今やヒット曲はTikTokから生まれる時代!?

指南役のエンタメのミカタ 第5回

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DA PUMP の「U.S.A.」のヒットにもTikTokの影響がうかがえる

そのCMは独特のトーンを放っていた。

わずか半年くらい前まで「TikTok」でググると、検索候補の上位に「ウザい」と表示されたものだった。実際、僕もちょっとそう感じていた。SNSを閲覧している時、途中でプロモーションと称して勝手に挿入される同社のCMに、度々遭遇したからである。

それはCMとは言うものの、異質だった。商品やサービスの説明は何もない。ただ曲が流れ、それに合わせて女の子たちが口パクしながら、パラパラみたいなダンスを踊っている。それだけだ。そのダンスも早回しやスローで、不思議な動きに見える。CMは数パターンあったが、どれも独特のトーンを放っていた。

しかし、である。何度かそれらのCMに遭遇するうち、一種の中毒だろうか、次第に気になり始めたのだ。知らないうちに頭の中にTikTokで聴いた音楽がリフレインしており、思わず曲名を検索したりした。気が付けば――TikTokのアプリをダウンロードしている自分がいた。

俗に、好きの反対は無関心と言う。そうなのだ、あの日、僕も含めて「TikTok」でググった時点で、既に僕らはヤツらの術中にハマっていたのだ。ウザいと感じ始めた時点で、ちょっと好きになりかけていたのだ。ほら、ラブコメのドラマで、主人公とヒロインが1話の冒頭でケンカして、次第に相手が気になり初め、最後は付き合うあのパターンである。

TikTokの動画の尺は、わずか15秒である。奇しくも、テレビCMと同じサイズだ。それは、最長2分20秒のツイッターの動画よりも、最長1分のインスタグラムのストーリーよりも短い。今、TikTokの利用率は圧倒的に10代が多いとされるが、その尺の短さも彼らの支持を得ている一因かもしれない。現代はタイム・イズ・マネー。若い人ほど時間の使い方がシビアだからだ。

もう一つ、TikTokが若い人たちの間で流行っているのは、比較的容易に承認欲求が満たせるからとも言われる。承認欲求とは他人から認められたいとする欲望で、人間誰しも持っているもの。特に若い人ほど顕著で、昨今の「インスタ映え」ブームは、そういうことである。ただ、インスタに投降するには、それなりの“素材”が求められる(そのために彼らは、今日はパンケーキ屋の行列へ、明日はイルミネーションのスポットへと奔走する)のに対して、TikTokは極端な話、学校の授業の合間に教室でも撮れる。

そう、TikTokは投稿のハードルが低いのだ。基本、模倣文化がベースにあるので、ダンスは手本をマネるだけだし、その振付けも上半身しか動かさないパラパラみたいなもの。特にスキルは必要ない。おまけに歌は口パクだ。しかも――盛れる。撮影の速度を変えたり、動画を編集することで、簡単に盛れるのだ。よくTikTokのダンスが早回ししているように見えるのは、1/2の速度で撮影しているから。そう、模倣&盛れる――これ、若い人たちが飛びつく2大要素なので、大人の人たち、覚えておきましょう。

かくしてTikTokは大流行した。元々は中国で開発されたアプリで、日本版がリリースされたのが17年の夏だから、わずか1年半で市場を席巻したことになる。そして普及したTikTokは世に副産物をもたらした――それが“ヒット曲”である。先ほど、TikTokは模倣文化と述べたが、同アプリは他人の気に入った動画をシェアして、それを模倣することで拡散される性質なので、それに合わせて曲も拡散される。

そこで冒頭の話に戻る。半年ほど前、TikTokで検索すると、検索候補の上位に「ウザい」と表示されたものだったが、その頃にリリースされた曲に、DA PUMPの「U.S.A.」があった。当初、「ダサい」と言われた同曲が、次第に「ダサかっこいい」と持ち上げられるようになり、今や2018年を代表するヒットナンバーになったのは誰しも知るところである。そして――同曲のヒットの背景に、TikTokがあったことも見過ごせない。

そう、「ウザい」と「ダサい」――両者とも当初はネガティブに見られていたものの、繰り返されるうち、次第に人々の心を捉えるようになった点で、その親和性の高さが分かる。大事なのは、ファースト・インプレッションで心に引っかかるキャッチーさであり、マネしたくなるインパクトであり、繰り返しても飽きられない中毒性なのだ。

思えば、90年代の音楽全盛時代をもたらしたのは、カラオケ文化だった。皆がカラオケで歌いたい曲がヒットした。それはメロディーがキャッチーだったり、振付けがインパクトあったり、繰り返し歌っても飽きない、ある種の中毒性があった。誤解を承知で言えば、ダサい曲が市場を席巻し、音楽全盛時代をもたらした。

21世紀、音楽市場が次第に衰退したのは、一説には人々が音楽にセンスを求めるようになったからとも言われる。ミュージシャンやアイドルはアーティストと呼ばれるようになり、楽曲はソウルフルなナンバーが増え、振付けはプロフェッショナルなダンスへと変貌した。カラオケ文化は次第に衰退し、それと比例してCDの売上げも減少した。時々、ヒットするナンバーは、AKB48の「恋するフォーチュンクッキー」や星野源の「恋」など、例外的に歌マネやフリマネのしやすい(要するに完コピしやすい)楽曲だった。そのヒットを後押ししたのは、時のYouTubeだった。

そうなのだ。かつてのカラオケ文化が、その後、YouTubeへと継承され、今やTikTokなのだ。そして、それらのツールで人々に拡散され、ヒットするナンバーは、いい意味でダサい。キャッチーでインパクトがあり、ある種の中毒性がある。DA PUMPの「U.S.A.」がヒットしたのはそういうことなのだ。

ちなみに今、TikTokで女子高生たちは、ドラマ『今日から俺は!!』の主題歌「男の勲章」に夢中である。

  • 草場滋(くさば・しげる)

    メディアプランナー。「指南役」代表。1998年「フジテレビ・バラエティプランナー大賞」グランプリ。現在、日経エンタテインメント!に「テレビ証券」、日経MJに「CM裏表」ほか連載多数。ホイチョイ・プロダクションズのブレーンも務める。代表作に、テレビ番組「逃走中」(フジテレビ)の企画原案、映画「バブルへGO!」(馬場康夫監督)の原作協力など。主な著書に、『テレビは余命7年』(大和書房)、『「朝ドラ」一人勝ちの法則』(光文社)、『情報は集めるな!」(マガジンハウス)、『「考え方」の考え方』(大和書房)、『キミがこの本を買ったワケ』(扶桑社)、『タイムウォーカー~時間旅行代理店』(ダイヤモンド社)、『幻の1940年計画』(アスペクト)、『買う5秒前』(宣伝会議)、『絶滅企業に学べ!』(大和書房)などがある

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