史上最強女性騎手・藤田菜七子 ついにG1レース騎乗へ
「スプリンターズステークス」で騎乗する可能性も
強さはホンモノのようだ。
8月19日にJRA女性騎手最多タイとなる34勝目をあげた、藤田菜七子(21)だ。6月にはG1レースの騎乗が可能となる通算31勝を記録。早ければ、9月30日のG1「スプリンターズステークス」に参加する可能性も出てきた。競馬エッセイストの梶山徹夫氏が話す。
「藤田はスタートが上手なんです。先手をとって逃げ切るのが彼女の勝ちパターン。騎乗数は多いですが、ほとんど強い馬に乗っていません。乗り馬に恵まれない中、勝ち星を伸ばしているのはスゴイ。JRA所属の女性騎手として初めて、G1で騎乗する可能性は十分あります」
だがJRAに134人いる騎手のうち、女性は藤田ただ一人。本誌のインタビューでは、こんな悔しい体験を告白していた(’16年3月11日号、上写真)。
「(競馬学校では)女性でも、男性と同じ練習メニューをこなさなければなりません。とくに筋力トレーニングはツラかったです。20㎏のバーベルを担(かつ)いでのスクワットや、腰を落として横に進むカニ歩きもありました。決められた時間内で馬を一定距離走らせる課題では、他の男子生徒ができたのに私だけがクリアできなくて……。悔しくて寮の部屋に戻ると、一人でずっと泣いていました」
藤田を支えたのは、尊敬する外国人女性騎手の言葉だった。
「(ニュージーランドの)リサ・オールプレスさんが来日した時に、貴重な助言をもらったんです。『体重の軽い女性が馬上で体勢を保つには、脚の筋力をつけることが大切よ』と。彼女の言葉を励みに、ツラい筋トレも乗り越えられたんです」
当時から夢はG1制覇。とくに日本ダービーで勝つことと語っていた。
「日本の競馬と言えばダービーです。先手をとって勝てるような騎手になりたい。でも半端な努力では達成できません。恋愛も遊びも、フツウの女のコが楽しんでいることはしばらくおあずけですね」
努力のかいがあって、藤田はもう夢に手の届くところにいる。
撮影:小松寛之