ダイナマイト・キッド 「ステロイド」に生命を奪われた

ドーピングはこんなに恐ろしい

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’82年1月、東京体育館で初代タイガーマスクと対戦したキッド氏。危険を顧みないプレーから「爆弾小僧」と呼ばれた

「ステロイドを使った直後に、酒を飲んではいけないんだ。悪影響が大きいからね。キッドはステロイドを打ってから、酒を大量に飲むという最悪の組み合わせをした。身体はボロボロだっただろう」

こう証言するのは、プロレスラーのタイガー戸口氏だ。

米国WWFなどで活躍したプロレス界のスーパースター、ダイナマイト・キッド氏が亡くなった。12月5日、自身60回目の誕生日のことだ。’96年の引退後は、ドーピング(ステロイドなど薬物による筋力や運動能力の向上行為)の影響で車イス生活を送っていた。キッド氏と親交のあった戸口氏が続ける。

「キッドと初めて会ったのは、初代タイガーマスクと試合した’81年ごろだったと思う。異様に盛り上がった筋肉を見て『ステロイドをやっているな』とピンときたよ。当時ニューヨークで活躍していたレスラーは、ほぼ100%ステロイドをやっていたからね。筋肉ムキムキの見栄えが求められたし、ヘビー級のデカいレスラーたちと戦わなければならなかったから。当時は(注射)1本10ドルぐらいで購入できて、WWFの専属医も何も言わなかった。組織ぐるみで使用を認めていたんだ。ただやり過ぎると、脳や心臓に必ず悪影響が出る。オレもやっていた当時は頭がハゲ上がり、今でも左の心臓が大きい『心肥大』の病気にかかっている」

前述の通り、キッド氏は薬を使用するだけでなく酒も大量に飲んでいた。

「その影響で性格も変わってしまった。もう別人さ。オレたちの専門用語で『ハイパー』って意味わかる? 気が荒くなって急に怒り出す状態のこと。会った当初のキッドは気さくに世間話をするナイスガイだったけど、酒と薬の影響でハイパーになったね。オレもニューヨークでからまれたことがある。酒を飲んでいたら、突然つかみかかってきた。オレが冷静に対応したから収まったけど、あのままケンカになったら両者血まみれだろう。キッドが持っていたカバンには、大量のステロイドが入っていた。他の筋肉増強剤も使っていたと思うよ」(戸口氏)

戸口氏は、ステロイド地獄から抜け出せなかったキッド氏を偲(しの)ぶ。

「当時のファンは、キッドの跳躍力や技の美しさに魅了された。自分より大きなレスラーを相手に、そうしたパフォーマンスを維持するためにステロイドに頼らざるをえなかったんだろう」

己のプレースタイルを貫くために、キッド氏は生命を縮めてしまったのだ。

’82年1月に来日した時の写真。ムキムキの筋肉を強調するかのようにタンクトップを着ている

 

  • 写真木村盛綱/アフロ

Photo Gallary2

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