『六本木クラス』の切り抜き動画感に思う「邦ドラマ短すぎ問題」 | FRIDAYデジタル

『六本木クラス』の切り抜き動画感に思う「邦ドラマ短すぎ問題」

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『六本木クラス』主演の竹内涼真。『梨泰院クラス』の主人公であるパク・セロイそっくりの髪型に見えるが、実は微妙に雰囲気を変えているらしい

韓国の人気ドラマ『梨泰院クラス』をリメイクしたテレビ朝日の『六本木クラス』がなかなか奮闘している。

「原作を忠実に再現している」という声もよく聞くし、「キャストもスタッフも頑張っている」という感想も耳にする。きっとそうなのだろうが、私にはひとつだけどうしても気になることがある。

どう言えば分かってもらえるだろうか。なんだか「『梨泰院クラス』の切り抜き動画」を見ているような気がしてしまうのだ。

たしかに、あのシーンもこのシーンも、『梨泰院クラス』をそのまま日本設定に変えた感じで、原作の雰囲気を保とうとする努力はとても感じる。しかし、なんだかどのシーンも必要最小限の短さに感じてしまう。言葉悪く言えば「サラッと表面を撫でたような感じ」なのだ。

どのシーンもきちんとまんべんなく入っているが、どのシーンも「原作であったディテールや描写」が削られてしまっていて、なんだか食い足りない。

まるで、長いあらすじを見ている感じというか、切り抜き動画を見ている感じというか……もちろん韓国版といちいち比べるのは野暮なのだろうが、少しモヤモヤしてしまうのは否めない。

多分これは「日本版のスタッフやキャストに問題があるから」ではない。こうなってしまった背景には「もっと本質的な日本の民放のドラマの宿命」があると私は思う。それは、日本のドラマの「フォーマットの中途半端さ」が生んだ悲劇なのかもしれない。

日本の1時間枠の民放ドラマは、CMを除けば実質1話40〜50分。それがだいたい10話〜12話で完結する。しかし、韓国ドラマは一般的にはもっと長い。『梨泰院クラス』は1話だいたい70分くらいで、全16話だ。

ざっくり比較すると、日本版が50×11で550分として、韓国版が70×16で1120分だ。日本版は「原作を半分に圧縮しないと話を終わらせられない」ということになる。

これでは「あたかも切り抜き動画のような感じ」になってしまったとしても無理はないのではないか。まさに「原作を2倍速でやっている」のだから。

そのため、「なんとなく描写が表面を撫でたような感じ」になっていたとしても、それは日本版のスタッフやキャストのせいではないと言えると思うのだ。むしろ日本版のスタッフたちは、「時間の圧倒的短さ」という重いハンデを背負いながら、懸命に頑張っていると見るべきだろう。

そして、実はこの「時間の短さという重いハンデ」が足枷になっているのは、『六本木クラス』だけではない。むしろ日本のドラマのほとんどがこうした不利さの中で苦しんでいるのだと思う。

最近どんな日本のドラマが話題になったか、ちょっと思い出してみてほしい。ほとんどの人がまず思い出すのは、NHKの朝ドラや大河ドラマではないだろうか?連続テレビ小説は1話15分が130回前後続く。単純計算で1950分だ。大河ドラマは1話45分が1年間。50回として2250分。

あとは例えば「シーズン」がどんどん続いていくドラマも人気は高い。例えばテレビ朝日の『相棒』は今年10月に「シーズン21」が始まるロングランだ。あと、最近大ヒットしたフジテレビ『ミステリと言う勿れ』は話を完結させず、続編に含みを持たせた。

たぶん、日本の民放のドラマ枠は、一般的に短すぎるのだ。

コロナ禍に我々はNetflixなどで海外の「長いドラマ」を見ることに慣れてしまった。韓国に限らず、だいたいの国でドラマは日本に比べて長い。中国などには100話を超えるようなドラマも楽勝で存在する。アメリカなど欧米各国でも、ヒットしたドラマはシーズンが延々と続きロングラン化する。

こうした「海外の長いドラマ」の見応えを知ってしまった日本の視聴者たちの目には、既存の民放のドラマ枠は「短すぎて何か物足りない」と映ってしまう。

しかし、その反面、最近話題になっている「ドラマを早送りで見る」ような人々には、今の民放ドラマはきっと「長すぎてタルい」と映ってしまっているはずだ。

ある意味、現在の「フォーマット」は「帯に短くタスキに長い」感じの、中途半端な、時代に合わないものにすでになってしまっているという認識を持たなければならないのだろう。

もっと「長くする」かあるいは「短くする」か。時代に合うように「抜本的な番組フォーマット改革」を行わないと、日本のドラマの浮上はなかなか難しいのではないか、と感じる。

実際に、海外のマーケットでも日本のドラマは、短すぎることがセールス上のネックになっていると聞く。「予算や人材の問題」だけではなく、「ドラマのカタチ」を時代に合わせたものに変えていかなければならない時期を迎えているのではないだろうか。

ちなみに韓国ドラマは、毎話「長さ」が違うものが多い。日本のように放送枠が「秒単位まできっちり決められている」わけではなく、地上波でも「毎回長さはだいたいでOK」というおおらかさだ。これなら監督は「枠に合わせるために泣く泣く良いシーンをカットする」というような辛い思いをしなくて済む。

そして放送時間ギリギリまで編集を「追い込む」ことも有名だ。追い込みすぎて「銭湯のシーン」にモザイクをかけ忘れて大量の〇〇が放送されてしまった、というようなことも過去にはあった。

まあなかなかそこまで自由な感じにするのは、いまさら日本では難しいと思うが、そこまではいかずとも「もっと演出家が自由にクリエイティビティを発揮できる」自由なフォーマットを、民放の偉い人たちに生み出してほしいと期待している。

そうすれば、また日本のドラマがアジアの帝王となり、世界を席巻する日がいずれ来るのではないかと思うのだ。

  • 鎮目博道/テレビプロデューサー・ライター

    92年テレビ朝日入社。社会部記者として阪神大震災やオウム真理教関連の取材を手がけた後、スーパーJチャンネル、スーパーモーニング、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。中国・朝鮮半島取材やアメリカ同時多発テロなどを始め海外取材を多く手がける。また、ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」、「Wの悲喜劇」などの番組を企画・プロデュース。2019年8月に独立し、放送番組のみならず、多メディアで活動。江戸川大学非常勤講師。MXテレビ映像学院講師。公共コミュニケーション学会会員として地域メディアについて学び、顔ハメパネルをライフワークとして研究、記事を執筆している。近著に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)

  • 撮影近藤裕介

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