提供)

児童自立支援施設を1年半で出された後、希咲未來はたった1日で逃げ帰るように夜の街にもどった。前編【父親が性的虐待…家出少女の壮絶体験】に続き、未來の壮絶な半生を紹介する。

17歳になっていた彼女は、施設に入れられる前と同じように体を売ることで生きていこうとする。だが、ほどなくして失踪を知った児童相談所の人たちがつかまえに来た。彼らは未來を強引に夜の街から引き離し、自立援助ホームへ入所させた。

自立援助ホームは、家にいられなくなった若者たち(主に15~20歳)を受け入れ、社会で自立していくための支援をする施設だ。そこに身を置きながら、アルバイト先を見つけ、真っ当に生きていくようにと言われた。

だが、自立援助ホームの生活は、未來が望んでいたようなものではなかった。定員6名なのに子供は未來だけしかいなかった。プライベートでは携帯電話を取り上げられ、職員との関係も殺伐としていた。

「ケータイがないと生活を営めない」

未來は言う。

「施設ってどこも子供からケータイを取り上げるんです。一律に使用禁止みたいになっている。これって、大人が思うよりつらいことなんです。

ケータイって人とつながるための道具ですよね。施設の中での人間関係がギスギスしていても、ケータイで外の人とつながっていればストレスは減るじゃないですか。でも、ケータイ禁止だと、そこの狭い人間関係だけになってしまう。

それに今時ケータイがなければ、社会生活を営めませんよね。バイト先からの連絡だってケータイだし、そこで知り合った友達との連絡だってケータイでしょ。それを禁止されたら、どうやって生きていけばいいのかわかりません」

施設の側は、携帯電話の所有は犯罪に巻き込まれるリスクを高めると考えて取り上げる。実際に、未來もそれをつかって体を売っていたのだから、そう思われるのは致し方のないことだ。

だが、若い人たちにとって携帯電話は人とつながるツールであり、孤独を和らげるツールでもある。施設の側が犯罪リスクを名目に携帯電話を奪えば、彼らは心身ともに孤立してしまう。自立支援ホームの中で、他に子供もおらず、職員ともうまくいっていない中で、携帯電話もなしに、バイトを見つけて真っ当に生きろと言われても、すれ違いが生じるのは当然だ。

未來はすぐに耐えられなくなり、自立援助ホームを脱走した。だが、新宿の歓楽街に舞い戻ったところをすぐにつかまり、今度は児童相談所が管轄する一時保護所へ預けられた。

援助交際で利用される店(画像は本人提供)

一般的に、一時保護所とは、子供たちを虐待や困難な状況から一時的に保護して生活を整えさせるための施設だ。そこにいる間に様々な調査や調整が行われ、児童養護施設に預けられたり、家庭に帰されたりすることになる。

ここの平均在所日数は30日ほどであり、原則的には2ヵ月以内に出されることになっている。あくまで一時的にいる場所なので、在所期間は学校へ行ったり、アルバイトをしたり、外へ遊びに行ったりすることが認められない。

だが、未來は規定を大幅に超える9ヵ月もの間、一時保護所に閉じ込められた。おそらく未來を受け入れる施設が見つからなかったのだろう。その間、未來はただ寝るか、小さな子供たちの世話をするかの生活を余儀なくされた。

児童相談所は未來が18歳になるのを待ってから一時保護所を出て、アパートを借りて自立するように言った。だが、中学生の頃から夜の街で売春をし、15歳でつかまってからは児童自立支援施設、自立援助ホーム、一時保護所とたらい回しにされた彼女が、18歳になっていきなり社会に出て自立しろと言われてもできるわけがない。

彼女は言う。

「一時保護所を出された時は、『えっ、私どうするの』って感じでした。ケータイも持ってないし、友達もどこにもいない。家具だって、仕事だってない。もちろん、貯金だってありません。それで仕事を見つけて生きていけって言われてできるわけがないですよね」

報酬がうやむやに……

その主張は至極当然だ。自立させる以前に、彼女は社会で生きる力をつけさせてもらっていないのだ。

間もなく、未來はアパートを離れ、夜の街にもどった。彼女にとって生きる術は売春しかなかったのだ。だが、彼女には自由につかえる携帯電話がなかった。そこで頼ったのが、「援デリ(裏デリ)」と呼ばれる違法な売春業者だ。

彼女が頼った援デリは、ホストの男性と、その愛人の女性が元締めをしていた。彼らは未來のような漂流少女をマンションに住まわせ、携帯電話を貸し与え、SNSをつかって見つけた客をつけた。

末端の少女たちは、日に8人くらいの客を取らされたという。1回2万円で半分が取り分だったとしても、日給8万円の収入になるはずだ。しかし、未來はほとんど報酬をもらっていなかった。

なぜか。未來は言う。

「なんかうやむやにされて払ってもらえなかったんです。それでも援デリで働きつづけたのは、そこの人間関係から離れられなかったからです。あそこにいる人たちこそ、自分の理解者だって思っていたし、ケータイや寝場所もちゃんと確保してもらえた。だから、また一人で生きていくより、お金をもらえなくても自分のことをわかってくれる人たちと最低限の生活ができていればいいって思っていたんです」

当時の彼女の夢は、「日本一の風俗嬢になって、自分をレイプした父親に復讐する」ことだったそうだ。そのことだけを夢見て、ほぼ無報酬で1日8人の客を取り、援デリのマンションで雑魚寝する生活をしていたのだ。彼女の父親への憎悪はいかばかりのものだっただろう。

その後、未來は19歳まで援デリをした末に、悪質な男性客につかまったことが切っ掛けで民間の支援につながる。時を同じくして、援デリで知り合った少女が自殺したのを知ったことが、売春の世界から足を洗う切っ掛けになる。

細かなことは割愛するが、現在、22歳になった彼女は性的搾取に終止符を打つための活動をしているNPOに所属している。定期的に夜の街で夜回りをしたり、安心して過ごせる居場所を提供したりして、かつての自分と同じような少女の手助けをしているのだ。

現在夜の街にいる少女たちは、かつての未來のように社会が用意する施設をほとんど信じていない。それについて未來はどう思っているのか。

次のように語る。

「今になってみれば、施設が信用できる場所だってわかります。でも、夜の街にいる現役の子にはわかりません。いくら言葉で説明しても納得させることはなかなか難しいと思います。いろんな出会いや経験の中で信頼してもらうしかない。

それでも重要なのは、社会の側が、彼女たちの目線で物事を考えることだと思います。私の場合は、ケータイを取り上げられたことが脱走につながりました。それは他の子もみんな同じなんです。若い子にとってケータイは人とつながったり、孤独を忘れたりするのに必要な道具なんです。それを奪われることは、所持品を全部取られて、見知らぬところに閉じ込められるのと同じです。

私はそういう意味で、支援する側はもっと女の子の立場に立って接する必要があると思うのです。そういうことを一つひとつやっていけば、彼女たちもすぐに逃げるようなことはせず、職員とかかわったり、いろんなことを考えたりするようになるので、その後の運命も違ってくるはずです」

「売春の過去をなかったことにしたくない」

未來が自立援助ホームなどの施設から逃げ出して夜の街に戻ったのは、携帯電話を奪われたことが切っ掛けだった。少なくとも自立援助ホームや一時保護所で携帯電話を持たせながら、職員と少しずつ信頼関係を築くことができていれば、いきなり脱走という事態にはならずに済んだかもしれない。

それは携帯電話の問題にとどまらない。人間関係にせよ、仕事にせよ、いきなり何もかも引き離そうとするのではなく、もう少し彼女たちの目線になって少しずつ物事を進めていくことが重要なのだ。

現に、未來もいきなり更生をしたわけではない。たまに夜の街で働いたり、かつての自分と同じような人とかかわったり、その体験を人に語ったりしながら、少しずつ支援から逃げ回る立場から、支援を提供する立場へと移行していった。

なぜ、それができたのか。彼女が頼ったいくつかのNPOが、いずれも元当事者が運営する団体だったことも大きいだろう。そういう支援者は、公的支援とは違い、当事者の目線で物事を進めようとする。それが彼女に合ったのだ。

未來は言う。

「社会の中で体を売るのはいけないことです。でも、私はそれをしていた過去をなかったことにはしたくないんです。性的虐待のことも、夜の街でしてきたことも、私の一部なんです。だから、それを堂々と抱えて生きていきたいと思っています」

そんな彼女の夢は、夜の街を漂流する若者たちが集まり、「HOME」と感じられる場所をつくることだそうだ。何年先になるかわからないが、きっと彼女は自分の経験から当事者にとって居心地のいい空間を考え、つくり上げていくのだろう。

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石井光太(作家)
ツイッター @kotaism
メール postmaster@kotaism.com

  • 取材・文石井光太

    77年、東京都生まれ。ノンフィクション作家。日本大学芸術学部卒業。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに取材、執筆活動を行っている。著書に『「鬼畜」の家ーーわが子を殺す親たち』『43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層』『レンタルチャイルド』『近親殺人』『格差と分断の社会地図』などがある。

  • 写真希咲未來さん提供

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