特別対談!真鍋昌平×佐々木チワワ「私たちの裏社会取材血風録」 | FRIDAYデジタル

特別対談!真鍋昌平×佐々木チワワ「私たちの裏社会取材血風録」

トー横キッズ、風俗嬢、ヤクザ、犯罪者…… 社会のダークサイドを描く二人の特別対談

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弁護士を主人公にしたワケ

真鍋氏の仕事場にて。二人は1年ほど前から「飲み仲間」だという。真鍋氏の『九条の大罪』の第6巻が本日7月29日から発売される

チワワ「真鍋先生、お久しぶりです!」

真鍋「知り合ってもう1年くらいですかね。僕がちょうど『九条の大罪』でトー横の取材をしている時期に、歌舞伎町に面白い子がいると聞いて、共通の知人だったストリッパーの子に紹介してもらったのがチワワさんでした」

チワワ「それから、飲み会にもちょくちょく呼んでいただいて嬉しいです。私が対談なんてちょっと畏れ多い気もしますが、今日は先生のお話を聞けるのが楽しみです」

二人の対談は、そんな和やかな挨拶から始まった。

代表作『闇金ウシジマくん』に続き、厄介な案件ばかりを引き受ける異色の弁護士を描く『九条の大罪』が大ヒット中の漫画家・真鍋昌平氏(51)。歌舞伎町を中心に数多くの若者たちを取材するライター・佐々木チワワ氏(22)。ヤクザや犯罪者から、「トー横キッズ」のような非行少女まで……。いわゆる「一般社会」からはみ出した人々の実情をリアルに描き出す彼らは、いま何に興味を持ち、どんなアプローチで作品を書いているのか。「実は飲み仲間」という二人が、裏社会取材ならではのエピソードを交え、たっぷりと語り合った。

チワワ「『九条の大罪』には、『トー横キッズ』を題材とした少女が登場しています。以前から、トー横には興味をお持ちだったんですか」

真鍋「歌舞伎町を歩いていたときに、大きな荷物を引きずっている女の子を見て、『この子たちは何なんだろう』と興味を惹かれたんです。『ぴえん女子』という存在だと知り、面白いなと。『九条の大罪』で女の子の話を描きたいと思っていたのもあり、題材に選びました」

チワワ「トー横で取材するとき、先生みたいな”オヂ(おじさん)”は警戒されたんじゃないですか?(笑)」

真鍋「本当にその通りで、歌舞伎町にいる女の子に声をかけてもみんなに嫌がられたんだよね(笑)。やり方を考えて、男女でいる人を探して男の子のほうに声をかけたら上手くいった」

チワワ「非行少女や不良少年は昔からいますが、現在との違いなどを感じたりはしますか?」

真鍋「昔は外に向けて暴力を発信していたと思うけど、いまは内側に向いている人が多い気がしますね。ただ、日本の経済が傾いてきているので、内向きな彼らが犯罪に走り、窃盗や詐欺が増えていくんじゃないかと心配しています」

チワワ「トー横ではすでに、万引きが当たり前になっているそうです。それに、歌舞伎町のパパ活女子の間では、詐欺も横行している。おじさんから大金を引っ張る方法をマニュアルとして販売していて、借金の証明書などの書類を偽造する手引が書かれているんですよ。彼女たちはキモいおじさんには何をしてもいいと思っているみたいで、犯罪という意識がないんです。世の中の不景気がこういう事態を招いているのかなと思います」

真鍋「トー横はかなり注目されていますし、今後は色々と浮き彫りになっていくと思いますよ」

チワワ「『九条の大罪』では、ヤクザや半グレの依頼を受ける弁護士が主人公です。弁護士を題材にしようと思ったのはなぜなんでしょうか」

真鍋「『ウシジマくん』を連載しているときに、犯罪者の人たちから『動きの良い弁護士がいる』って話を聞いて面白いなと思ったんです。それに、『ウシジマくん』のように犯罪者側の視点で描くと、読んでくれない人も多かった。見たくないって言われてしまって。でも、弁護士という視点から描けば、そういう人も読んでくれるんじゃないかと考えたんです」

チワワ「リアルすぎる描写が数々出てきますが、漫画のネタはどのように探しているんでしょうか」

真鍋「街を歩いていたり、知り合いとお酒を飲んでいるときだったり、何か心に引っかかるものを感じたら、すぐに取材して掘っていく形ですね。何か事件が起きたときに、背景を調べて興味を持つこともあります」

ヤクザを激怒させた

チワワ「先生は取材もご自分でしていますが、裏社会の人たちから話を聞くとなると、やはりトラブルも多いんじゃないですか」

真鍋「『ウシジマくん』の連載を始めたばかりの頃は酷かったね。ヤクザや半グレを取材していると、みんな上から来るんですよ。キャバクラに呼び出されて僕だけ泥酔させられ、起きたら誰もいなかった。で、代金だけ置いてあって、20万円を支払わされたこともありました。当時は、印税がすべて取材のための飲み代に消えていた(笑)」

チワワ「それはかなりハードですね……」

真鍋「地方に取材に行ったときに、地元のヤクザを怒らせてしまったこともありました。こちらにそんな意図はまったくなかったんですが、取材過程のなかで、あるヤクザが『メンツを潰された』と激怒したんです。刺身包丁で人を殺したことがあると言われていて、恐ろしいアダ名までついている方でした」

チワワ「恐すぎる。それはどうやって収まったんですか?」

真鍋「謝罪文を何通もお送りして何とかお会いする機会を作ってもらい、夏の盛りにスーツを着て行って直接謝罪をしました。話をしたら事情をわかってくれましたが、揉めたままにしていれば、もちろん漫画には描けなかった。僕の経験のなかでも、トップクラスにヤバいエピソードです。チワワさんは、歌舞伎町で取材をするなかで何かトラブルが起きたことはありますか?」

チワワ「実は、私自身がトラブルに巻き込まれたという経験はあんまりないんです。ただ、取材のなかでホントに多種多様な人に触れてきたな、という感覚はありますね。たとえば、コロナ禍で大学の講義がリモートになったからと、ソープランドの待機中に授業を受けている子とか。発言しなきゃいけないタイミングで部屋の電話が鳴って焦った、という話は面白かったですね」

真鍋「たくましい(笑)」

チワワ「中年男性にも興味があって、出会い喫茶に潜入取材をしに行ったこともあります。私のことを『2万円で買いたい』と言ってきたおじさんがいて、『なんで2万円なんですか?』とか根掘り葉掘り聞いたりしました。その人、私のことをメチャクチャにディスってくるのに、買いたいと言ってきたので、何を考えているのか興味を惹かれてしまって(笑)。いつか中年男性が抱えているものについては書きたいと思っています。真鍋先生は、今後描いていきたいと思っているテーマや題材はありますか?」

真鍋「いまは『富裕層』に興味がありますね。ビルを40棟持っている人に話を聞いたんですが、見た目はぜんぜんフツーのおじさんなんですよ。ブランドもので着飾っているワケではないし、食事も割り勘です」

チワワ「いわゆる成金的な、お金持ちに対する一般的なイメージとはぜんぜん違うんですね」

真鍋「そう。ただ一方で、女の子を田舎の廃校に集めて裸で運動会をさせたりしている人もいる。面白いですよ」

チワワ「漫画で読ませていただくのが楽しみです。今後の題材でいうと、私は『海外出稼ぎ』に興味がありますね。日本が不景気になってきたからか、女の子が海外まで出稼ぎに行くというのが当たり前になってきているんです。英語ができる子だと、2ヵ月かけてアメリカの風俗店をまわって稼ぎまくって帰ってくるツワモノもいます」

真鍋「安倍晋三元首相の銃撃事件があったこともあり、僕は40〜50代が抱えているものを描きたいという気持ちも出てきています。ただ、自分の限界を超えている題材はやはり描ききれない。宗教など、自分では理解しきれないものは難しいですね」

どこまでもリアルを追い求める二人の裏社会取材は、これからも続いていく。

ヤクザや犯罪者の取材での心構えを聞くと、真鍋氏は「たいていの嘘はすぐ見破られる」と語った
15歳から歌舞伎町に出入りしているチワワ氏。今後は海外に活動を広げることも考えているという
有名弁護士らに実際に取材して描いている超リアル漫画。待望の第6巻が好評発売中

『FRIDAY』2022年8月12日号より

  • PHOTO小松寛之

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