“失われた30年世代”…「40代ひきこもり」のヤバすぎる現実 | FRIDAYデジタル

“失われた30年世代”…「40代ひきこもり」のヤバすぎる現実

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イタリアや韓国でも…世界共通語となった「HIKIKOMORI(ひきこもり)」

日本だけではなく、イタリアや韓国でも深刻な問題となっている“HIKIKOMORI”。その単語は、今や世界共通語になろうとしている。

東京都江戸川区が18万世帯を対象に大規模調査をした結果、ひきこもり当事者の最多は40歳代であったというニュースも記憶に新しい。

さまざまな課題が浮き彫りになるひきこもり支援について、NPO法人“SNO(セーフティネットワークおおさか)”に聞いた。

40歳~50歳の”ひきこもり”、対象者数はトップなのに、支援が手薄い…(写真:アフロ)

逃げこめる「家」のある文化が生んだ、ひきこもりという現象

何度も辛い経験をしてきた人は対人恐怖が強まり、“安心安全な場所は自分の部屋だけ”と思いこむようになる。そういう意味では、ひきこもりは“逃げこむことのできる場所”があったからこその現象とも言えるだろう。国によって事例数に差が出る背景には、文化の違いがあるようだ。

「日本や韓国、イタリアには、成人しても家にいていいという風潮がありますが、アメリカなどは自立しろ、家を出ろという考え方です。アメリカにひきこもりが少なく、若いホームレスが多いのには、そんな文化の違いがあるかと思います(精神科医・斎藤環氏の著書『中高年のひきこもり』(幻冬舎)より参照)」(NPO法人“SNO”/以下同)

SNOでは大阪府大東市の委託事業として、主に市内在住40歳~65歳のひきこもり対象者の支援を行っている。支援対象年齢を中高年に絞ったのは39歳までの若者支援に比べ、中高年の支援を行う民間団体が圧倒的に少ないからだ。

「先日は北海道からも問い合わせがありました。ホームページのアクセス・キーワードを調べると“8050問題”が6割を占め、つぎが“ひきこもり”です」 

波紋を呼んだ江戸川区の「ひきこもり実態調査」。40歳以上の中高年が全体の6割以上を占め、不登校などが問題となる20歳未満は1割程度であることがわかった(表:共同通信)

支援を続ける中で見えてきた、「中高年のひきこもり現象」問題解決の難しさ

対象者数はトップなのに、支援が手薄い40歳~50歳のひきこもり。以下、SNOが活動する中で浮かび上がってきた現状をまとめた。

1_「ひきこもり現象」が当事者家族の中で当たり前になる

長期化する理由の一つに、家族が緊急性を感じないことがある。諦めてしまう親も多く、当事者が40歳を過ぎると相談数は減少する。しかし60歳に近づくと親の体力低下や認知症といった切迫した問題が浮上し、急速に緊急性を帯びてくる。30〜40歳は、いちばんのボーダーラインなのだ。

2_世間体もあって誰にも知られたくない、他人に家の中を見せたくない…

親が介護サービスを受けている家庭では、ひきこもり現象が少ないことがわかった。ひきこもりが長引くと親は自責の念にかられ、世間体もあって誰にも知られたくない、他人に家の中を見せたくないと思い始める。その結果、介護を拒否する形となり、悪循環に陥ってしまう。

3_見逃されがちな「家事手伝い」という名の女性のひきこもり

江戸川区のアンケートでは当事者の51%が女性だったが、SNOへの相談の8割は男性。女性の場合は“家事手伝い”という形で隠れてしまう可能性があり、情報の入手がさらに難しくなっている。

4_兄弟姉妹からの厳しい目

既に独立している兄弟姉妹からは「いつまでブラブラしているんだ」といった当事者への怒りの声も多い。まずは家族に理解を促し、考え方を再構築していくところから支援が始まる。親が相談を受けることで精神的に安定し、結果的に子どもも心を開き、親も元気になるという相乗効果が出てきている。

5_就労・自立を妨げる社会インフラの整備・理解不足 

環境との兼ね合いがうまくいかず、ひきこもるケースは多い。働く意欲が出てきても、一足飛びに一般的な仕事をするのは難しい。簡単な仕事から少しずつというステップアップが大切だが、そういう場所が社会として用意されていない。当事者の能力を発揮できるような社会インフラが整っていないのが現状。

Casa robotics株式会社では、ひきこもり在宅ワーカーがアバターロボットを通じ、住宅仕様の説明を行うモデルハウス案内業務を開始。こういう取り組みが増えるとよいのだが…

6_特別な資格がなくてもできる「ゲートキーパー」 に期待 

ゲートキーパーとは、悩んでいる人に気づき、声をかけ、話を聞いて、必要な支援につなげて見守る人のことをいう。ひきこもりに限らずヤングケアラーなど、問題を抱えている人は周囲に気づかれないまま深刻化していくことが多い。周りの人がどう関わり、アンテナを張っているかによって助けられる人もいるのだ。ゲートキーパーに特殊な資格は必要なく、そういう人が増えることで、ひきこもり現象は解消されるかもしれない。

東京都千代田区では2022年3月1日から1ヵ月間、LINE公式アカウントを入り口としたチャット相談窓口を試験運用。当事者が相談しにくい環境をどう改善していくかが大きな課題となっている

「ひきこもり」は病名ではなく現象名。ひと括りに考えないことが大切

最後に、情報収集がしにくく、情報があってもなかなか本人に会えない状態で活動を続けるSNOからのメッセージを伝え、まとめとしたい。

「40歳代以降のひきこもりでは親御さんも高齢になり、介護サービスが必要になってきます。ひきこもりの人がいる家ほどサービスを受けていない状況があるということは、親御さんがきちんとサービスを受けられたら改善される可能性もあるわけです。外部の人を生活の中に入れていくことは、公的なお金を投入してでもやっていく必要性があると思います。 

また、相談に来る親御さんは必ず “自分達でなんとかしなければ”と言われます。けれどそれができないからこうなっているんです。自分達だけで解決しようとせず、相談員の皆さんと話をしていただきたい。地域とか社会とか、いろんな公のところを使ってほしいです。私たちが最終的に目指すところは対象者の方達が生活保護に陥ることなく、治療薬を飲みながらでも社会の中でなんとか自立をして生活ができる環境作りです」(SNO・寺坂修一副理事長) 

「世間一般的には“常識的に考えたらこうやろう、就職したらええやんか”って思いますよね。言うのは簡単ですが、心理的にも肉体的にも、そうじゃないからこういう状態に陥っているというところを、まずみんなが理解していくことが大事です。 

難しいことは多々ありますが、ひきこもりというのはそれぞれ個別の問題で、それぞれの成り立ちがあります。ひきこもりという大きな括りで捉えるのではなく、今、その人が何に対していちばん悩んでいるのかを知り、目の前の人が困っていることを人としてどう受け取っていくのか。ここに尽きるのかなと思っています」(SNO心理カウンセラー・鮎川洋聡相談員) 

■NPO法人“SNO(セーフティネットワークおおさか)”のHPはこちら

鮎川相談員のYouTubeチャンネルはこちら

 

  • 取材・文井出千昌

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