小学生の死傷者は年1万人超!チャイルドシート関連法が緩すぎる | FRIDAYデジタル

小学生の死傷者は年1万人超!チャイルドシート関連法が緩すぎる

夏休みのお出かけ前にぜひご一読を…

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2019年、ドイツで発生した事故。木に衝突して後部座席にいた3人の子供が負傷。不正な取り付けのため、チャイルドシートは投げ出された(写真:DPA/共同通信イメージズ、本文の内容とは直接は関係ありません)

シートベルトを適正に使うことの重要性

5月22日、北海道南幌町でトヨタ・エスティマの助手席に乗っていた小学校3年生男児が車外に放出されて意識不明の重体となった。右折車を避けようとしてハンドル操作を誤り路外に逸脱し、エスティマは横転。大人4名と小3男児が乗っていたが、車外に投げ出されたのは小3男児だけだった。

男児は意識不明のままドクターヘリで運ばれたがその後の容体は明らかにされていない。北海道警察に取材をしたが、「個人情報であるため回答ができない」とのことだ。

男児は助手席でシートベルトを着用した状態で座っていたとされるが、小学校3年生なら身長は130cm前後。身長150cm以上で安全に使用できるシートベルトで確実に拘束できるはずもない。警察のコメントの中にも「シートベルトが体に合っていなかったのではないか」とあった。

さらに6月18日には広島県福山市で起きた事故も痛ましかった。直進(優先)するフェラーリと右折しようとしたワゴンRが衝突したいわゆる「右直事故」である。ワゴンRを運転していたのは60代前半の祖父。同乗していた9歳女児が衝突の衝撃で車外に放り出されて全身を強く打って死亡した。

福山東警察署に取材したところ、「骨盤骨折の重傷を負った祖父はいまだ入院中で女児がどのような状態で乗車していたのかはわかっていない」とのこと。また「車外に放りだされた」という状況の多くは、シートベルトを適切に使っていなかった可能性が高い。フェラーリがたとえ法定速度以下だったとしても、シートベルトをせずに衝突すれば車外放出で亡くなる危険は十分にあるのだ。

実は上記のようなシートベルトの正しくない着用により死傷や瀕死の重傷を負っている小学生が毎年1万人以上いることをご存知だろうか。

◆規格は同じでも着用義務は欧州が「12歳まで」に対し日本は「5歳まで」

日本では2000年4月1日以降、5歳までの子どもを車に乗せる際には国が定める安全基準に適合したチャイルドシートを着用することが道路交通法で義務付けられた(第71条3項の3)。2008年6月1日以降は、年齢に関係なく後部座席もシートベルトの着用を義務化された。

しかし、2019年の警察庁と日本自動車連盟(JAF)の全国調査によると、チャイルドシートの着用率はやっと7割を超えたところ。5歳児においては3割前後にとどまる。チャイルドシートに子どもを座らせていても、(胴体部分を締め付ける役割の)ハーネスが緩かったり、体格に合っていなかったりで車に固定されていなかったり、間違った使用状態のものが7~8割以上もある。

筆者は一般財団法人日本交通安全教育普及協会認定のチャイルドシート指導員資格を持っていて、過去20年間で200台以上のチャイルドシートをチェックしてきた。だが、警察庁の調査通り、車の座席への固定や使用状況などすべてにおいて正しく使用されている例は残念ながら1割にも満たなかった。

不可解な事実が2つある。チャイルドシートを法制化している欧州のほとんどの国が12歳まで、もしくは身長135~150cmまでは着用を義務付けている(フランスは10歳)。日本で使用が許可されているチャイルドシートも国連欧州基準(UN/ECE)に適合した製品なのだが、欧州が「12歳までの着用義務」に対し、日本では「5歳までの着用義務」なのだ。

さらに、日本の自動車メーカーは全社が「身長150cmからシートベルトが安全に使える」としている。衝突安全性を確認する場合に使われる最も小さいダミー(AF05ダミー)は身長150cmで実験。つまり、身長150cm以下では安全確認さえされていない。JAFでは身長140cmからシートベルトが使える、としている。日本の現在の法律では6歳以上はチャイルドシート使用の義務がないため、たとえば身長100cmに満たない6歳の幼稚園児が車のシートベルトをそのまま着用していても、日本では法律違反にはならないのだ。

2015年10月、JR宮崎駅近くで事故を起こした車と、路上に着陸したドクターヘリ(写真:共同通信、本文の内容と直接は関係ありません)

安全確認は身長150㎝以上 JAFは140cm以上での使用を推奨

チャイルドシート法制化に向けて、1990年代後半から啓発活動を行ってきた「SAFE KIDS JAPAN:子供の安全ネットワークジャパン」で代表を務めていた京都の産婦人科医伊藤將史先生はこう明かす。

「子どもの死因は昔も今も「不慮の事故」が1位です。子どもの事故死を減らしていこうと啓発していた小児科医や産婦人科医たちは2000年にチャイルドシート着用義務化が決まった時、この法制化が日本の子どもたちを不慮の事故から守る突破口になるのではと期待しました。

ピカピカの一年生が初めて出会う小学校の先生から、事故から身を守るということの意義をチャイルドシートを通じて知る機会があれば、どんなに効果ある啓発ができるだろうか!と。しかし、実際に施行された改正道路交通法は6歳未満の子どものみが対象でした。つまり、小学生の間はシートベルトの装着適用外(150㎝以下)であり、チャイルドシート着用の義務からも外れていたのです。

例えば車内でチャイルドシートを正しく着用せず、車外に放り出された小学生が死傷した場合、責任の所在はどこにあるのでしょうか?現法律下では不明です」

FRIDAYデジタルでは、警察庁に対して「なぜチャイルドシートの着用義務が6歳未満なのか」、そして国交省やJAFに対しては「なぜ、安全確認の実験は身長150cm以下では行われていないにもかかわらず、シートベルトの使用を150㎝以下でも可能」としたのか。それぞれ質問状を送った。

JAFからはこんな回答が寄せられた。

「身長での基準につきましては現在も明確な判断基準はありません。そのためJAFでは、過去に各自動車メーカー、チャイルドシートメーカーのシートベルトの使用の目安や見解を総合的に判断し、目安として身長が140cmとなるまではチャイルドシートを使用するよう呼び掛けておりました。

ただし、前述の通りこれはあくまで目安になります。チャイルドシート使用に適する身長・体重等は、各社の製品により異なります。また、車両用シートベルトが安全に使えるかということに関しましてはお子様の体格には個人差がありますので、そのお子様にあった正しい使用ができているかということがもっとも重要であるとJAFでは考えております」

自動車メーカーでは身長150cm以上でシートベルトの安全性を確認しているのに、なぜJAFはリスクの高い140cmを推奨しているのか理解に苦しむ。

国交省は、現在の「135cm以下」から、「150cmまで使用する」という内容に修正する考えを示した。なお、警察庁は質問状を送って7日経過しても返答はなかった。

普通・軽乗用車の助手席と後席同乗者の死傷者数の推移を表すグラフ。後席ベルトが義務化された2008年に大きく減少したが、以降は他の年代に比べて小学生世代の減少度合が小さい(イタルダインフォメーション131号 交通事故分析レポート131号より引用)

子どもの命を守る意識が低い日本

実際、6歳以上にチャイルドシートの使用を義務付けてない結果、どんなに恐ろしいことが起きているか?それはイタルダ(交通事故分析センター)のレポート(イタルダインフォメーション131号)にて明らかにされている。2001年から2018年の18年間で警察に報告があった事故だけで17万7584人の小学生が死傷。後席ベルトが義務化された2008年まで増え続けており、以降少しずつ減ってはいるが、平均すると年間約1万人の小学生がチャイルドシート法制化以降、事故で死傷している計算になる。

もし道路交通法で12歳までチャイルドシートを使うことが義務付けられていれば、冒頭で紹介した、北海道で意識不明の重体に陥った小学生や、広島で死傷した小学生は軽症で済んでいたかもしれないし、おそらく結果は大きく変わっていただろう。

日本は乗車中の子どもの命を守る意識が社会全体、国家全体で著しく低い。法律が子どもを本当の意味で守るものになっていない以上、子どもの命は周囲の大人が守るしかない。身長140-150cm以下の子どもを同乗させる際、車のシートベルトが首や顔にかかる状態であればどうかジュニアシートを正しく使ってほしい。

なお、日本が採用するチャイルドシートの国際ルールでは、座面だけで背もたれのないジュニアシートは身長125cm、体重22kg以上での使用が義務付けられている。年齢で言えば7-8歳以上。日本の法律に明記されているわけではないが、12歳に達するまでは背もたれがある安全なジュニアシートを使用することをぜひ薦めたい。

夏休みで子どもと出かける機会も増える今こそ、乗車中の子どもを守る方法を考えてほしい。失われた命は二度と戻ってこないのだから。

  • 取材・文加藤久美子

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