徹底取材で明らかになった「統一教会2世」の哀しすぎる人生
安倍元首相銃撃事件以来、山上徹也容疑者に"共感"する人が続々 家庭を崩壊させる献金制度とは? 脱会した後に待っていた厳しい境遇とは?
「自分の家庭が他と違うと思ったのは小学校に上がったころだったと思います。何をするにもお祈りがあって、朝起きたとき、食事を始める前、寝るとき、いつもお祈りお祈りでした」
都内に住む統一教会(現世界平和統一家庭連合。本稿では統一教会と記述)2世のAさん(20代女性)は、緊張した面持ちでそう語り始めた――。
「教団への強い恨み」という犯行動機が明らかになるにつれ、SNS上には続々と、山上徹也容疑者(41)の境遇に共感する統一教会2世たちの声が上がっている。
いったい何が山上容疑者を追い詰め、凶行に駆り立てたのか。2世・3世への取材から、その哀しすぎる人生を追った。
冒頭のAさんは両親が統一教会信者。幼少期は教義を当然視していたが、小学生の時に、違和感に気付いたと語る。
「両親は教会に多額の献金をしており、家庭はとても貧しかったです。ランドセルや制服などぜんぶ親戚からもらっていました。クリスマス、誕生日のプレゼントもなし。おさがりのみすぼらしい服のせいか、小学校ではイジメも受けていました」
信者家族を苦しめるのが、この「献金制度」だ。教団の指導者たちが「これを買わないと天国に行けない」などと語り、信者に高額な壺や聖書を買わせる手法は現在も続いているという。
経済的困窮に加え、思春期になると2世の精神的負担が表面化してくる。Aさんが続ける。
「母に対して嫌だったのは、私が統一教会の存在を必死で隠しているのに近所中を訪問して伝道活動をすることでした。貧乏や伝道が原因のイジメを親に相談しても『神様からの試練で愛だから』と取り合ってくれない。そんな日々が続いた結果、10代後半に私は精神的に不安定になり病院に入院しました。心の中は死にたいという気持ちだけでした」
入院を機にAさんは統一教会から徐々に距離を取り、やがて退会した。だが、脱会後も苦悩の連続だったという。
「正直、教会から出た後の世界は全然楽しくなかったです。教会以外のコミュニティがなかったので両親を含む全ての人間関係を失い、孤独に苦しむ日々でした」
統一教会2世のなかには、教団に疑問を持ちながらも、脱会という道を選ばない人もいる。現役の2世信者であるBさん(20代男性)が語る。
「親は子供の幸せを思って信仰を強いている。だから、教会から離れるためには親との関係を捨てる覚悟が必要になります。そこまでの覚悟ができず、消極的に教会に留まる人は多いのです」
Bさんは、2世であるがゆえに恋愛すらもできなかったと振り返る。
「合同結婚式で結婚した統一教会信者の子供は『祝福2世』と呼ばれ、2世同士でしか恋愛・結婚が原則認められません。教義的には、1世同士の結婚で”血を清めた”のに”悪魔の血”を混ぜるのは罪だ、ということです。恋愛感情自体に罪の意識を感じる場合もあり、経済的な困難と並ぶ、2世の二大問題です」
自分自身や両親が信者でなくても、身内に信者がいるだけで家庭が崩壊するケースもある。統一教会「3世」のCさん(20代女性)が語る。
「私は母方の祖母だけが信者でした。祖母が家族に内緒で高額献金を繰り返していたことが原因で、母と叔父の間で刃傷沙太が起きたこともありました。2世である母は、日常的にストレスが存在する家庭で育ちました。結果、母は精神が安定せず、私に対しても虐待を繰り返した。自分自身を守るためには家族と縁を切らざるを得ませんでした」
統一教会に詳しいジャーナリストの有田芳生(よしふ)氏(70)は、こう警鐘を鳴らす。
「高額な献金による貧困と恋愛の制限など2世問題は根が深い。山上容疑者の家庭は特別なものではなく、表に出ていないだけで同じような家庭はたくさんあるんです。政治や行政が真剣に彼らをケアするシステムを作ることが求められています」
悲惨な2世を増やし続ける統一教会が掲げる”真(まこと)の家庭”とは何なのだろうか。
『FRIDAY』2022年8月12日号より
- PHOTO:川柳まさ裕(送検) 小檜山毅彦(合同結婚式)